イース FOR X68000の世界

 イースシリーズは移植版が多いことでも知られています。80年代の8bitパソコンから現在の携帯電話やニンテンドーDSに至るまで、発売から20年以上が経つにもかかわらず、手を変え品を変え、様々な機種に移植され続けているわけですが、それだけ数があると、中には変わった移植版が出てきたりするものです。中でも「イースI」のX68000(以下X68kと略)版、「イース FOR X68000」は、その数ある移植版の中でも一、二位を争う怪移植として、ファンの間で語り継がれています。今回は作中のテキストを再録しつつ、そのX68k版を紹介いたします。
 なお、今回はX68k版のみならず、8bit版の核心に触れる内容も扱ってますので、例によって自力で解きたいという方はゲームを解いてから読まれることをおすすめします。
(斜体部分は取説・ゲーム中テキストからの引用。テキストの順序・改行等は荒井が適宜編集・修正)


基本データ

「イース FOR X68000」

X68k版パッケージ アートby天野喜孝
  • 対応機種・シャープX68000シリーズ
  • 発売日・1991年7月
  • 開発・マイコンソフト
  • 販売・電波新聞社
  • メディア・5"2HD×2
  • ジャンル・ARPG
  • 価格・税抜9600円

イース FOR X68000

プロローグ

X68k版タイトル画面

アドル……
あなたは聖なる力を取り戻すために
戦う運命にあるのです。
その使命は、この地にかつて栄えた国、
イースのことを記した書を集め、守ること……。

 冒険を夢見る少年、アドルはある日興味深い噂を耳にした。海を隔てたエステリアの国に、「悪魔の塔」が姿を現し魔物が出没し始めたという。エステリアといえば銀の輸出で名だたる国。高まる好奇心に突き動かされ、何者かに導かれるように、アドルはエステリアの港町ミネアへと向かった。
 航海は順調に見えたが、エステリアを目前にしたアドルの船は、突然の嵐に見舞われてしまった。激しい波に船は転覆し、アドルは海へと投げ出された……。
 気が付くと、アドルは見知らぬ海岸に漂着していた。幸い怪我はなかったが、所持品のほとんどが失われていた。疲れきった体をひきずりながら、アドルはとりあえず、近くに見える砦の町を目指して歩き出した。

 これは、後に伝説的な冒険家として名をはせた「アドル=クリスティン」の最初の冒険の記録である。


ミネアの町

ミネアの町城門

 からくもミネアの町にたどり着いたアドルは、城門を前に冒険のはじまりを予感していた。

何かに導かれてこの町にやってきたアドル
たどりついたこの町で彼は自らが変容する鍵を得られるのではないかと思っていた
銀坑で賑わっていると聞いたその町は異様に静まりかえっている
アドルは得体の知れない緊張を覚えながらその町に入っていった

中央広場

エステリアの異変について手がかりを得ようと、アドルは町の人に話しかけてみた。

おや、見かけない顔ね 何か用かしら?
気をつけてね、この街の外の草原には化け物たちがうろついているの
実はね、私らはもうすぐここを離れるつもり 銀鉱は閉じたし、おまけにあんな化け物にうろつかれちゃぁね いい街なんだけど…
もうじきそこの池ともおさらばだよ… あたしゃその池が気にいってんだけどねぇ
この街も昔は鉱山のおかげで賑やかだったもんさ だが……廃鉱になってな、どんどん人が減っていく
災難の初めは鉱山の坑道の中だった… 突然の落盤が起こったんだ! そして、その穴のなかから、この世のものとは思えない怪物たちがでてきやがったのさ! いまじゃ坑道の入口は封印されてて誰も入れねぇ ま、入りたくもねえがね
見たんだ! ぞっとするほど冷たい感じがするやつだった 銀山の坑道で落盤があったとき、混乱の向こう側で笑っていた 黒いマントをはおっていて、私には悪魔に見えた
草原の向こう側の廃坑には近づくな! あそこは危険すぎる場所だ!
見たんじゃ、お若いの 信じてもらえるか? 突然真っ赤な火柱が上がり、天高く炎の岩が吹き上げ、あの悪魔の塔ができるのを! 山のかなた、湖の上に!
悪魔だ! 悪魔の仕業だ!

元ラーバ邸「ここは空き家です」

あぁ、そこは空き家よ ちょっと前までラーバという錬金術師の変な爺さんが住んでたんだけど… 怪物騒ぎで街を出たんだろうね
占い師のサラってのは村の出身なんだが、ウデは確かだった だが最近、ちょいとばかりおかしくなっちまったんだ 世界が終わるなんぞと口走っとる まぁ、外には化け物ばかりで無理もねぇがな…
この街の人間はもともとよそ者、移住者なの 銀山が見つかってから、鉱山目当てに移住してきたの 土地の人は、北東の林の中にあるゼピック村に住んでいるわ
村の奴ら、俺たちが移住してきたころはひどく嫌がらせをしてきたもんだ 余所者に大きな顔をされるのが気に食わなかったんだろうな
村と街とは、あまり仲がよくないの だって彼らは異教徒だし、怪物だってその異教のせいじゃないかって噂もあるのよ 何でも、女神をいだく宗教だとか あんな村に行こうなんて思わないことね 怪物が一杯いる草原の向こう側だし…
村の連中はひどい奴らさ いろいろ銀製品を盗まれたりしたよ でも、村へ行って犯人を探そうにも奴ら口が固いしね 手口も鮮やかなもんだった

見張り台入口 見張り台の番人

砦にある見張り台では、番人が山手を見張っている。城壁の上では詩人の娘が物思いにふけっていた。

向こうに見えるのはカルデラ式の火山だ
怪物がうろつき始めたころだったか、噴火してな、恐ろしい塔がそびえ立った
その回りの噴火口には雨水が溜まって、湖ができたということだ
私は詩人のレア 最近恐ろしい夢を見るの どこか荘厳な部屋の中で、悪魔に見つめられているのよ どこかこの草原の向こう側からその恐ろしいイメージが来るような気がするの それで遠くを見つめていたのよ まさか、私の身内に何か…

酒場

さらなる情報を求め、酒場に足を運ぶ

なんか飲むか?
ラーバ? あぁ、火の力で生き物を作るとかなんとか、馬鹿なことをほざいてたっけな あんな変人にゃ係わらんことだ
そういやあんた、ルタ=ジェンマって奴に会わなかったか? 近頃様子が変だったんだがここんとこ見かけねえんだ 村出身の奴なんだが聖なるお告げがどうとかいってた
お前さん、見たとこ流れ者の剣士のようだが、占い師のサラんとこにゃ行ってみたか? 何でも、優秀な剣士を待ってるって話だ もっとも、お前さんみたいな小僧っこじゃぁ勤まらんだろうがな…はっはっは

サラ

どうやら町では、サラなる占い師が剣士を探しているらしい。今度はサラのもとを訪ねてみた。

アドル・クリスティンさん…あなたの運命は水晶に出ています でも、今は告げる時ではありません もしもあなたが「戦い」を知り、その準備ができたなら、その時にいらして下さい

町にはいくつかの商店もある。準備がてら立ち寄ってみた。

武器の店

ウチの品物は上物ばかりですぜ こう化け物が出ちゃ武器は必需品だ 高いのを買われるのがいいでしょう
SHORT-SWORD 500GOLD
武器としてだけでなくナイフがわりにもなる日常の必需品です 便利モノでしょ?
LONG-SWORD 2000GOLD
この剣は、なんでもアレクサンダー大王特製とかいう話です お安くしますよ
TALWARL 5000GOLD
これは東洋の刀鍛冶が打ったものだそうです 強いですよ

防具の店

うちの防具なしじゃ、このブッソウな土地じゃ生きられませんぜ! さ、迷うこたぁない! 買った買った!
PLATE-MAIL 400GOLD
こいつはなぁ、風通しがよくて蒸れねぇのがポイントだ 値段も安いし言うことないね
CHAIN-MAIL 2000GOLD
ちとばかし重いが、丈夫さでは天下一品だぜ さぁどうする?
REFLEX 5000GOLD
いっちばん軽い鎧だ もちろん強さもバツグンだが 値段は高いぞ
SILVER-ARMOR
悪いね、そいつは売れちまったんだ…どんな奴が買ってったって? んなこたぁ覚えてねぇよ
SMALL-SHIELD 700GOLD
う〜ん、初心者用だねこりゃ ま、安いのが取り柄だな
MIDDLE-SHIELD 2000GOLD
こいつぁそこらのガラクタたぁ訳が違う 強いぜこれは
LARGE-SHIELD 6000GOLD
こいつはとても丈夫なんだが、ちょっとばかし重いんだ 値段もちと張るがね
SILVER-SHIELD
こないだどこぞのイタズラ小僧にもってかれちまったんだよ、それは… まったく……

ピムの取引所

WING 2000GOLD
こいつを使えばどんな遠くからでも一瞬にしてこの街に戻ることが可能だ
MIRROR 1000GOLD
魔物の動きを止める道具だ ただし消耗品だからな 何回も使うと壊れてしまうぞ
HEAL-POTION 1000GOLD
ジギタリス草を煎じた薬だ 傷にもよく効くぞ 備えあれば憂いナシなんてねぇ

草原

草原

 剣を手にしたアドルは、魔物がはびこる草原に向かった。草原の先には土着民の住むゼピック村がある。しかし村人は余所者に冷たかった。

何だ、見かけない顔だな ここは余所者の来る所じゃない 帰れ帰れ!
見かけない顔ね ここは余所者の来る所じゃないわ 早く帰る事ね!
知らない人と話しちゃいけないって お父さんに言われてるんだ
なんじゃおぬしは? 用がないなら出ていってくれ
何だ、見かけない顔だね ここは余所者の来る所じゃない 帰れ帰れ!

サラの店

 魔物を倒しながら剣の腕を磨いていくアドル。剣士として様になった頃再びサラの店に行ってみると、重大な使命を言いつけられた。

アドル あなたは聖なる力を取り戻すために戦う運命にあるのです
その使命はこの地にかつて栄えた国、イースのことを記した書を集め守ること…
全部で6冊あり、その1冊がゼピック村の奥、山の上の神殿にあると水晶に出ています
この書を邪悪なるものたちの手に絶対に渡すわけにはいかないのです!
さ、このクリスタルをもってお行きなさい!
村の私の叔母にも、あなたのことを知らせておきます 立ち寄って行かれるがいいでしょう さ!
ゼピック村の私の叔母には会われましたか? あなたに精霊のご加護のあらんことを…
書は見つかりましたか…? あなたに精霊のご加護のあらんことを…

 町にはゼピック村の村長の子供たちがいて、父親のことを心配していた。

あなた、流れ者ね 私、実は村の出身なの もし村に行くことがあったら、私の父に会って欲しいの 私の父は村長なの 何か心配事があるらしいんだけど外は怪物だらけでなかなか帰れないもんだから…お願いよ
パパ元気かなぁ

 一応酒場にも顔を出しておく。

ほぉ、サラに認められたと…お前さんのようなのでよかったんなら、オレが行けばよかったなぁ、ははは
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