第七章 よみがえる王国

レファンス公

1・祝勝会

 ガザールではロムン兵が監視の目を光らせており、容易に長老に会えなかった。攻城戦祝勝会のどさくさに紛れ、アドルは長老に三つの宝珠を集めたことを報告する。

2・大長老の館

 長老の案内でアドルはついに大長老と対面する。大長老は、セルセタの災厄は、グルーダ達よりも邪悪な意志によるものだと言う。大長老はアドルを英雄レファンスの意志を継ぐ者と見込んで、レファンス廟に案内した。

3・英雄レファンス公

 アドルがレファンス廟で三つの宝珠を示すと、レファンスの霊が現れた。「古代超文明の大いなる力」の悪用を恐れたレファンスは、古代都市を復活させ「古代超文明の大いなる力」もろとも破壊せよと告げる。アドルは古代都市を復活させるため、炎の山に「英雄の剣」を探しに行った。

4・英雄の剣

 剣を守る三つの仕掛けをかいくぐり、アドルは「英雄の剣」を手に入れる。剣を台座から引き抜くと、古代都市が浮上をはじめた。レファンスは三つの宝珠をエルディールに渡してはならないとアドルに告げた。

注:剣を守る仕掛けの描写がいかにもゲームっぽい。

5・洪水

 ガザールでは長老の指示の元、住民達が村を捨てて逃げ出していた。そこにエステリアからロムン部隊の軍艦が戻ってきた。古代都市の浮上にともない言告げの湖が決壊し、軍艦ともどもガザールは押し流されてしまう。

6・目覚める

 山々は崩壊し、代わりに古代都市が現れていた。大長老は「古代超文明の大いなる力」の復活には三つの「仮面」が必要であることを告げ、アドルを古代都市に向かわせた。


第八章 大いなる力

アドルと対峙するエルディール

1・青銅の街区

 エルディール達は早々に古代都市の中枢「黄金の神殿」に着いていた。レオは生き残った兵士をかき集め「青銅の街区」から都市に侵入した。ドギもリリアを探して古代都市を目指していた。アドルは「古代超文明の大いなる力」復活に必要な「仮面」のことが気になり、大地の神殿を目指すことにした。

2・轍

 アドルは大地の神殿で、五忠臣の一人タリムの霊と対面する。タリムは古代都市の各地に祀ってある五忠臣の霊に会いに行くよう告げ、アドルに都市内を移動するための「高飛びの魔法」を授けた。神殿にあったはずの「大地の仮面」は何物かによって持ち去られていたが、床にはその際に付けられた轍が残っていた。アドルは轍を頼りに古代都市を探索する。
 エルディール達は「黄金の神殿」の祭壇に大地の仮面を運び込んでいた。エルディールはアドルの動きを警戒していたが、バミーは再びリリアを利用することを思いつく。
 レオ率いるロムン部隊は、デュレンの指示で月の仮面を運んでいる最中だった。

注:魔法は古代都市の内部でしか使えないことになっている。

3・隔壁

 「白銀の神殿」から外に出たアドルは、「月の仮面」が転がってくるのを目撃し、「月の神殿」を目指すことにした。

4・月の神殿・太陽の神殿

 月の神殿ではミーユの霊が待っていた。ミーユはアドルに一度きりだが全ての攻撃をはねのける「太刀避けの魔法」を授ける。
 次に目指したのは太陽の神殿だった。「太陽の仮面」も持ち去られていた。ここでもラディーの霊に会い、「火だまの魔法」を授かった。ラディーが「スラノの塔」にリリアがいることを伝えると、アドルは「高飛びの魔法」でスラノの塔に向かった。

アドルを嘲弄するバミー

5・スラノの塔

 スラノの塔ではバミーがリリアと共に待っていた。バミーはリリアを人質に、アドルから「英雄の剣」と三つの宝珠を奪うと、約束を破ってリリアを殺してしまう。リリアは「古代超文明の大いなる力」復活のための生け贄だったのだ。

注:バミーがアドルをからかう場面で、アドルはリリアが好きだと口にしている。アドルとリリアが両想いなのは作者による小説版の特徴。アドフィー派がどう思っているかは想像に難くない。

6・落下

 さらに落とし穴の罠に引っかかり、アドルは墜落死しそうになるが、スラノの霊に助けられる。塔の内部に閉じこめられてしまったアドルは「火だまの魔法」で壁に穴を開け始めた。それに答えるかのようにドギが壁を破って現れる。

7・脱出

 リリアは絶命していた。落胆するドギとアドルの前にリーザが現れた。リーザはエルディールを止めるため古代都市に来ていた。リーザはアドルにエルディールの首飾りを渡し、祭壇で首飾りを使えばリリアを蘇生できるかもしれないと言った。アドルは祭壇を探して「トリエの塔」へ向かった。

8・復活の儀式

 「トリエの塔」にはガディスが潜んでいたが、これを「火だまの魔法」で打ち倒す。塔には祭壇があった。そして首飾りとエリクサーの力でリリアは蘇った。

剣を交えるアドルとグルーダ

9・神殿の扉

 「黄金の神殿」前では、ロムン部隊が開門に手こずっていた。そこにグルーダとバミーが現れ、財宝を餌に「月の仮面」を手に入れようとする。しかしデュレンは仮面を渡してはならないとレオに訴えた。
 実はデュレンも闇の一族だった。ロムン部隊をそそのかして黄金の都を探させたのは、グルーダの計画を失敗させることで、過去の栄光に取り憑かれた一族を救うためだったのだ。
 アドルはデュレンと共にグルーダ達と戦った。激しい戦闘の末、デュレンはバミーと刺し違え、レオ含めロムン部隊は全滅してしまった。アドルはレオからクレリアの剣と鎧を取り上げた。しかし「月の仮面」は黄金の神殿へと運び込まれてしまった。

10・勇気の翼

 「古代超文明の大いなる力」の復活は時間の問題だったが、万全を期したエルディールは守りを固めることにした。エルディールはバミーとガディスを復活させた。
 アドルは「トリエの塔」に魔物が結集しているのを不審に思い、塔へ向かった。そこにトリエの霊が現れ、「勇気の翼」を使えとアドルに告げる。 塔の最上階では復活したバミーとガディスが待っていた。カーナとレムノスの助太刀もあり、アドルは何とか二人を退けた。アドルは塔の頂上から「勇気の翼」ことゴーバンから貰った魔法の翼を身につけ、「黄金の神殿」めがけて飛び降りた。

11・黄金の神殿

 「古代超文明の大いなる力」は復活を遂げていた。エルディールは超兵器「怒りの鉄槌」を操り、世界を破滅させようとしていた。グルーダは調子に乗るエルディールを快く思っていなかった。
 アドルはついにエルディールと戦うことになった。しかしそこにリーザが現れ、エルディールは元の心を取り戻す。ところがその隙をついて、グルーダはもはや邪魔者となったエルディールを殺害した。アドルはグルーダを一撃で斬って捨てた。

アレム復活

12・邪悪なる者

 エルディールの命は風前の灯火だった。エルディールは自分の過ちをアドルとリーザに詫び、「怒りの鉄槌」の破壊を頼む。
 しかし、そこに殺戮王アレムが襲いかかった。グルーダの身体を依り代に、アレムが復活を遂げたのだ。セルセタの災厄はアレムの意志によって引き起こされたものだった。
 アドルは「太刀避けの魔法」を使って応戦したが、苦戦を強いられた。しかしレファンスと五忠臣の助力を得て、最後にはアレムを撃破する。レファンスと五忠臣は、アレムと共に消え去った。

13・落日

 戦いが終わってアドルの元にドギが駆けつけた。ドギはロムン部隊から奪ってきた大砲で「怒りの鉄槌」を破壊したが、それにともない古代都市が崩壊を始めた。アドルはドギと共に脱出したが、そこにリーザとエルディールの姿はなかった。


エピローグ

 古代都市の壊滅と共に、悪の野望は潰えた。グルーダ達三人を失い闇の一族は離散する。ロムン部隊はセルセタを去り、レオ及び主力部隊は洪水により全滅したと伝えられた。
 村人の努力でガザールは短期間で復興を遂げていた。アドル・ドギ・リリアはプロマロックへ向けて出発していった。


解説

 大場氏の小説版は、設定も物語の流れもゲームを忠実になぞらえたものとなっています。ゲームとは別の話を目指した飛火野氏の小説版とは全くの対極にあるといってよいでしょう。しかし不思議なのは、この小説版も、飛火野氏の小説版同様、ファンにはあまりうけがよくないのです。
 最大の理由はファンタジー小説として面白味に欠けることでしょう。作者が元々SF作家だからかもしれません。時に「ゲームをそのまま文章にした小説」と揶揄されるほど、文体は説明的で具体的にすぎるきらいがあって雰囲気に欠けます。また、もったいぶった言い回しも多く、全体的な冗長さは否めません。終盤が端折りがちなのも気になるところです。
 参考までに、飛火野氏の「イース 失われた王国」が文庫本で250ページ程なのに対し、作者の「イースI天界へそびへし魔塔」が同じく320ページ程です。飛火野氏はその中でアドルの生い立ちから魔との対決までやってしまうのですが、作者の場合エステリアに流れ着いてからダルク=ファクトを倒すまでとなっています。
 また、作者自身PCエンジン版から「イース」を始めたせいか、PCエンジン版が底本になっているのも古くからのファンには減点対象だったようです。特に一連の小説版ではアドルとリリアが相思相愛ということになっているため、アドル×フィーナ派には嫌われています。
 忠実な割に評価されないのは、このあたりに問題があったのでしょう。当時から「イース」シリーズのファンにはこだわりのある方が多く、少しでも気にくわないものは「こんなのイースじゃない」「イースを分かっていない」などと感情的に拒否することがしばしばだったのです。
 「失われし古代王国」にこだわりすぎるあまり、ファンも制作者もそこから脱却できなかったことが「イース」シリーズの最大の悲劇だったのかもしれません。

 大場惑氏は現在も作家として活動しています。最近の仕事では、個人制作アニメーションとして高い評価を受けた新海誠氏の「ほしのこえ」の小説化を手がけています。新海氏が元日本ファルコム社員として「イースIIエターナル」などのムービーを作ったことは知られていますが、妙なところで日本ファルコムと縁があるものです。

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