「イースIII 友にささげる鎮魂歌(レクイエム)」

 以前飛火野耀氏の「イース2 異界からの挑戦」を紹介しましたが、「ワンダラーズ・フロム・イース」を小説化したのは、飛火野氏だけではありません。シリーズの小説化ではおなじみの、大場惑氏も小説版を手がけています。
 6月にイース最新作「フェルガナの誓い」が出ることになりました。「ワンダラーズ」を基調に、新たに作り直した作品というふれこみですが、実質的な「ワンダラーズエターナル」になるものと思われます。「ワンダラーズ」をおさらいするという意味でも、今回は大場惑氏の小説版「ワンダラーズ」を紹介いたします。


基本データ

ログアウト冒険文庫「イースIII 友にささげる鎮魂歌(レクイエム)」

表紙
  • 発行:1995年4月22日
  • 発行所:アスペクト
  • 著者:大場惑
  • イラスト:池上明子
  • 定価:631円(税別)
  • ISBN4-89366-345-3

プロローグ

 若者は故郷の村を目指していた。しかし村はたった今何者かによる焼き討ちを受け、壊滅していた。生存者はチェスターとエレナという兄妹二人だけ。若者は負傷した二人を連れ、医者を探して町に向かった。その直後、村を大男が通りがかった。


第一章 南風に誘われて

1 気ままな旅

占い師とドギの過去

 セルセタでの冒険からおよそ1年。アドルとドギはともに旅をしていた。二人は南を目指していたが、ここしばらくドギは浮かない様子が続いていた。気分転換にと、交易都市ダジャールでアドルはドギを占いに誘った。占い師はドギの故郷がフェルガナ地方であり、フェルガナ地方のレドモントの町となじみが深いことを言い当てたが、さらに、恐ろしい災いが起こるからレドモントに行かぬようにと警告した。
 故郷に触れられたことが気に障ったのか、ドギは機嫌を悪くしていた。長らく伴に旅をしている仲でも、アドルはドギの過去のことはほとんど知らない。アドルはレドモントにドギの苦い過去があることを感じ取る。

2 フェルガナ地方

 翌日、二人はレドモントを目指していた。何が待っているのかと胸躍らすアドルと、渋りながらついて来るドギ。アドルはドギが故郷を避けたがる理由を不思議に思っていた。
 フェルガナ地方に入ると、二人は深手を負って倒れている農夫を発見した。助け起こすと山猫に襲われたと言う。山猫にしては傷がひどすぎると半信半疑の二人に、化け物と化した巨大な山猫が襲いかかった。農夫はこの山猫に襲われたのだ。

3 忍び寄る異変

 山猫を倒した二人は、宿場町グルノバに到着した。酒場で二人はこの地方に起こった異変の数々を耳にした。半年前からグルノバ近辺に巨大な化け猫が出没するようになったこと、レドモントにも魔物が出没し主要産業である採鉱が打撃を受けていること、そのおかげでグルノバが不景気になったこと。ドギは城の連中は何をしているのかと憤った。アドルが城の話を聞き出そうとすると、思うところあってか、ドギは急に話を切り上げてしまった。
 レドモントでただならぬ異変が起こっている。ドギは一転してレドモント行きを承諾した。今は多くを語ろうとしないドギの過去についても、レドモントに行けば明らかになるだろうと、アドルは新しい冒険に思いを馳せた。

4 門衛

 レドモントが近づくと懐かしさがこみ上げてきたのか、ドギは思い出話をした。町の男達の半分近くはティグレーの採石場で坑夫として働き、採石場によって町は繁栄している。ドギは十年ほど前、二十歳の頃の二、三年をレドモントの町で過ごしていたという。
 レドモントの入り口では、ドギの旧知、ガードナーが番をしていた。ドギとガードナーは十年ぶりの再会を喜び合った。アドルとドギはさっそくレドモントに入っていった。

5 コルドーの宿

 二人はドギがかつて世話になったコルドーの宿に投宿することにした。久々の再会を果たした亭主コルドーは、ドギと昔話に花を咲かせた。昔のドギはろくに働きもせず、酒を飲んでは喧嘩をしたりと、レドモントではでたらめな生活を送っていたらしい。
 そのドギの面倒を見ていたエドガーという人物は出世して、現在採石場の総監督と町長を兼ねる大物になっていた。魔物退治の用心棒として雇って欲しいなら、エドガーに会うようにと勧められた。

6 思わぬ再会

エレナ登場

 町に繰り出した二人は、街角でたまたま若い娘にぶつかってしまった。娘はドギの旧知の少女エレナ。エレナは教会に身を寄せてピエール神父の手伝いをしている。ドギがエレナの兄、チェスターの消息について訊ねてみると、教会で神父になる修行をしていたが、バレスタイン城で働くと言い残し、半年前に町を出て行ったきりだという。
 町の表通りが騒がしくなっていた。アドルはドギとエレナと別れ、様子を見に行った。

7 救援

 表通りでは坑夫の周りに人だかりができていた。坑夫は救援を求めていた。採石場に魔物が多数出現し、エドガーを含め何人かが逃げ遅れているという。助太刀を申し出たアドルは、さっそく坑夫達とともにティグレーの採石場に向かった。
 作業長のデューイによれば、エドガーは採石場の最深部にいる。一行は採石場へと足を踏み入れた。

8 ティグレー採石場

 一行は採石場で、青い服の若者を目撃した。若者は一行にここから消えろと警告すると、奥を目指してつかつかと去ってしまった。
 アドルは若者を追った。途中、頑丈な開かずの扉を発見し、そこで誰かの持ち物らしいペンダントを拾った。

9 争う魔物

 採石場では魔物が徘徊していた。アドルが魔物を退けつつ採石場を進んでいると、二匹の魔物が戦っている場面に出くわした。魔道師デュラーンと人面獣エルフェールの戦いは熾烈を極めたが、ついに魔道師が勝利を収めた。
 デュラーンはエルフェールが守っていた「落日の彫像」を拾い上げると、アドルに気付き襲ってきた。アドルは魔道師を倒し「落日の彫像」を手に入れた。

10 救出

 坑道の奥で、アドルはエドガーと青い服の若者ことチェスターが言い争っているところに遭遇した。チェスターはエドガーにマクガイア王への協力を求めたが、エドガーはチェスターは王を憎んでいるはずで、協力は愚行であると断った。チェスターは実力行使をうそぶいて去っていった。
 エドガーと取り残された坑夫は無事救助された。アドルが坑夫達に拾ったペンダントを示してみせると、3、4日前から行方不明になっているボブのものであることが判明した。
 採石場の探索でレドモントの事情や敵の存在を知ったアドルは、これからの大きな冒険を予感していた。

11 小さな脱走者

 ボブはバレスタイン城に捕らわれていた。ボブは脱獄し城内を逃げ回ったが、王の寵臣ガーランドと鉢合わせしてしまう。イルバースの大火事は城の人間の仕業だとボブは王をなじったが、ガーランドによって再び捕らえられてしまった。
 その後ガーランドの下に、チェスターが採石場での顛末を報告に来た。ガーランドは魔道師デュラーンを倒され、彫像も手に入れ損ねたことを責めた。
 彫像のありかに詳しいため、イルバースの生き残りではないかとガーランドが訊ねると、チェスターは否定した。チェスターは引き続き彫像捜索の指揮を執ることになったが、ガーランドはチェスターに不信感を覚えていた。


第二章 懐かしき人々

1 アイーダ婆さん

 レドモントに戻ったアドルは、ボブの祖母アイーダの家を訪ね、ペンダントを手渡した。アイーダはボブの生存を絶望視していた。アイーダによれば、採石場は子供の出入りが禁じられており、ボブのような少年が中にいることは不可思議なことだった。
 ドギはエレナに頼まれてイルバーンズの遺跡に行っていた。エレナは遺跡に行ったきり戻ってこないピエール神父を心配していた。アドルは神父とボブの失踪に関連を感じた。一方アドルがチェスターが王の手先として働いていることをドギに伝えると、ドギは険しい顔をした。

2 神父の行方

 翌日、アドルはピエール神父に会おうと教会を訪れたが、神父はまだ戻っていなかった。エレナによれば神父とチェスターは遺跡に興味を持っていたらしい。アドルは神父を追って、エレナの案内で遺跡に向かうことにした。
 遺跡が近づくと、エレナは淋しげな様子を見せた。アドルが理由を尋ねてみると、かつてここにエレナやドギの生まれ育った村があったが、大火事で焼失したという。エレナの両親をはじめ、そのときに多くの村人が命を落としていた。アドルはドギが故郷を避けたがった理由を悟った。
 遺跡に足を踏み入れた二人はチェスターのペンダントを発見し、チェスターも遺跡に出入りしていたことを知る。

3 イルバーンズの遺跡

 イルバーンズの遺跡も魔物であふれていた。魔物はガーランドによって動かされているという。採石場、遺跡と立て続けに魔物が襲来してきたことに、アドルは魔物が何かを狙っていることを確信した。

4 地下礼拝堂

 遺跡の奥で、アドルはチェスターと神父が話している様を立ち聞きする。二人は彫像を巡って言い争っていた。チェスターは彫像を捜していることを秘密にすべく、秘密を知った神父を拘束するつもりだった。神父はそこまでするようになってしまったチェスターの変貌を嘆いた。
 神父を救うべくアドルはチェスターの前に飛び出たが、逆に神父を人質に取られ、捕らえられてしまった。

注:神父はゲームではエドガーと協力して彫像を捜しているのだが、本作でそうした描写はない。遺跡に行った理由は「興味があるから」で済まされている。

5 灼熱の地底

 アドルはドギやエレナが嘆き悲しんでいると訴えたが、チェスターは取り合わなかった。王に荷担していることと十年前の大火事の関係を問いただそうとすると、有無を言わさず殴られた。アドルはチェスターが自分自身の目的のため、城の者に出自を隠していることを察した。チェスターは遺跡の地下にある溶岩地帯にアドルを突き落とした。

6 痺れ

 高所から落下したにもかかわらず、アドルは大怪我を負うこともなく命を取り留めていた。アドルは脱出を試みた。

7 地獄巡り

 アドルは魔物を退けつつ、灼熱の溶岩地帯を進んだ。やがて地上につながっているらしい斜面にたどり着いた。

8 池の主

 斜面を登り切った広間の溶岩池には、火竜ギルンが潜んでいた。アドルはギルンを倒すと先を急いだ。

9 守護像

 探索を続けるうち、アドルは翼竜の石像を発見した。アドルが近づくと石像は実体化し、「円月の彫像」を手に入れたくば我を倒せとアドルに襲いかかってきた。
 ギャルバと名乗る翼竜は戦いの末、フェルガナを災厄から守るためアドルに彫像を託すと言い残し、自ら倒れてしまった。アドルは「円月の彫像」を手に、自らの使命の重さを感じていた。

10 脱出

 探索の末、アドルは遺跡に戻ってきた。そこで遺跡に入ってきたエレナと合流した。どういうわけか、エレナは遺跡では魔物と遭遇しなかったらしい。
 二人が遺跡の出口を目指していると、チェスターとガーランドが近づいてきた。二人は物陰に隠れ、チェスターとガーランドのやりとりに耳をたてた。それによれば神父とボブは城に連れ去られていた。特にチェスターが王の手先として神父を捕らえたことに、エレナは動揺した。
 エレナはチェスターやボブのものとよく似たペンダントを持っていた。ペンダントはエレナの村、イルバースの民にのみ与えられるもので、魔物が寄りつかなかったのはこれのおかげらしい。ボブはイルバースの生まれで、3際の時レドモントのアイーダに引き取られていた。アドルはエレナに請い、イルバースについて教えてもらうことにした。

11 惨劇の村

イルバースの民のペンダント

 イルバースの人々は、イルバーンズの遺跡を守りつつ平和に暮らしていた。十数年前に即位したマクガイアは無能な王だったが、即位して間もなく、理由も明らかにせず、イルバースの民に立ち退きを迫ってきた。当然村の民は王の要求をはねつけた。そんなある日大火事に見舞われ、村は壊滅したのだという。その後城より、大火事は盗賊団の仕業であるという触れが出たが、王の仕業であることは明らかだった。
 エレナとチェスターはその生き残りで、二人を助けたのがドギだった。ドギもイルバースの出身だったが、事件当時村にいなかったため難を逃れていた。ドギは王への復讐を叫んで町を出て行ったが、消息はそれきり途絶えてしまった。チェスターは復讐を諦めたのだと、ドギを批判するようになったという。王を憎むチェスターが王に荷担するという矛盾した行動に、アドルはチェスターが復讐を期して王に近づいたのではないかと推測した。
 そこにチェスターが現れた。アドルとエレナは王への協力を止めるよう訴えたが、チェスターはかたくなに拒否し、一触即発の事態になる。エレナの訴えによりその場は収まったが、チェスターはアドルとエレナに、自分に手出しするなと言い残して去っていった。

注:プロローグで描かれるのはこの大火事。


第三章 石が語る伝説

1 四つの名石

 彫像はフェルガナで採れる名石をあしらったものだった。コルドーによれば、名石は全部で四種類あるという。
 ボブを捜索に行ったはずのドギは、人に会うため、エルダーム山脈まで二、三日遠出をすると言い残して外出したきりだった。アドルはドギが王の目的と行動について、何か知っているのではないかと推測する。

2 フェルガナの神々

 アドルはエドガーに遺跡での顛末を話し彫像を見せると、エドガーはアドルにフェルガナの伝説を教えた。古来フェルガナは四柱の神々が治めていた。四つの名石は神々になぞらえられ、石を戴く彫像はその神々の力の象徴とされた。彫像はイルバースの民によってイルバーンズの遺跡に祀られていた。伝説によれば彫像は全部で四つある。アドルはチェスターたちの目的は四つの彫像を集めることだと気が付いた。アドルはエドガーに彫像を預かってもらうことにした。
 さらにエドガーによれば、十年前、危険を察知したイルバースの民により、彫像は遺跡から各地に移されたという。イルバース出身のアイーダなら残る彫像のありかを知っているかもしれないが、それも不確かなことだった。
 エドガーの指示により、まずは城からボブと神父を連れ戻すことに決まった。

3 深夜の賊

 翌朝、アドルはデューイに、昨晩エドガーの家に盗賊が侵入したことを知らされた。エドガーによれば城の兵士が現れ、採石場の開かずの扉の鍵を奪っていったという。開かずの扉の向こうは古い坑道で、かつて落盤事故があって以来閉鎖されたままになっていた。
 時を同じくしてアイーダの家も荒らされ、しかもアイーダ本人も姿を消していた。アドルとエドガー、坑夫達は城の者を追って、急遽採石場に向かった。

4 開かずの扉

 開かずの扉はすでに開いていた。その先で一行は一枚の石版を見つけた。それには勇者が巨大な魔王と戦っている絵が描かれていた。魔王の名はガルバラン。かつて恐怖とともにフェルガナに君臨していたが、神の加護を得た若者によって打ち倒されたという。ガルバランは今でもフェルガナの人々に恐れられていた。占い師やギャルバが予言したフェルガナの災厄とは、ガルバランの復活を指していたのだ。

5 死角

 魔物を退けつつ、アドルとデューイはさらに奥へと進んでいった。最深部には彫像を守る守護獣イスターシバがいて、潜入した城の兵士はことごとく殺されていた。アドルは苦戦しつつもイスターシバを倒し、「流星の彫像」を手に入れた。
 ところが突如そこにチェスターが現れ、アドルから彫像を奪ってしまった。

6 吉報

 アドルが目を覚ましたのはコルドーの宿屋だった。イスターシバを倒した後昏倒し、丸一日眠りこけていたという。その間にボブは解放されて町に戻っていた。

7 帰ってきた少年

 アドルはエドガーに開かずの扉での出来事を報告し、預けてある彫像が狙われる危険があることを告げた。
 ボブはエドガーの家に身を寄せていた。ボブによれば、以前アイーダに彫像を守るよう言いつかり、その一つが採石場にあると教わった。そこで採石場に行ったところを兵士に見つかり捕まったという。チェスターはアイーダのこともボブから聞き出していたらしく、その見返りとしてボブは解放されたらしい。また、アイーダに引き取られる以前、ボブは山の中の一軒家で男二人と暮らしていたと話した。
 そこにガーランドと兵士を連れてマクガイア王がやってきた。王は魔物の力で領土拡大を企んでおり、そのためにガルバランの復活が必要だという。ガルバランは四つの彫像によって封じられていた。ガーランドは彫像捜しを手伝うようにと迫ったが、エドガーはこれを断った。城の一行は神父を人質に取っていることをほのめかして去っていった。
 マクガイア王の野心は、ガーランドが吹き込んだものだった。王の即位直後、突如ガーランドが現れ王に取り入り、以来黒幕として王を操っているのだという。イルバースの滅亡もガーランドの仕組んだことだと言われていた。エドガーはアドルに最後の彫像捜しを依頼した。

8 寡黙な男

 アドルは町を出て行ったきりのドギを心配していた。エレナによれば、ドギが出かけていったエルダーム山脈では、セイガルという男が炭焼きをして暮らしていた。アドルはセイガルに会いに行くことに決めた。

9 エルダーム山へ

 翌朝、アドルはセイガルを訪ねてエルダーム山脈に向かった。山を登るうち、炭焼き小屋のものとおぼしき煙を見つけた。

10 美しき魔物

 アドルの前に、岩の魔物ハリックと半人半鳥の魔物リガティが現れた。アドルはなんとかリガティを倒したものの、毒を受け身体の自由を奪われてしまった。そこにハリックが襲いかかり、アドルは山の斜面を転げ落ちていった。

11 先客

 アドルはドギにより救助され、セイガルの小屋に運び込まれていた。小屋には町から姿を消していたアイーダがいた。その身に危険が及ぶことを心配して、ドギが小屋にかくまっていたのだ。アドルがアイーダに彫像のありかを訊ねると、四つ目の彫像を隠したのがドギとセイガルであることを教えてくれた。アイーダとドギは十年前の出来事について語った。

 十年前、焼き討ちに気が付いたセイガルはイルバースに駆けつけた。そこで赤ん坊と長老がまだ生き残っているのを発見した。長老は彫像を安全な場所に隠すようにと遺言して息を引き取った。四体のうち二体はすでに遺跡から移転されていた。セイガルは赤ん坊を助け出すと、遺言通り彫像を隠そうとしたが、遺跡から持ち出すことができず途方に暮れてしまった。
 ドギもイルバースの民だったが、村での生活に反発してレドモントで暮らしていた。城の者が村を狙っているという話を聞き、ある日様子を見に行ったところ、村はすでに壊滅していた。ドギは生存者のチェスターとエレナをレドモントに預けると、王に復讐しようと村に戻ってきた。そこでセイガルと出会った。
 セイガルは復讐に逸るドギを一喝し、彫像の移動を手伝わせた。一体は遺跡地下の溶岩地帯に突き落とし、もう一体はエルダーム山脈に隠した。ドギはセイガルの手伝いをしつつ、武術を教わった。救助された赤ん坊の世話もドギに任された。その赤ん坊がボブだった。
 そして三年が過ぎる頃、ドギの復讐心は消えていた。セイガルのおかげでドギは精神的に成長し、復讐よりも前向きに生きることの方が大事だと思うようになっていたのだ。城の者も彫像探索を諦めかけていた。ボブは祖母アイーダに返された。ドギは城の者が不審な動きを見せた時は彫像のありかをイルバースの生き残り、チェスター・エレナ・ボブの誰かに明かしてくれとアイーダに言伝すると、誰にも告げずレドモントを去り、旅に出たという。誰にも告げなかったのはチェスターの復讐心を刺激しないようにとの配慮だった。

 アイーダは彫像のありかをボブに教えるかどうかをピエール神父に相談した際、採石場に彫像があるということを神父に漏らしていた。それが巡り巡ってチェスターの耳に届いてしまったらしい。
 アドルが何も告げずにレドモントを去ったことが、結果的にチェスターを焚きつけたとドギを非難すると、ドギは気を悪くして、彫像のありかを教えなかった。

注:プロローグの最後に現れた大男とはセイガルのこと。

12 炭焼きの男

 アドルが彫像のありかをセイガルから聞き出そうとすると、交換条件として、薪割りの手伝いを言い渡された。負傷していたアドルにとって、薪割りは格好の肩慣らしとなった。
 セイガルはアドルにかつてのドギの話をした。セイガルは復讐に逸るドギをなだめるべく、自分の仕事の手伝いやボブの世話をさせ、関心を他のことに向けさせたのだという。

13 闘竜

 約束どおり、セイガルはアドルを最後の彫像のありか、氷の洞窟に案内した。奥では最後の守護獣ギルディアスが待っていた。強力な攻撃に苦しみつつも、薪割りで身につけた兜割りを決め、アドルはギルディアスを打ち倒した。アドルは最後の彫像「暗黒の彫像」を手に入れた。

注:ギルディアスの名前は「ドラゴンスレイヤーIV」の最終ボス「ギルディオス」に由来していると思われる。

14 奪い合い

洞窟に閉じこめられた二人

 そこにチェスターが現れた。チェスターとアドルは彫像を巡って揉み合いになったが、そのために落盤が起こり、二人して洞窟に閉じこめられてしまった。観念したチェスターは、自らの真意をアドルに語り始めた。
 チェスターの目的は、イルバースを滅ぼしたマクガイア王への復讐だった。城に潜り込んで分かったのは、王がガーランドにそそのかされ、世界征服のためにガルバラン復活計画を進めていることだった。チェスターにはガルバランの恐ろしさが分かっていた。王自らの野心によってマクガイア王を自滅させようと企んだチェスターは、ガルバラン復活を阻む彫像捜しを手伝うことにしたというのだ。
 アドルは、その巻き添えで多くの人々が犠牲になることを訴えたが、チェスターは仲間や両親を目の前で失った自分の気持ちが分かるものかと突っぱねた。

15 決意

 やがてドギが救助に現れた。チェスターはドギを復讐を止めた裏切り者だとなじったが、ドギは正気を取り戻せとチェスターに殴りかかった。
 翌朝、チェスターは彫像とともに姿を消していた。アドルとドギはチェスターを追って城に向かうことにした。

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