イースに憧れたゲーム達

 ある商品が大ウケすると、すぐにそれを真似した商品が現れるのは歴史の常です。それはゲームも同様で、87年から88年にかけて「イースI」「イースII」(以下「イース」と略)が大ヒットすると、パソコンゲーム業界には似た作品、影響を受けたとおぼしきRPGが数々現れました。今回はそうした「イース」の影響下にある作品をいくつか紹介いたします。
 残念ながらその全てを遊んだわけでもなく、雑誌や他機種版での知識を元に書いている部分もあります。至らぬところがあればご教示頂けると幸いです。
(ゲーム名に続く括弧内は発売時期とソフトハウス名 斜体部分は簡単なプロローグ)


イースを意識した作品

「XZR 破戒の偶像」(88年7月 日本テレネット)

XZRタイトル画面 オープニングよりサドラーとカリフ

 時は12世紀。イスラム教が一大勢力を誇り、ヨーロッパを脅かしていた頃。セルジューク朝カリフ暗殺の命を受けていた、暗殺組織アサシンの精鋭四人がバグダッドで消息を絶った。アサシン首領サッバーフは、アサシン随一の暗殺者サドラーに捜索を命ずる。やがてサドラー達はイスラム世界はおろか、未来の世界をも巻き込む陰謀に巻き込まれることになる。

 「ファイナルゾーン」「夢幻戦士ヴァリス」など、音楽やヴィジュアルにこだわった作品には定評のある、日本テレネットのARPGです。題名は「エグザイル」と読みます。メガドライブのシューティングゲーム「XDR」とは関係ありません。
 実は、内容は「イース」とは全く違います。しかしなぜここで採り上げるかといえば、「一見して読みに困ってしまう題名」に、「イース」の影響がうかがえるからです。もっとも、それだけに限らずヴィジュアルをふんだんに採り入れたテンポの良いオープニングデモや、続編「エグザイルII」(88年末)と二作そろって完結する構成などにも、当時的な物語性・演出重視の潮流を見て取ることができます。

2Dフィールド画面 スフラワルディ登場
フィールド画面横視点でのアクション戦闘画面
アジト画面 麻薬を売る闇市
行き先を決めるアジト画面闇市には麻薬が並ぶ

 「エグザイル」は「リンクの冒険」式のARPGです。見下ろし視点のマップで情報を集め、ダンジョンに入ると横視点アクションゲームで戦闘が繰り広げられるといった具合です。「イース」よりも「ワンダラーズフロムイース」に近いのですが、発売はこちらの方が先です。
 イスラム世界と現代社会の関わりを主軸に据えた、壮大な物語が一番の特徴で、西欧中世風ファンタジーのゲームが多い中で異彩を放っています。また、ゲームとしては見所が多く、特に、麻薬を服用することによって、様々に強化するという危ない設定はこの作品の味になっています。操作性やゲームバランスもよく、パソコン版は名作の部類に入れていい作品でしょう。
 余談。「エグザイル」はその後PCエンジンにも移植されました。こちらはパソコン版「エグザイルII」が底本となっていますが、終盤部分が全くカットされ、盛り上がってきたところでいきなり終わってしまいます。荒井はパソコン版を知ってますので、この幕切れには愕然としたものです。

XZRII戦闘画面
「XZRII」の戦闘画面

 ところでエグザイル(exile)とは、「亡命者」「国を追われた者」という意味の英語ですが、具体的に主人公サドラーのどのあたりが亡命者なのかはわかりません。


「The Old Village Story」(88年12月 エニックス)

オールドヴィレッジストーリータイトル画面

プロローグ・子煩悩なカイザー王

 魔物達が世界の大半を支配していた頃。ファ・ラール国のカイザー王は、愛娘リーザ姫を病気で失った悲しい過去を背負っていた。その後お妃が再び子供を身ごもったが、その子が本当に世継ぎになるかを心配し、占い師にそれを占わせた。ところが占い師の水晶玉に映ったのは、王の子供ではなく、テップル村に住むシオンという少年だった。わが子を不憫に思った王は、シオンを城に呼び出すことにする。

 「オールド・ヴィレッジ・ストーリー」は、RPGではなくAVGです。本作は見下ろし視点のフィールドを探索し、住人と会話しながら物語を読み解いていくという作品で、見た目や眼目こそ「イース」と似ているのですが、RPGならではの経験値や戦闘といった要素がありません。ゲームは二部構成で、シオンの冒険を描いた前半と、その恋人リサリサの冒険を描く後半とに分けられます。

カーズの町 フィールド画面・広大な森
ARPG風のゲームシステムで語られるAVG

 本作は「ストーリーテラー」を念頭に置いて作られています。「ストーリーテラー」とは、アメリカのマペット制作者ジム・ヘンソンが監督したテレビシリーズでして、欧州のおとぎ話に新しい解釈を加えて映像化したファンタジー作品です。制作者の狙いは、「ストーリーテラー」のような、ほのぼのとしたファンタジー作品をつくることでした。
 そこで「イース」風のゲームシステムを導入したのは、世界をARPGのゲームシステムで描写することで、住民の生活感、つまり「ほのぼの」とした雰囲気を演出したかったからではないかと思われます。

魔女エンドラに挑むシオンとリサリサ
ARPG風のゲームシステムがファンタジー世界の描写に一役買っている。

 「イース」はARPGのゲームシステムで高度なストーリーテリングを実現したという、極めてAVG要素の強い作品でした。ゲーム通として知られる落語家三遊亭円丈師匠は「イースI」はアクションアドベンチャーゲームであるとさえ評しています。「イース」の前身は「太陽の神殿」という見下ろし視点のフィールド移動を盛り込んだAVGでした。
 本作が果たして「イース」を参考にしていたかはわかりません。ですが「イース」の前身がAVGであることからしても、「イース」のストーリーテリング部分を抜き出せば、こうした作品も作れるということで、「イース」の発展型の一つと捉えることもできそうです。


「Xak The Art of Visual Stage」(89年5月 マイクロキャビン)

Xakタイトル画面 オープニングよりフェアレスへ飛ぶピクシー

 250年ぶりに復活した魔王バドゥーにより、ウェービス王国の平和が破られた。かつてバドゥーを倒した戦神デュエルの血を継ぐ主人公の少年は、国王の命を受け、打倒バドゥーの旅に出る。

 「イース」に似た作品の大本命が、このマイクロキャビンの「サーク」です。一見して読みに困る題名といい、見下ろし視点ARPGであることといい、発売当時は誰もが「『イース』のパクリだ!」と思ったものですが、それでも非難されることがなかったのは、その圧倒的な完成度の高さゆえと思われます。

VRシステムによる影1 VRシステムによる影2 VRシステムによる影3
VRシステムによる細かい影の付け方

 「サーク」も「イース」同様、見下ろし視点、物語主導型のARPGです。題名のみならず、見た目も内容も似ていることが「パクリ」であるゆえんですが、後発だけあって、技術面では「イース」の先を行くものとなっています。
 「サーク」最大の売りは、VRシステム(Visual Representation System:視覚表現システム)こと、リアリティを追求した映像表現です。登場人物、敵キャラ、障害物、マップなどなど、画面上に表示される全てのオブジェクトの高さと奥行きを考慮し、自然な重ね合わせを実現した画面表示システムにより、より現実味のある2D表現を実現しています。
 「イース」のように凝った物語や謎解きはほとんどありませんが、その分VRシステムによる凝った演出で楽しませる作品となっています。クライマックスでは竜に乗り、「ドラゴンスピリット」ばりのシューティングゲームで戦う場面もあり、当時のゲーマーを驚かせました。

ウォーターエレメント&ファイヤーエレメント フェアレスの町の看護婦さん
どこかで見たような赤鬼青鬼のボスどこかで見たような看護婦さん

ドラゴンシューティング面
話題となったドラゴンシューティング面

 「サーク」はオーソドックスながらも手抜きのない作りゆえ、ARPGとしての完成度が非常に高く、「イース」に次ぐ人気シリーズとなりました。「イース」同様、その後いくつか続編や外伝が作られましたが、「イース」がゲームとして伸び悩む一方で、「サーク」シリーズはその都度、新しい要素を採り入れていきました。特に「サークII」(90年9月)では、2D見下ろし式の戦闘システムに「ジャンプ」を盛り込むなど、画期的な試みをしています。

XakII戦闘システム
「サークII」よりジャンプ中。影と自分の位置関係に注目。

 「サーク」は「イース」の改良型であると断言できますが、「サーク」の狙いは「イース」とは別の場所にあったように思われます。見た目こそ「イース」そのもので、制作者もそれを分かった上であえて「イース」と似た題名をつけたのは、その表明でもあったのでしょう。「イース」は基本的に「読むゲーム」ですが、「サーク」は「見るゲーム」でして、見せることにこだわって作られています。VRシステムによる、リアリティのある表現は、ゲームの大容量化時代を目前にして、ARPGの未来形を感じさせるものでした。
 事実、「サーク」シリーズは「イース」の先を行くこともありました。ところがその評価は飽くまで「出来の良い亜流」の域を出ることはなく、仕舞いまで「イース」に取って代わることはできませんでした。新しい要素を採り入れても、ゲーム性で「イース」との明確な違いを打ち出せなかったことが大きかったのではないかと思われます。
 93年4月、PC98で「サークIII」が出たのを最後に「サーク」シリーズは完結します。パソコンゲーム業界の斜陽とともに終わる形となりましたが、その後下手にいじくり回されず、伝説的な作品となった分「サーク」シリーズは「イース」より幸福だったのかもしれません。

 ところで「サーク」シリーズの主人公の名前は「ラトク」ですが、これには元ネタがありまして、同社製のアドベンチャーゲーム「セイレーン」に登場する少年の名前からとられています。「サーク」は自分でプレイヤーの名前を決められるのですが、デフォルトの名前に洒落のつもりで入れた「LATOK」の名前がそのまま既成事実化して、「セイレーン」のラトク少年はそのまま「サーク」の主役になってしまったというわけです。

セイレーンのラトク
「セイレーン」のラトク。「正義感あふれる行動派タイプ」の少年。肩に乗っているのは主人公プリル。

注・「サークII」は演出過多に陥って遊びづらくなった嫌いがある。当時の雑誌を見る限りゲーム自体はあまり評価されていない。


「ルーンワース 黒衣の貴公子」(89年12月 T&Eソフト)

ルーンワースタイトル画面 オープニングより主人公

 舞台は神と人が存在する世界ルーンワース。メルサード大陸のサリス王国に、バハマーン神国が侵攻した。王国は陥落し、王家の者は皆殺しとなったが、忠臣ペルレスは王の命を受け、生まれたばかりの世継ぎを連れて落ちのびていった。
 それから十数年後。主人公は義賊団の少年。ある日、謎の敵の奇襲を受け、義賊は全滅する。一人生き残った少年の冒険はここから始まる。

 「ハイドライド3」スタッフが、従来の作品を凌駕すべく世に送ったARPGがこの「ルーンワース」です。世界観の作り込みがただものではなく、豪華製本の世界観解説書まで付いてくるほどの充実ぶりです。世界観・物語性重視の作品は、「イース」以後RPGの主流となりましたが、ここにもその影響が伺えます。
 それだけにとどまらず、ARPGの先駆者達が作っただけあって、ゲームシステムでも数々の新機軸が盛り込まれた作品となっています。特にこの手のARPGでは珍しく、経過イベントなどの面で、比較的自由度が高くなっています。

呪文詠唱中
新機軸の一つキャストブレイク。呪文詠唱後に魔法が発動する。

 ただ、この作品が大きく評判になることはありませんでした。理由は大きく二つです。
 まず経験値を廃したこと。RPGには欠かせない経験値ですが、一方で「経験値稼ぎが面倒で物語が存分に楽しめない」という批判が、「イース」以降上がるようになっていました。そこで本作は大胆にも経験値そのものを排除し、レベルアップアイテムを使うことで成長する方式を採っているのですが、そのおかげで雑魚キャラとの戦闘が全く無意味になってしまいました。敵を次々になぎ倒していく爽快な戦闘は、ARPGの魅力の一つですが、戦闘そのものが無意味ではなんの面白みもありません。

闘技場
闘技場で賞金目指して戦闘中。見返りのある戦闘行為は数少ない。

 もう一つの理由は、作り込まれた世界観の大半が、本編に活かされなかったことでした。「ルーンワース」の世界観は非常に細かく詳しいところまで作り込まれているのですが、作中で使われたのはそのほんの一部に過ぎず、用意された設定のほとんどは意味のないものとなっています。たとえば解説書では、世界には複数の魔法体系があり、それに則った多彩な魔法や術が存在していると語られるのですが、作中に登場するのはその魔法体系のたったひとつで、しかも主人公が扱えるのはその一部でしかありません。こうした例は他のことにも言えまして、解説書でこそ魅力的な設定を数多く提示しているものの、それを再現するには当時のハードが貧弱だったのか、それともそれを活かせるだけのゲーム設計ができなかったのか、せっかくの世界観もゲーム本編で利用されているのはごくわずかに過ぎず、豪華製本解説書で期待させておきながら、本編の薄さでプレイヤーを失望させることになってしまいました。
 また、「ルーンワース」は全三作で、一作目「黒衣の貴公子」こそPC98、PC88、MSX2版が発売されたのですが、全作遊べるのはPC98だけです。ですから「もっとルーンワースの世界を見てみたいのに」と願っても、8ビット機で遊んでいたユーザーは置いてけぼりを喰らう形となったのです。

 ゲーム自体の出来は決して悪くはないのですが、意気込みが空回りした感のある「ルーンワース」は「イース」に代わるスタンダードとはなりえませんでした。


「LAGOON」(90年8月 ズーム)

ラグーンタイトル画面

 レイクリーランドの人々は、ラグーン城から湧き出る水の恩恵で平和に暮らしていた。しかしある時から湧き水が濁りだし、魔物が出現するようになった。主人公は武術の修行を終え、故郷アトランドに戻ってきた剣士ナセル。近郊の坑道から魔物が出現したとの報を受け、魔物退治に向かうのだが...

 ズームはX68000専門にソフトを提供した、実力派ソフトハウスとして知られています。そのズームが開発したARPGが「ラグーン」です。X68000(X68kと略)とは、当時シャープが作っていた高性能パソコンでして、その性能を生かしたゲームも多く出されており、憧れの機種でした。

非常事態発生 ジャンプ中
ウォータードラゴン使用中 ソアとの最終決戦
ゲーム画面。X68kならではのグラフィック。カッコいいエフェクトが見所だ。

 「ラグーン」も「イース」風のARPGなのですが、アクションゲームに定評あるソフトハウスが作っただけあって、剣を振ったりジャンプができるなど、可能なアクションが増えています。他にはX68kの性能を生かしたグラフィックや音楽、今でこそ当たり前になったフル画面スクロール、特殊効果を大きな売りとしていました。ゲームとしては随所に練り込みの甘さが目立ちますが、他機種ではなかなか見られない凝った演出は、ユーザーの間で一定の評価を得ています。
 物語重視の見下ろし視点ARPGという点では「ラグーン」も「イース」から大きく変わるところがないのですが、この戦闘システムは「イース」とは違ったものを作ろうという姿勢の現れだったのでしょう。また、ほぼ同期の「サークII」でも、ジャンプや剣振りをアクションに採り入れています。こうした作品が同時多発的に別の場所から出てきたというのも興味深い話です。
 「ラグーン」はケムコよりスーパーファミコン版も出ていますが、こちらの評判はあまり芳しくありません。


「AIZA NEW GENERATION」(91年4月 ティールハイト)

AIZAタイトル画面

 舞台はファンデル大陸東部のワイスレム王国。ある嵐の晩、小さな村の浜辺に一人の青年が流れ着いた。青年は村の娘エルフィの看護で一命を取り留めたが、それまでの記憶を失っていた。期を同じくして、王国には魔物が出現するようになっていた。ルースという名を与えられた青年は、エルフィの父である村長の頼みで、王国を救うべく旅立つこととなる。

エルフィ
ヒロインのエルフィ

 知名度こそ低いのですが、「サーク」と並んで「イース」を意識した作品がこの「エイジア」です。制作に携わったティールハイトはMSX2版「ソーサリアン」の移植も手掛けており、日本ファルコムとは浅からぬ関係にある会社です(注1)。
 これも見下ろし視点物語性重視のARPGですが、「サークII」「ラグーン」同様、ジャンプと剣振りが可能です。その他にも「イース」におけるリングや魔法に匹敵するアイテムもあり、可能なアクションは「イース」よりも多くなっています。作中では狭い足場や崖をジャンプで渡ったり登ったりする場面や、魔法を駆使してボスと戦う場面などが用意され、多彩なアクションを使いこなすことが本作攻略の鍵です。こうしたアクション性の高さが本作の大きな売りとなっています。
 後年、制作者の一人が「2ちゃんねる」で制作秘話を明かしたことがあったのですが、それによれば、本作は「イース」のゲームシステム・アクションに対する不満を解消したゲームを作るという趣旨で企画され、開発資金とスケジュールの大半はゲームシステムの作り込みに費やされたのだそうです。事実、ゲームシステムの出来は相当なもので、移動・ジャンプ・剣振り・挙動の異なる攻撃魔法といったアクションを、ストレスなく繰り出せるようになっています。弄った感じは「イースV」に似ているのですが、その完成度では「エイジア」に軍配が上がります。「イースV」に実装されていた以上のゲームシステムを、その発売4年前、しかもPC98上ですでに実現していたことは、驚くより他ありません。

エルフィに見送られるルース

フィールド画面
「イース」とよく似た「エイジア」

崖を登る
ジャンプで崖を登る場面

対ファリアナ戦
ボスとの対決

 登場人物の設定も、多分に「イース」の影響を受けています。主人公ルースはアドル同様、嵐を越えて島に漂着しています。ヒロインエルフィはルースに想いを寄せており、しかも古代の女神と深い関係があり、ついでにいえば名前や外見も、どことなくフィーナを彷彿させます。「エイジア」という題名も、舞台となる世界に昔栄えていた国の名前です。レアという少女が登場するあたりは、もはや狙っているとしか思えません。
 件の制作秘話では、本作はゲームシステムの作り込みに注力しすぎたおかげで、物語やシナリオの作り込みがおろそかになってしまい、ゲーム後半の展開がやっつけ仕事になってしまったことも暴露されています。当時、各種パソコンゲーム雑誌にサンプルを貸し出したときには好評を博し、発売が期待されたのだそうですが、実際に上がってきた製品版をやってみると後半の密度が薄かったので、期待が大きかった分反応がいまひとつだったと、その制作者は語っています。

村長の娘レア
詩人...でなく村長の娘レア

古代エイジアの女神サーラ
エルフィと瓜二つの女神

 遊んだ方の感想を伺うと、なかなかに面白い作品であるとのことです。実際、ゲーム自体の出来は悪くありません。にもかかわらず有名にならなかったのは、この作品が無名のソフトハウスのデビュー作だったこと、ソフトウェア自動販売機「TAKERU」を中心に売られていたこと、PC98のみのリリースだったこと、同期に出た「サーク外伝ガゼルの塔」の陰に隠れたことなど、様々な要因が考えられますが、一番の理由は、二番煎じであったため、アピールに乏しかったからではないかと思われます。

武器選択画面
「イース」によく似た画面構成。

 「エイジア」は、「サーク」以上に「イース」を意識した作品でした。ゲームシステムの出来は「イース」はおろか「イースV」さえ凌駕します。しかしゲームシステム以外に傑出したものがないのも確かでして、物語の出来はもちろん、ゲームバランス、遊びやすさ、爽快感等々、全体的に「ひと味足りない」印象を受けます。このあたりは「イース」では気を遣って作り込まれた部分だったのですが、「エイジア」はそこまで手が回せなかったのでしょう。そのおかげで「エイジア」は飽くまで「イース」のゲームシステム改良版に留まり、「イース」以上にはなれなかったのです。


脚注

注1・「制作ティールハイト」:厳密にはラウィンズとティールハイトの共同制作。スタッフロールを見る限り、主要な部分はラウィンズが手がけ、ティールハイトが協力するという形で制作された模様。ラウィンズは本作制作で中心的な役割を果たした三好宏昌氏が作った制作チームと思われる。ラウィンズの名は「ラウィンズぷらす」として存続しており、現在はPC用アプリケーションの制作などやっている。

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