「リリアを探せ!」は、以前紹介したパソコンゲーム雑誌「POPCOM」誌上、日本ファルコムのゲーム紹介コーナー内にひっそりと連載されていたコーナーです。
企画そのものは91年1月号の別冊付録「日本ファルコムパーフェクトブック」内で、ポプコム編集部のオリジナル企画として、以下のように告知されました。
開始のお知らせ。写真は杉本理恵嬢。
リリアというものやお店、名前の中にリリアという文字を含むもの、リリアと似た語感の単語など、なんでも大募集。情報だけでもいいし、写真もあればなおグッド。採用分については、何かプレゼントを用意するぞ。これはと思うものを見つけたらポプコムまで手紙を出すのだ。
内容はこのとおり、「イースII」のヒロイン、リリアにちなんで「リリア」と名前の付くものを、読者に探してたれ込んでもらおうというものです。企画そのものは不調だったのか、5回ほど続いた後、何の前触れもなくそれきり終わっています。今回はその「リリアを探せ!」をご紹介いたします。
(引用箇所は斜体で表示)
1等賞で情報を送ってくれたのは、東京は墨田区の高橋君。封書で、しかも速達の書留で、そのものを送ってくれた。感謝。
「そこで私の頭の中にピンときたものが、同封した、”リリヤーン”です。字で書くとちょっと違うけど、言葉で聞くとかなりいい線いってると思う。(じつは、私はこれを買ってみるまで、”リリアン”だと思っていた!)」と、彼も書いているとおり、ジラーフ(担当者)もずっとリリアンだと思ってたよ。
試しに百科事典を引いてみたら、出てるんだ、これが。Lily Yarnというのが正確なつづりで、手芸用の組み糸のことなんだって。ちなみにアメリカでの登録商標だそうだ。日本では、大正のころから作り始めたそうな。ひとつ賢くなったね。詳しく知りたい人は、自分の事典を引いてね。
第一回目は手芸用の組み糸、組み紐を作るための糸と編み機です。記事の通り、正式名称はリリヤーンですが、リリヤン、リリアンとも呼ばれるようです。
リリアンついでに、関西には「リリアン」という男性タレントがいまして、いちどきは女優藤山直美と噂になったこともありました。 ...どうでもいい話でしたね。
きっとあるんじゃないかなぁって期待していたんだが、やっぱり店名の情報がいちばん多い。続々というほどではないけれど、全国から集まりつつある。まず山梨は甲府から。喫茶店で、名前はそのものズバリ。送ってくれたのはペンネーム山本竜介君。ありがとう。
第二回目は喫茶店です。念のためインターネットタウンページで山梨県の喫茶店を調べてみましたが、現在「リリア」という名前の店は登録されていませんでした。
またまた、お店の名前が続きます。「これは秋田県の某本金内の洋服店だったりする。写真はブレてるが……」というレポートを送ってくれたのは、ばんゆう&ひろのぶ君。ありがとね。もう一枚の写真では「リリアナモリ」って読めるんだけど、そっちはもっとブレてる。ところで、本金ってデパートそれとも駅ビルかな?
このコーナー、まだまだ続けていくつもりだから、どんどんレポート送ってね。
第三回目は秋田の婦人服の店です。記事で云々されている「本金」とは、JR秋田駅前にある西武系列の百貨店、ほんきん西武のことと思われます。リリアーナモリはそこのテナントだったのでしょう。こちらもインターネットタウンページで調べてみましたが、登録されていませんでした。
灯台もと暗し。川口は編集長の地もとだ
テレホンカードを送ってくれたのは東京都日野市の石井雅明くん。川口に去年の夏にできた総合文化センターの名前が「リリア」だったんだ。同じ県内に住んでいながら、ジラーフはすっかり忘れてた。テレカを見つけたのは立川駅ビルWillだっていうから、ファルコムのおひざもとってわけだね。ところで、杉本理恵ちゃんが、その文化センターでコンサートをやるって話もあるらしい。「リリアを探せ!」のコーナーは情報があるかぎり続けるつもり。みんなからのお便りを待っているぞ。
第四回目は埼玉県川口市の総合文化センターです。建物はJR川口駅の西側すぐのところにあります。
川口総合文化センター・リリア
「リリアの愛称も川口市の花であるテッポウユリ(Lily:ユリとラテン語のia:〜の場所)にちなんで名づけられました。」〜川口総合文化センター案内パンフレットより
名前は「イースII」のヒロインとは無関係に付けられたようです。地上14階建てという大きな建物でして、中には劇場や音楽ホールの他、レストランや喫茶店、フィットネスジムに楽器屋まであったりします。
日本ファルコムは91年8月、イベント「ファルコムフェスティバル’91」をここで開いています。名前が同じ(英語の綴りまで同じ)ということで洒落こんだに違いありません。もちろん村娘リリアさんが出るわけはありませんが、かわりにミスリリアこと杉本理恵さんがミニライブを披露してました。 ...これもどうでもいい話でしたね。
ファルコムフェスティバル’91開催の広告
三重県の服部君から映画に出てくるリリアの情報が寄せられてきた。
「映画『十戒』で、最初と最後のほうにリリアという女性が出てきた。
ちなみにリリアの恋人(らしき人)はヨシュア
(ドラゴンスレイヤー英雄伝説で出てきた)である。」とのこと。
さっそく近所のビデオレンタル屋さんを探し回った。
1956年のアメリカ映画で、3時間48分の超大作。リメイク版でカラー。
リリア役の女優がなかなかの美人。LDも発売されている。
第五回目はスペクタクル映画の古典的名作「十戒」の登場人物です。監督はセシル・B・デミル。なかなかの美人と言われているリリアはデブラ・パジェットが演じています。映画での役どころはヘブライ人の女奴隷でして、物語の主要人物ヨシュアの恋人役です。デブラ・パジェットは有名なところではエルヴィス・プレスリーの「やさしく愛して」(1956)にも出演しています。
女優でリリアというと、当時「吉川りりあ」というAV女優がいましたが、さすがこのコーナーで取り上げられることはありませんでした。ついでに、世の中には「りりあ01」という18禁漫画があったりします。「FEENA」という18禁漫画家もいたりします。 ...またまたどうでもいい話でしたね。
「リリアを探せ!」はPOPCOM91年7月号を最後に、何の告知もないまま終わりとなりました。打ち切りになったのか、立ち消えになったのかは分かりません。
川口総合文化センターのところでも触れましたが、もともと「リリア」(Lilia)という女性名詞は「百合」(Lily)に由来しています。百合の花はキリスト教では聖母マリアの純潔の象徴とされていまして、そうした清純さが込められた名前のようです。日本語なら百合子さんとか小百合さんといった具合でしょうか。
「リリア」という名前自体は、比較的ありふれたもののようで、世間に散らばっていても、別に何の不思議もありません(てきとうなサーチエンジンの画像検索で「Lilia」と「Feena」の結果を比較すれば一目瞭然)。しかしファンとしては「イースII」のヒロインを真っ先に思い出してしまうのでしょう。
今思えば全く他愛のない企画ですが、それでも当時は何件か発見報告があったのです。こんな企画が通って曲がりなりにも成立してしまうところからも、「イース」全盛期の勢いの一端が垣間見えます。
リリアのお願い〜川口総合文化センターで