再録「ああ…すばらしきパソコンゲーム!!」

「ああ…すばらしきパソコンゲーム!!」90年1月扉絵 by ポッキー前嶋

 「ああ…すばらしきパソコンゲーム!!」とは、読者によるパソコンゲーム批評コーナーです。1980年代から90年代前半にかけて小学館が発行していた(編集・新企画社)パソコンゲーム雑誌「POPCOM」(ポプコム)の読者投稿コーナー「ポプコミュニティ」内の1コーナーとして89年に発足します。
 盛り上がらないまま始まった企画でしたが、コーナーの趣旨が浸透したのか、間もなく読者がゲームの感想や評価を活発に述べあうようになります。しかし素人の意見なので、理の通った意見、的を射た意見もあれば、ただの言いがかり、見当違いなものまで、その中身は玉石混淆でした。
 もちろん「イース」シリーズの批評も数多く寄せられたのですが、中でも発売時期の関係で「ワンダラーズ・フロム・イース」の反響が大きく、賛否両論が集まるうち、やがてRPGの定義を巡る一大論争へと発展します。雑誌の1コーナーにはすぎないのですが、当時「イース」シリーズがユーザーにどう受け止められていたか、ひいてはコンピューターRPG(以下CRPGと略)がどう受け止められていたかがよく伺えますので、今回は「ああ…すばらしきパソコンゲーム!!」の読者批評を追ってみましょう。
(投稿記事は囲みと斜体で表示。適宜中略。括弧内は掲載号と投稿者名)


「イース」の評価

 コーナーは89年2月号から「読者のゲーム評」という名で始まりました。「イース」の発売から約1年半、「イースII」の発売から8ヶ月ほど経っていましたが、まだまだ人気は衰えていませんでした。コーナーには数多くの称賛の声が寄せられたようです。

たっぷ・89年4月号

 私が、『イース』シリーズをこよなく愛する理由としては、
1.操作が簡単・嫌なトラップがない・マップもそれほど複雑じゃないなど、ゲーマーに対して、やさしく作ってある。
2.ストーリーがおもしろい。
 というところでしょうか。
 ほかにも、高速スクロールはついているし、説明書はきれいだし、ほんといたれりつくせりって感じがします。
 比較的、古いゲームになっちゃったけど、本当にのめりこんでいます。いまだに、フィーナちゃん好きだぁーっ! アドルくん、帰ってこぉーいっ、てなわけで、『イースIII』が待ちどおしい私なのでした。

(89/4・たっぷ)

 『イース』は、ストーリーが、いい!! 壮大なスケール、感動、愛!! どこかの映画の宣伝じゃないが、ここまで完ペキなストーリーは、本当にスゴイ!!
 そして忘れちゃいけないのが、あの音楽、ストーリーにあった音楽、迫力あり、聞いているだけでも、楽しいですよ!!

(89/6・しょーたろー)

 私もぜったい『イース』のストーリーがいいと思いますし、それにくわえて―曲です。曲もすごくいいですよ。
 この前、CD版『MUSIC FROM Ys』『Ys II』両方買ったんですが、すごくよかったですよぉ! それに、曲が変わるごとにアドルの姿が浮かんできて…。もぉ、最高!! 『イース』ファンには、ぜひ買って聞いてほしかったです―。

(89/8・恭平LOVE)

 「イース」「イースII」を賞賛する投稿者の多くが、ストーリーと音楽、世界観を絶賛しています。両作が評価された理由はもちろんそれだけに限らず、「優しさ」を打ち出したゲームデザインや、快適なプレイ環境を実現した技術力が支えになっていることは、たっぷ氏の批評からも伺うことができるのですが、「イース」「イースII」はなによりまず、ストーリーや楽曲、世界観の優れた作品と認識されていました。

注:拙サイトでは世界観という言葉を、物語の背景や登場人物をはじめとする種々の設定という意味で使っている。


「ワンダラーズ・フロム・イース」発売

 89年7月に、シリーズ待望の新作「ワンダラーズ・フロム・イース」(以下「イースIII」と略)が発売されます。「読者のゲーム評」は89年10月号のポプコムリニューアルに合わせて「ああ…すばらしきパソコンゲーム」と改題され、それに合わせたように「イースIII」の批評も送られてきたました。たびたびイース特集が組まれるほど反響は大きかったようですが、その内容は前作のような賞賛ばかりではなかったのです。

『イース』、初めて自分で買ったソフトがこれだった。そして、『III』を終えて、本当にすごいな、と感動した。
 ボスキャラが増えた。いろんなのがいたな。『I』や『II』ではジャンプがないから前後左右の動きだったけれど、今回は上下左右になった。結局、横スクロールだってわけ。この上下がおもしろいところだと思う。ジャンプのほかにも、しゃがむという上下の動き。ただ、今までとくにジャンプ専用キーがなかったのでたいへんだった。
 イベントも最高でした。キャラの動き、ほんとにいいですね。背景もきれいでとてもいい。ザコキャラにも手を抜かず、なんかしらの技をもたせているし……。
『ワンダラーズ・フロム・イース』を書き出すと、止まりませんな、これは。3日でクリアしてしまったけれど、中身はほんとにすばらしいものですよ。第4弾の「アドルの冒険」に期待します。

(89/12・小條尚人)

『イースIII』を解き終えました。わずか3日です。時間にして8時間。「ばかやろー」、1か月は遊ぶつもりだったのに……。
 PLAYして思ったことは、本を読んでいるといったほうがいいということ。ストーリーがしっかりしている。イベントシーンが多数あり、ゲームを盛り上げてくれる。しかしそのせいか、少しものたりない部分がある。ゲームをしているという満足感が少ないと思う。アイテムについていえば、数は少ないし、意味のないものが多い。シナリオの区切りになっているだけだ。
 文句ばかりいっているが、 ゲームそのものの水準はかなり高い。シナリオ、BGMなどはたいへんにいい。特に新しい戦闘シーンはよかった。操作は難しいが、リアルな動きには感動したし、自分オリジナルの技などを作って楽しめた。三重のスクロールもとてもよかった。細かい部分もよく気をくばってある。さすがはイースシリーズだと思う。次回作を楽しみにしています。

(89/10・下川翔)

 超スーパーウルトラエクストラ大人気の『イース』ですが、『イース』、『イースII』、『イースIII』と進むにつれて、技術というかゲームとしての完成度は向上しているのだけど、なんかだんだん面白みがなくなってきているような気がする。『イースIII』なんか終わってひとこと「おもしろいんだけどねー」。初めて『イース』をやって終わった時の感動がないんだよねー。なぜだろー。 そう考えると、『イースII』『イースIII』なんかは、できすぎているんだよね。ユーザーがやってほしそうなこと、ユーザーにうけそうなことを全部やっちゃってて「もうこれ以上は望めない!」って感じに仕上がっちゃってんだよね。もっと遊び感覚で作っちゃっていいと思うんだけど、どう?

(89/10・ANIKA)

 先日やっと『ワンダラーズ・フロム・イース』のPC-98版を手に入れ、さっそくプレイしてみましたが、いやーやっぱりよくできていましたね。ちょっと心配していた、疑似3Dから横スクロールへの移行もさしたる違和感はなかったし。
 なんといっても今回は経験値稼ぎがぜんぜんつらくなかった! アクション性が強まったせいだと思うけど、じつに快適にゲームが進む。デカキャラも増えたし、まったくもって戦闘が楽しいんだな、これが。アクションRPGシステムとしては、今のところ、これが最高だと思うんですがねストーリーの演出がうまいし、あとはアニメーションかなんかのビジュアルシーンでもありゃ、完璧ですよ。
 ただものたりなかった部分もある。ストーリーですよ、ストーリー! たしかに演出とかはすごいんだけど、かんじんのストーリーがね。『イースI・II』と比べて、明らかにレベルダウンしていますね。ちょっとうすっぺらな感じがするのは、否めないところでしょう。『イース』の伏線張りまくりの謎めいた展開、そして『イースII』の悲しみを織り混ぜた感動のエンディング。そのあととしては力不足。もちろん、それを上回るものを作るのは、そう簡単でないのはわかります。でも、この手のゲームって自由度は0でしょ。プレイヤーはストーリーを追っていくだけなんだから、ストーリーだけはしっかり作ってほしい。これほど完成度の高いシステムを作ったんだし、今度はこれにより充実したストーリーをのせて語ってもらいたい。それを成し遂げたときに、『イース』シリーズは真のARPGの王者となることでしょう。

(89/11・白ひ四季)

注:現在疑似3Dといえば、ポリゴンを使用しない奥行き表現、例えば「ウィザードリィI」や「スペースハリアー」のような表現方法を指すが、80年代には「イース」のようなトップビュー(上方見下ろし視点)表現もそう呼ばれることがあった。ポリゴンによる立体表現が一般的でなかった当時ならではの用法ではある。

JIL・89年12月号

私はイースが大好きだ!(とくに”イースII”)
でも「ワンダラーズ」は考えものだ。演出およびグラフィックはVeryGoodだが、ストーリーにイース/イースIIの時のよーな壮大さがない!
イースシリーズは簡単に解けるが、イイものはイイ!! 「ワンダラーズ」は考えものだ…。(「ワンダラーズ」のファンの人、ゴメンなさい)

(89/12・JIL)

 このように、「イースIII」は賞賛もされましたが、一方で出来はいいのだがいまいち、あっけない、という意見が多く寄せられました。サイドビューならではのアクション戦闘やグラフィック、スクロールなどの技術面は評価される一方で、ストーリーや音楽の物足りなさや、ボリュームの少なさを批判する意見が目立ちます。前二作と異なり「イースIII」は手放しでは賞賛されなかったのです。 
 「イース」「イースII」のストーリーが絶賛されたのは先述のとおり。「イースIII」にも充実したストーリーを期待するのも自然のなりゆきです。ただ「イースIII」は演出に力を入れたせいか、ストーリーの密度が薄まったきらいはあります。
 また、クリアタイムは「イース」も「イースIII」もさして変わらないのですが、謎解きがないのと、難易度もそう高くない分「イースIII」の方が解きやすくなっています。当時、RPGは時間をかけて遊ぶものだったので、長期間遊べることも望まれていたのです。
 「イースIII」はファンの期待に肩すかしを食らわす格好となり、それに大いに戸惑うユーザーが大勢いたことがわかります。「イース」は好きだが「III」はだめという人が多いのも特徴です。期待が大きかった分落胆も大きかったのか、酷評する人も現れました。

『イース』シリーズについて、いいたいことがある。まず『イース』と聞けば、だれもが不朽の名作と思うはず。僕もそう思う。しかし、『イースII』はもっとすごい。オープニングからクリアするまで、そして曲も。とくに、黒水晶を倒す前のみんなで盛りあがるところなんか涙が出たし、クリアしたときなんかぼろぼろ。もう最高。史上最高のゲームだぁー、ってことで『イースIII』と聞いたときは、ヤッピー、ヤッピーって飛んで喜んだ。
 で、さっそくオープニングを見ると、オッー、さすが! でも「なにかたりない」と感じつつゲームを進めると、原因が2つわかってきた。その1つは、音楽が合ってないということだ。いくら三重スクロールやグラフィックがすごくたって、音楽がだめじゃあ、終わりだな。そして、もう1つの原因。それは、『イース』はやっぱり疑似3Dでなくちゃあいけないということだ。今回、一番ひしひしとそのことを感じた。なんなら、疑似3Dで三重スクロールをやってみたら? なんて思った
 『イース』シリーズだからこそ、そう思うのかもしないけれど、『ワンダラーズ・フロム・イース』なんか、『イース』の風上にも置けねえ野郎だぜ。ざけんじゃねー! っていってやりたい。

(89/11 なにが『ワンダラーズ・フロム・イース』だー。ざけんじゃねぇー!)

ルクイズ・90年1月号

不満 Ys III比べろコーナー

YsIIYsIII
シナリオおもしろいあっけない×
キャラクターまぁふつう×すごい!リアル
MUSIC最高!!なんか合ってない×
オープニングフルアニメーションYsIIの方がいい×
マップこのぐらいがいいちょっとかんたん×
アイテム多い、大好き少ない‥‥×
エンディングかんどう!かんどうもの足りない×
6(私の評価なのでおこらないで)1(キャラクターはいいんだけど…)

P.S.YsIIIはYsIIを越えなくてはいけないのに...スクロールはバッチシなんだけど‥‥

(90/1・ルクイズ)

 この『イース』には、すでに大きなバックストーリーが全面につめ込んであり、そのところどころをプレイヤーが触れていくことで『イース』の国全体を味わっていくことができる、そんなゲームだとボクは思っている。
 さらに、このゲームのBGMなどもまた、『イース』という国の特徴をうまくかもしだしているのではないだろうか?
 また、『ワンダラーズ・フロム・イース(YsIII』がつまらない原因は、横スクロールタイプだったからでもないし、BGMが悪かったからでもない。原因は『YsIII』の舞台、フェルガナについてのバックシナリオがゼロに近い状態で、鍵的アイテムとグラフィックの羅列で終わっていた。そのためアクションゲームとしても最低、RPGとしてもつまらない、ただ写真映りのいいゲームになっていた(どうみてもあれはゲームができていて、そのあと場所と場所をつなげるために無理矢理シナリオをくっつけたんだと思う)。

(90/1・けすてぃおんは『イースII』やれ!!)

パーン羽柴・90年2月号

 アドルが勝手に、「ぼくは何のために戦っているんだ。」と、なやむ。そう言われてプレイヤーもふと、そう考える。これではアドルになりきれない!! イースIIIのアドルは、しゃべりすぎだと思いませんか? IVに期待!!

(90/2・パーン羽柴)

 「イースIII」発売当時、『イース』主要スタッフは日本ファルコムを離れていました。どうやらそのため開発が危機的状況に陥っていたことは確かなようです。キャラクタービジュアルの雛形を作った都築和彦さんは「イースII」後に離脱。世界観構築に多大な功績のあったデザイナー山根ともおさんは「スタートレーダー」(89年3月発売)を完成させた後辞職しています。プログラマー橋本昌哉さんとシナリオ担当宮崎友好さんこそ「イースIII」には参加していましたが、開発終了後に辞職しています。
 また、音楽担当の古代祐三さんが抜けた穴も大きく、曲が変わったことにがっかりした人も多かったのでした。主要スタッフの離脱を当時どれほどのファンが知っていたかわかりませんが、「イースIII」で酷評された部分は、離脱したスタッフの役割と重なっています。


論争への道

 基本的に「イース」「イースII」は絶賛されていましたが、好みに合わなかったのか、こんな意見もありました。

『イースII』のことをほめちぎる諸君!待ちたまえ。「『イース』のどこがいいのだ」という私もいることを認識してもらおう。
欠点1 まずストーリー性。ストーリーとしては、たしかによいかもしれない(私はそれほどよいとは思わない)。しかし、ナンダ! あの迷路は!! あれじゃ、ストーリーを追うゲームより、迷路を解くゲームじゃないか。
欠点2 なんとなく狭い! 私だけかもしれないが、村や町、つまり安息所が必要最低限あるだけで、なんとなく狭い! キッツイ〜。
欠点3 最大の欠点。自由度がな〜い。同じEXPで、同じLEVEL。同じ体力、同じ魔法。同じクリアの方法。同じ武器、防具。つま〜んない。たんに、薄っぺらな小説を読んでいるようだ(200円くらい)。
 BGMに関しては、音楽性のない私がいうのもなんだが、よかった。しかし、もうひとつ何か欲しかった。迷路を追い回して3日間。『イースII』を終えた。今のゲームに必要なのは、個性だ!

(89/8・○くさん)

 ほとんど言いがかりですが、RPGを名乗る以上CRPGはその根源であるテーブルトークRPG(以下TRPG)の自由度やルール、物語性を模範とすべしといった考えは当時根強くありました。いわゆる「一本道」ゲームである「イース」シリーズは、そうした考えの人々からは邪道に見えたのかもしれません。この投稿者もそうだったかは不明ですが、この意見には反論が来ました。

「自由度が低い」。これはよくいわれていることですが、「ストーリー性を追求すると、自由度が低くなる」というのはしかたのないことだと思います。『イース』は自分がアドルとなり物語を追体験していくゲームです。「昔、冒険者アドルという者が、クレリアの剣でダルク=ファクトを倒し、本ボス・ダームを打ち破って平和に導いた……」。これらのことを、僕たちが追体験するわけです。だから、みんなが同じ結果になるのは当然です。
 そういう意味からすると、この『イース』は、形式としてはRPGよりADVに近いかもしれません。では、この『イース』というゲームはRPGではないか、というとそれも間違いです。「○くさん」さん、あなたは、『イース』のマニュアルを読みましたか? たぶん読んでいないでしょう。そこには『イース』のゲームが始まる以前のことについて書かれています。アドルがどこで生まれ、どういう人生を送ったのか、そしてどういういきさつでこのイースにやってきたのか、などが詳しく書いてあります。こういうことを知って、はじめてアドルという人物に親近感を抱くのです。そして感情移入ができるのです。RPGの定義は「役割を演じるゲーム」です。僕は『イース』をやっている間、いつのまにかアドルを演じていました。とにかく、「○くさん」さんとは、アドルに対する思い入れや感情移入の度合いが、まったく違うのです。だから、感情移入していないあなたが、このゲームをおもしろいわけがないのです。感情移入こそが、今のRPGに欠けている最大の要素なのではないでしょうか。
 「本格RPG」と称されるRPGのほとんどは、多人数パーティー制を取り入れています。つまり、自分自身が6人や9人のキャラクターをほぼ同時に演じるのです。こんなの感情移入できますか? できるわけがない。本当によいRPGだったら「役割を演じること=感情移入」になるはずだと思います。マップを広くして、武器やアイテムを増やして、パラメーターを細かくして……。たしかに、そーゆーこともリアルさを増す要素になるでしょう。しかし、大事なことが欠けてないでしょうか。その欠けている部分を『イース』は持っているのです。

(89/9・1字進む)

 「イース」は自由度こそ低いものの主人公の経歴等が詳しく描かれ、感情移入の助けとなっている。感情移入できるゲームこそRPGなんだという反論です。突っ込みどころの多い主張ですが、是非はさておき、ここで「RPGの定義」という言葉が出てきます。これがやがて一大論争を巻き起こすこととなります。

 『イース』は、「いい」、「悪い」という対立があったけど、僕は「いい派」の一ゲーマーです。感情移入できない人にとっては戦闘とか楽勝で、Bディスクは迷惑みたいなもの。というわけで、ぜーんぜんおもしろくもクソもない、と思ったでしょう。やっぱり感情移入できないのは、きっと『ド○クエ』なんかのせいだろうね。あんなもの、RPGとして売ってたって、感情移入するための感情移入するための準備はなされてないし、IIIなんか、レベルが99まであって、まるきり自分をメチャクチャ強くして、どんなやつでもかかってこい、というのがRPGだと、ファミコン少年らに言ってるようなものだ! いったいだれがあれをRPGと名づけたんだ(と、けなしつつ、僕はI、II、IIIを全部解いていたりする)。
 それにひきかえ、『イースII』こそ「RolePlay(役を演じる:英和辞典より)」の要素を持った本当のRPGだ!
 『イースII』は小説だと思いません? といっても、『DOME』とかいう小説を、そのままADVにしたようなのがあったけど、それとは違って、動きがあって、顔も決まっている。この2つから、本の小説にはない、より現実な要素があって、それがじつにいい。

(89/10・三銃士)

 「イース」はキャラクターが「立って」おり感情移入できるゆえ良いCRPGである、というところでしょうか。論旨そのものはたわいないものですが、ここで「ドラゴンクエスト」をRPGでないと断じたため、さらに反論が寄せられます。

 三銃士に『ドラクエ』に対する不当な暴言の謝罪を求める。人には、それぞれ考え方や好みがある。何が真であるかなど決める権利は、何人にもない。では、『イース』について言うと、『イース』は「アドルクリスティンの冒険」というストーリーの上にプレイヤー(ゲーマー)がのっかっているだけで、本当のRPGに近いといえば、自分自身の分身を動かすという意味で、同社の『ソーサリアン』の方が優れているだろうし、『ウィザードリィ』のほうがはるかにすばらしい。ただしこれはあくまで一個人の意見であり、人それぞれRPGを定義するところは異なるであろう。
 もともとRPGとは、テーブルトーク(「D&D」など)からきたものであり、その自由度はパソコンゲームと比べるべくもない。役割を演じ、最も自分のキャラクターにのめり込むことができるのは、1人1人が個性を持った生きている仲間とともに、自分たちの物語を作り上げていくときである。
 つまるところ、『イース』にしても『ドラクエ』にしてもパソコンあるいはファミコンRPGなのだ。経験値をためて、レベルが上がる。そうしてマイキャラが成長していくシステムを、仮にRPGと呼びならわしているだけであって、けっして純粋な意味でのRPGは、パソコンゲームには存在しない、今のところは。
 いいついでにもうひと言。1つのゲームを賞賛するために、他のゲームを批判するのは、姑息な手段だ。それは、かえって自分の支持するものをおとしめることになる。注意せよ。

(89/12・杉山蒼太)

 ここに来て「『イース』のどこがよいのか」から論点がずれてきました。さらに本筋とは関係ない、発言を巡るトラブルまで起こっています。
 その後三銃士氏と杉山氏当事者間の論争は第三者を巻き込みつつ、ゲームを云々するものから議論のための議論に陥り、何度か反論をやりとりして終わりとなりました。まぁ、この手の論争ではよくあることです。
 しかしこの投稿をきっかけに、本筋の論争は「RPGの定義」を巡るものへと変貌していきます。

『ソーサリアン』の追加シナリオは、敵であるモンスターがあまり出てこず、人との会話ばかりで、本来のRPGの必須条件である、敵を倒して経験値をため、レベルを上げるということが、まったくといっていいほどない。また、これはすべてにいえるのだが、最近の日本ファルコムのゲームは幼稚化しすぎている。だから次期発売の『ドラゴンスレイヤーVI』にもあまりいい期待はしていない。

(90/2・ゲーム評論家もどき)

 12月号の杉山君にいいたい。パソコンには本当のRPGがないという意見、これは僕は違うと思う。たしかに、RPGはテーブルトークからきたものかもしれないが、現在において、パソコンのRPGは、ひとつのジャンルとして確立しつつあるのです。そしてユーザーがRPGだと思えば、それは少なくとも、その人にとってはまぎれもなくRPGだということです。

(90/2・HIRO)

 RPG=レベルアップゲームを考えている方々にひと言。敵を殺して経験値をため、キャラを強くすることがRPGだと思っているなんてとんでもない誤解です。
 RPGというのは、プレイヤーがキャラクターと一体となって動き回る。そしてそのストーリーを楽しむ、というものなのです。レベルアップは、ストーリーだけを追っていき、あっという間に終わってしまうことを防ぐために考えられたひとつの手段にすぎないのです。つまり、レベルアップがなくても、RPGは成立するのです。だからRPG=皆殺しゲームといった間違った考え方をしている方は、もう一度考え直してください。でないと、日本のコンピュータは、いつまでたっても進歩しないでしょう。

(90/4・おあずけ)

 RPGはアメリカ発祥の遊戯です。一方それが移入され独自の発展を遂げた経緯のためか、日本では「RPG」という言葉の指すところが曖昧になっていた節があります。それゆえ「RPGとはなんぞや?」という問答は往時たびたび見かけるものでした。それはさておき、やがて論争そのものに疑問を突きつける声が出てきます。

 私は『イース』が好きです。理屈ぬきで好きなんですよね。やってて、おもしろいし。
 ……あの、皆さんいろいろ意見出していらっしゃいますが、ゲームを好きになるのにそーゆー理屈って必要なんですか? べつにひとそれぞれって気もするんですが…。
 14歳の女の私としては、ストーリー性がどーの、○○の部分がいーの、よくないのという意見をみても、よくわけわかんないし、『イース』が好きとゆーことは変わらない。

(90/3・文里)

 このコーナーのことについて。いろいろな対立が(特にファルコムのゲームで)あると思うが、そのエネルギーをほかへ向けてもらいたい。嫌いなゲームよりも好きなゲームの紹介をしてほしい。他人の批判ばかりでこのコーナーに載ろうと思わないでほしい。
 それから、RPG観について。私個人の意見としては、RPGが「役割を演じている」ゲームだともし定義されるのなら『イース』シリーズなどが大部分がそれにあてはまっていないと思う。シナリオがしっかりしているので、プレイヤーはシナリオライターのいいなりになってしまう。「演じる」ということは、もっと広い自由な意味を持っていると思う。
 それから、コンピュータRPGは、テーブルトークRPGに近づくことにその典型があるのではないかと思う。もはや両者を同じものとは考えないほうが、将来的にはいいと思う(もちろん長所は取り入れるのだが)。

(90/4・TAI−KUN)

 これで収まるかと見えた論争ですが、これだけでは済みませんでした。荒らしが出現したのです。

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