「イースV」は小説にもなっています。アスペクトより上中下巻の全三冊が、ログアウト冒険文庫(下巻のみファミ通ゲーム文庫)として発売されました。著者は大場惑氏。イラストは池上明子さんという、アスペクトの小説版「イース」シリーズおなじみの顔ぶれです。今回から三回に分けて、小説版「イースV」を紹介いたします。
|
少女リジェは母親の看病をしていた。己の臨終が近いことを悟った母はリジェに、自分の死後キルプ島のグリッドという男を頼りにするようにと遺言し、鷹の紋章が入ったメダルを託した。半月後、リジェはメドー海の沖を目指していた。
フェルガナでの冒険から1年後。アドルとドギは商船に便乗し、アフロカ大陸の大都市サンドリアに上陸した。二人の目的は「さまよえる幻の都」を探すことだった。
船を下りるなり、ドギはアドルと別れて歓楽街に行ってしまった。一人残されたアドルは、船荷を狙う強盗団「ナルムの使徒団」を発見し、退治しようと勝負を挑む。伯仲した攻防が続いたが、使徒団の女首領の指示で、使徒団は引き揚げていった。そしてアドルの前に、その戦いぶりを見ていたという男が現れた。
男はツェットと名乗った。サンドリア有数の豪商ドーマンに仕えており、その指示で腕利きの冒険家を捜していた。ツェットによれば、ナルムの使徒団とは、500年前サンドリアに栄えていたナルム王朝の復興を標榜する集団で、女首領の名はリジェというらしい。ツェットの誘いでアドルはドーマンの屋敷を訪れ、主ドーマンの歓待を受ける。
翌日、ツェットはアドルをサンドリアの図書館に連れて行き、サンドリアの歴史と地理を紹介した。
サンドリアはナルム川の河口に開けており、その周辺には穀倉地帯が広がっている。ところが最近急に西方の砂漠化が進み、またナルム川も疲弊し、穀倉地帯は砂に埋もれつつあった。
その西の砂漠にはかつて「賢者の術」と呼ばれる高度な文明を誇るケフィン王国が栄え、ナルム王朝の狙うところだったが、「賢者の術」によりケフィンはある日忽然と消えてしまったという。
屋敷に戻ったアドルは、ドーマンに、砂漠化によりナルム一帯が危機に瀕していると教えられた。ドーマンは砂漠化の原因はケフィンの「賢者の術」であり、その力があれば砂漠化を食い止められるという。そのためにドーマンはこれまでも冒険家を雇ってケフィンを探しており、アドルにもケフィン捜索を依頼した。快諾したアドルに、ドーマンは手がかりとして、フォレスタ村で発掘された光の結晶「ルミナス」を渡した。
翌日アドルは、ドギを探してもらうため、よく当たると評判の占い少女ニーナを尋ねることにした。ところがニーナを捜し歩くうち、少女テラとその兄の大男ディオスとノティスこと、盗賊イブール一家のだまし討ちに遭い「ルミナス」を奪われる。
憤然としているアドルの前にニーナが現れた。占いは川の神様に伺いをたてるため、結果が出るのは翌日の朝になるという。アドルがドギと共にケフィンを探していると告げると、ニーナはケフィンとは関わり合いにならない方がいいと言いつつ、ナルム上流の村ラムゼンを目指すよう助言してくれた。
街の人によれば、ニーナの父は3年前に行方不明になったきりで、時々謎の美女が面倒を見に来ているらしかった。
翌朝ニーナを尋ねてみると、ドギの居場所が判明していた。無事ドギと合流したアドルは、ドギにこれまでのいきさつを語って聞かしたが、ドギはドーマンについてあまりいい噂を聞いていないとアドルに言った。
サンドリアを出発する前に三度ニーナの元を訪れたアドルは、謎の美女ことマーシャと遭遇する。
夕方になって、アドル一行はフォレスタ村にたどり着いた。ところがケフィンを探しているとドギが言うと、村人は態度を硬くした。そこに現れた長老ギムナムは、一行を氷の洞窟に導いた。
中にはマーシャによく似た氷漬けの美女フォレスタがいた。フォレスタは五百年前のケフィンの秘賢者(賢者の術を操る者)で、この地で秘術を行った際、手違いで氷漬けになってしまったという。その手元には「ルミナス」があったが、5年前、スタンという冒険家一行に持ち去られてしまった。それ以降、土地が痩せはじめたとギムナムは語った。
夢に導かれアドルが氷の洞窟に行くと、フォレスタを守る謎の魔人が現れた。ストーカーと名乗る魔人はアドルを見込んで、ケフィンに連れていってくれと、自らを腕輪の姿に変え、半ば強引にアドルに同行した。
一行はナルムの惨状を目の当たりにした。フォレスタ村からラムゼンまでの陸路は衰退し、村々は皆うち捨てられている。魔物が出没し、人々は村を捨てたのだ。
ラムゼン到着を目前にして、一行はナルムの使徒団が、旅人に迫っているのを目撃する。一行が助けに向かうと、ナルムの使徒団は撤退していった。
旅人は少女エフィと老婆ノルム。二人は砂に埋もれつつあるフェルテ村から、救いを求めにラムゼンに向かっていた。二人の様子を見かねたドギは、力を貸そうとアドルと別れフェルテへ向かった。
一方、使徒団はメドー海沖の本拠地にいた。リジェは「亡霊」にこれまでのことを報告する。
情報を仕入れようと、アドルはラムゼンの酒場を訪れた。酒場にいた男タジフは、空飛ぶ船でケフィンに行ってきたと言ったが、人々はタジフは気が触れたとして、まともに取り合っていなかった。別の客の勧めで、アドルは「女先生」に会うことにした。
女先生とはマーシャだった。アドルはその美しさにときめきを覚える。アドルは自分がドーマンの依頼でケフィンを探しており、「賢者の術」でサンドリアを救いたいのだと述べると、マーシャは「賢者の術」が本当に人のためになるのか、と疑問を投げかけつつ、助言を与えた。
「賢者の術」とは、人の手で万物を自在に作り出す術のことで、結晶はそのために必要なものだった。結晶は「ルミナス」の他に4つあり、全てを揃えればケフィンへの道が開かれる。
マーシャの家を警備している青年グートによれば、マーシャは3年前にラムゼンに現れた。アドルはニーナの父親が失踪した時期と、マーシャが現れた時期が同じであることに気付くが、まずは残る結晶を探し出すことにした。