アドルはフェルテ経由でラムゼンの西方に向かった。フェルテの入り口では、エフィの父親で村長のムハーバの信頼を得ようと、ドギが魔物退治に精を出していた。アドルは砂漠越えを試みるが、砂嵐と魔物に阻まれ、ひとまず撤退することに決めた。
次に向かったのはラムゼン南方にあるセーベの遺跡だった。遺跡に向かう途中、二人組の大男に襲われたという中年女を見つけ、その頼みで二人を追うことにした。
地下迷路で二人を追ううち、アドルは結晶を守る竜と出くわすが、ストーカーの手助けでこれを倒す。二つ目の結晶を手に入れようとすると、中年女に横取りされた。
中年女はイブール一家の頭アルガで、テラ・ディオス・ノティスの母親だった。イブール一家もまた、結晶を狙っていた。一家ははじめから、アドルが守護獣を倒したところで二つ目の結晶「テール」を奪おうと、またしてもだまし討ちにかけたのだ。
地下迷路から脱出したアドルは、魚人トピィに導かれ、密林の中の泉にたどり着いた。ストーカーによれば、ここに三つ目の結晶「ピュイ」があるという。ストーカーの呼びかけに応えて、水の精霊ネードが姿を現した。
「ルミナス」が持ち去られて以来、「封陣」が解けかけており、ケフィンの力が地上に影響を及ぼしはじめた。それがナルムの災厄を招いたという。ネードはストーカーとフォレスタが恋仲であることをアドルに伝えるとともに、ナルムを救ってくださいと「ピュイ」を託した。
今度はストーカーの導きで、アドルは密林に住むストーカーの師匠、サラバットの元へ連れて行かれた。ストーカーはナルムの災厄を食い止めるため力を貸せとサラバットに頼んだ。サラバットは三つの結晶が持ち去られたと聞くに及び、ストーカーを問いただそうとする。ストーカーは詳細はアドルに訊けと言い残し、腕輪に戻ってしまった。
サラバットによれば、五つの結晶はケフィンを異界に封印するためのものだった。その力が五百年の時を経て弱まった今、再びケフィンを封印するのは困難で、後戻りはきかない。サラバットから、残る二つの結晶「ニュクス」と「アグニ」がそれぞれセーベの遺跡とケフィンの遺跡にあることを聞き出したアドルは、サラバットの勧めで「アグニ」を先に探すことにする。
アドルはひとまずドーマンに報告するため、手製の筏でナルム川を下ってサンドリアに帰った。
アドルはドーマンにこれまでの成果をかいつまんで報告した。ドーマンは大いに満足し、この調子で残る二つの結晶を探して欲しいと言った。アドルは砂漠越えに必要な装備をドーマンから受け取り、さらにドーマンのセーベ遺跡探索隊に加えてもらうという約束を取り付ける。アドルはドーマンやツェットの何かを隠したような言動に、不信感を抱き始めていた。
サンドリアを出る前にアドルはニーナに会いに行った。ニーナは土笛を吹いていたが、突然倒れた。時々意識を失うことがあるとニーナは口にしたが、それ以上のことを話そうとはしなかった。
アドルはニーナの父親がスタンであることを確かめ、詳しい話を聞き出す。ニーナとスタンは血が繋がっていない。ニーナは5年前、それ以前の記憶を全く失った状態で砂漠に倒れていたところを、スタンに保護されたのだ。スタンは3年前に消息を絶っていた。土笛はスタンの形見の品だった。ニーナはアドルに、スタンを探してくださいと頼んだ。
アドルはラムゼンでイブール一家と遭遇する。一家は自分たちも誰かの依頼を受けて動いているとうそぶき、アドルが砂漠から結晶を持ち帰ったら奪い取ってやると挑発した。
フェルテでは、ドギが村人と共に井戸を掘っていた。ドギはフェルテを砂漠から守るため懸命に働き、ムハーバ始め村人からも信頼されるようになっていた。エフィはドギに興味を持っていた。ドギの変貌にアドルは感心する。
アドルはムハーバにケフィンについて尋ねてみた。するとべーウィン族の村を訪ねてみるよう助言し、さらに3年前、スタンがケフィンの遺跡に向かったきり帰っていないことを教えてくれた。ドギをフェルテに置いたまま、アドルは単身、ケフィンの遺跡を目指した。
野宿中、アドルは積もる砂に埋もれかける。そこにドギが現れた。エフィを気にしつつも、助けに来てくれたのだ。一行は夜通し歩き続け、砂嵐を抜けることにした。
一行はべーウィン族の村にたどり着いたものの、べーウィン族は村を捨て、別の場所に移動するところだった。一行は長老ヌハムにケフィンについて尋ねてみた。
ケフィンは時折地上に現れる。特にここ数年は頻繁に現れるようになったが、実体をつかんだ者はいないという。一行は、ケフィンの遺跡に向かうことにした。
一行は砂漠で、都市一つ分の巨大な影が移動しているのを目撃する。実体は見えなかったが、この影がケフィンのものだと一行は確信する。
ケフィンの遺跡はかなり風化が進んでいた。遺跡の中で、一行は涸れ井戸に落ちた犬のような魔物を発見し、救助する。魔物は人語でコボルドのコロと名乗った。一行はコボルドたちにじゃれつかれ、熱烈な歓迎を受ける。
かつてコボルドは旧都でケフィンの人間と暮らしていた。人間がケフィンの新都に移る際に見捨てられ、その子孫たちが今でも旧都に残っているのだ。
コボルドによれば、スタンは遺跡の塔に入っていったきり帰ってこなかった。一行も塔に踏み込もうとしたが、誰かに命じられているらしく、コボルドは一行を阻んだ。一行はひとまず引き下がり、「誰か」の許可を得てからまた来ることにした。去りゆく一行に、コボルドは友好の証にと、結晶「アグニ」を渡した。
遺跡を出た一行は砂漠の遠方に、巨大な構造物ことケフィンの実体が現れ、宙に消える様を目撃する。一行は決意を新たにするのだった。
執筆にあたり、作者は原案(特に原案小説)を手に入れています。小説版「イースV」のあらすじは原案小説を忠実になぞらえていますが、登場人物の設定はゲームに準拠したものになっています。ですから原案小説に登場しなかったストーカーとフォレスタも登場していますし、リジェはゲーム同様女性です。ニーナは幼女ではなく18歳です。逆にゲームに登場しなかったドギとケフィン王も重要人物として登場しています。ただしゲームだけの登場人物、ウィリー少年は出てきません。
ゲーム本編では大きく採り上げられていた錬金魔法は全く現れません、原案同様マーシャから火球の魔法を放つ杖を与えられる程度です。原案では火球の杖を使う場面は全く描かれていないのですが、そのかわり小説版では、アドルが強敵相手に火球の杖を使う場面が何度か現れます。
原案小説とゲームの設定が、同じようで大きく異なっていることはこれまでも何度か述べているとおりですが、それゆえ、お互いの溝を埋めるのにはだいぶん苦心したようです。上巻のあとがきでは原案を指して「できればこのまんまゲームにしてほしいなと思ったぐらいです。ほんとに、このまんまだったら、苦労はなかったんですけど……。」と明かしています。