国道458号線

 国道458号線は山形で最も新しい国道である。県内で国道が通っていない自治体が中心となり運動を進めた結果、平成5年(1993年)、数本の県道とそれをつなぐ道を昇格させるという形でついに誕生した。
 そういうわけで道は随所で折れ曲がり、民家の合間の生活道路や田んぼのあぜ道、果ては砂利道や人里離れた峠さえ通るという、山形で最も過酷な国道となっている。これでも山形県の大動脈、国道13号線の代替道路という位置づけであるらしく、沿線の自治体は整備を進めつつある。実際何ヵ所かは幹線道路並みに整備された。
 しかし荒井はこの道が「酷道」のまま、末永く残ることを切に願う。


起点新庄市五日町交差点

起点新庄市五日町交差点

 ここが起点。新庄市の郊外を走る国道13号線から国道458号線は伸びている。約112kmの旅のはじまりである。


新庄市内の交差点

鍜治橋前の標識 北町交差点
沼田町交差点 北高口交差点

 国道は新庄市内で複雑に折れ曲がっている。標識を見ながら、間違えないように走る。


陸羽西線を渡る

陸羽西線下西山踏切

 陸羽西線の線路を越えたあたりから鄙びてくる。左右には田んぼが広がり、目の前には小山が現れる。


愛宕山(あたごやま)

愛宕山ニュータウン入り口

 田んぼを抜けると山越えのちょっとした登りになる。小山のてっぺんは新興住宅地の入り口で、花壇なぞ手入れされてあった。ここを西に下っていけば鮭川村だ。


泉田川

泉田川

 鮭川村に入ると、泉田川としばらく併走することになる。泉田川は新庄市の水源であるほか、絶好の芋煮会場として市民や村民になじみが深い。芋煮会とは野外で里芋汁を作って食べるというもので、秋の山形の代表的な行楽となっている。


鮭の子公園鮭の子館

鮭の子館

 沿線の泉田川河畔には公園もある。写真は「鮭の子館」こと、併設の村の総合案内所。中では村の名所情報や特産品が手に入れられる他、軽い食事もできる。


日下(にっけ)

日下

 田園地帯を経て、国道は鮭川村中心部、日下を通過する。地図で見ると特徴的な「鉤爪」状の急カーブがちょうどここで、すぐそばには村役場もある。保育所や小学校もあるので、通行の際は子供にご用心。


川口楯

川口楯から鮭川を望む

 村を南北に貫流する鮭川の東岸にある切り立った断崖。険しい地形は自然の要害で砦も築かれ、戦国時代末期まで武将が守りに就いていたという。国道は180度のカーブでここを駆け登る。


升形

升形

 国道は再び新庄市内に入り、郊外の農村を貫いて走る。


国道47号線

長坂丁字路

 踏切で再び陸羽西線を渡ると、間もなく国道47号線が現れる。ここから本合海入り口までの2キロほど、長坂峠と呼ばれるところが、国道47号線との重複区間となっている。


本合海(もとあいかい)

本合海

 本合海は新庄市の出入口にあたる集落で、最上川の東岸にある。集落出口の電光掲示板には十部一峠付近の情報が出ていることが多い。しっかり道路状況を確認しておこう。


芭蕉上船の地

芭蕉と曾良の像

 本合海はかつての最上川舟運の要地の一つ。かの松尾芭蕉は「おくのほそ道」で、ここから舟に乗って出羽三山を目指した。芭蕉上船の地は猫の額ほどの記念公園になっていて、記念碑の他、芭蕉と曾良の像が建っている。

八向楯と本合海大橋

公園からは本合海大橋越しに、芭蕉一行も見ただろう八向楯がよく見える。


ニューホテルオオクラ

ニューホテルオオクラ看板

 山形にも「ホテルニューオークラ」があった! ...いや、「ニューホテルオオクラ」、ただのモーテル。
 本合海を出ると、国道はすぐ大蔵村に入る。


合海金刀比羅神社

合海金刀比羅神社

 大蔵村は今でこそ山形で最も人口の少ない村となっているが、かつては最上川舟運で栄える一大河岸を抱えた街だった。この金刀比羅神社は舟運に従事した商人が建てたもの。国道の片隅で、舟運が盛んだった往時を偲ばせている。


清水

清水の街並み

 大蔵村の中心部で、国道沿いに商店や役場などが建っている。ここも最上川舟運で栄えた河岸街で、整った街並みに格式なぞ感じる。


大蔵食堂

大蔵食堂 大蔵食堂の冷やしラーメン

 清水にある地元でも人気の食堂。国道沿いなので利用しやすい。味噌ラーメンと焼そばが特に評判だが、冷やしラーメンもなかなか旨い。


大蔵橋

大蔵橋

 大蔵食堂から少し行ったところで、国道は最上川を渡る。昭和六年竣工の古橋で、赤い鉄骨のトラス構造が印象的。重量14tを越える車は通行不可。

新橋建造中

 幅員が狭い上老朽化が進んでいるため、村ではかねてから掛け替え要望の声が出ていたが、ついに新しい橋が掛けられることになり、隣で建設工事が進められていた。


県道30号線分岐

県道30号線との分岐

 橋を渡ると国道は高台を一つ越える。画像は高台の途中、クランク状になっている追分。ここは右折するのが正解。そのまま直進すると、坂を下って別の道に入ってしまう。


「塩」

「塩」のバス停

 高台を越えると銅山川が寄り添ってくる。その川縁で「塩」という名前のバス停を発見。山奥で「塩」。どんな由来があるんだろう。


こけし発見

赤松近辺で見つけた巨大こけし

 道端で巨大こけしを発見。南東北の温泉地にはこけしが名物のところが多いが、村内の肘折温泉もそうしたこけし産地の一つ。国道は肘折温泉への通り道でもある。


日陰倉(ひかげくら)の断崖

日陰倉の断崖

 銅山川を離れたあたりから、急な登りにさしかかる。途中にはこんな断崖も。道が曲がっているのでちょっと怖い。冬場は雪崩対策か道路の中央に鉄の壁が建てられてるため、ここは片側交互通行になる。


地すべり防止事業地の看板

地すべり防止事業地看板

 沿線で発見。村は地すべり多発地帯で、これまで多くの人々が犠牲となった。そのため村では地すべり対策に力を入れている。


湯の台

湯の台

 登り切ると、牧草地の広がる高台になる。天気が良ければ月山や葉山が間近に見渡せる。


謎の雪塊

おおくら君残骸

 湯の台で発見。牧草地の真ん中に薄汚れた雪の塊が忽然と据わっている。その正体は村で3月に開かれるラングラウフスキー大会に会わせて作られる巨大雪だるま「おおくら君」のなれの果て。世界最大級を標榜するだけあって、年によっては6月になっても、こうしてまだ溶け残っていたりする。
 湯の台にはクロスカントリースキー場もあって、ちょうどこのあたりがラングラウフスキー大会の会場となる。

おおくらちゃん

 ちなみに「おおくら君」とはこんな奴(画像は前年2004年の「おおくらちゃん」)。


肘折トンネル

肘折トンネル

 ここを抜ければ肘折温泉。トンネルの隣には旧道も残っていたが、すっかり草に埋もれていた。


分岐点

肘折温泉入り口

 冬季通行止め区間前最後の分岐。トンネルを抜けるとすぐに現れる。右折すれば肘折温泉、左折すれば国道で十部一峠越え。前方は切り通しで、将来はここに道を通すつもりなのだろうが、工事は一向に進んでない模様。

肘折温泉入り口遠景

 ちょっと進んだところから振り返るとこんな具合。


肘折温泉

肘折温泉

 国道を逸れて右に行くと眼下に肘折温泉が現れる。県下有数の湯治湯として知られるが、立ち寄り湯や共同湯もあるので気軽に利用できる。十部一峠の行き帰りにどうぞ。

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