IXY320は3項目についてカスタム設定が可能で、これを弄るだけで使いやすさが大きく変わってきます。本機種はAPSカメラゆえ、ワゴンセール等で裸の完動品が格安で売られていることがあります。そこで取説がない個体を手に入れた方向けに、カスタム設定方法を簡単に紹介しておきます。
電源オフ時、文字入力ボタン(左から三番目)を押しながらSETボタンを押すとカスタム設定モードになる。
SELECTボタンでカスタム項目変更。SETボタンでカスタム項目オン・オフ(1/0)を切り替える。DATEボタンで設定モード終了。
設定できるのは以下の三つ。
IXY320とは、キヤノンのAPSコンパクトカメラです。先代モデルである初代IXYに続くシリーズフラグシップモデルという位置づけで、1999年3月に発売されました。現在でこそコンパクトデジタルカメラの一大ブランドとして認知されているIXYシリーズも、もとはAPSカメラとして始まった写真機でした。ちなみに「IX」とはAPSフィルムことIX240規格に由来する言葉のようで、コダックのAdvantixやコンタックスのTix等々、APSカメラの名前ではよく見かける文字です。
シリーズの大きな特徴は、なんと言っても「ボックス&サークル」と称される、スタイリッシュなデザインでしょう。写真機の構成要素である暗箱とレンズを「箱」と「円」として、シンプルかつ大胆に象徴化したところがこのデザインの妙味で、初代IXYの発売以来、広く人気を集めることとなりました。細部はあれこれ変化していますが、「ボックス&サークル」の意匠は、シリーズ各機種に現れるもので、APSカメラの初代からデジタルカメラの最新モデルに至るまで、連綿と受け継がれています。
中でもIXY320の「ボックス&サークル」は、シンプルかつソリッドな金属外装の質感や、サークル部分を断ち切らないデザインの工夫等で、シリーズ屈指の美しさを誇ります。その後デジタルカメラとなったIXYシリーズの多くが、本機種のデザインを踏襲していることを考えると、IXY320のデザインはその後のシリーズの基本となったと言えるでしょう。
キヤノンの担当デザイナーが語ったところによれば、IXY320では初代モデルが確立した「ボックス&サークル」を受け継ぎつつ、より小さく「素のまま」のデザインを生み出すのに腐心したそうです。その甲斐あってか、本機は若い女性層に支持されたのですが、それは広告に女優の江角マキコさんを起用したことにも伺えるでしょう。ただしデザインに凝ったおかげか、角に埋められた操作ボタンは非常に押しづらくなっており、ユーザーの間でも評価が分かれるところです。
「イクシを着よう」のキャッチコピーのとおり、シリーズが提唱したのは、アクセサリー感覚で格好よく持ち出し、気軽に写真を楽しむというスタイルだったのだと思います。デジタルカメラの急速な普及によって、APS規格は短命に終わってしまいますが、現在では当たり前となった「スタイリッシュで気軽に撮るカメラ」の魅力を広めたことは、APS版IXYシリーズの功績として、永く留めおかれるべきことでしょう。
IXY320で撮った写真。気軽に持ち出して気楽に撮ってみた。