音楽が語るイースの世界〜「イースIV冒険ガイドブック」から


音楽が語るイースの世界〜サウンドアレンジャー米光氏に聞くイースの魅力

米光亮近影

米光亮 よねみつりょう

 サウンドアレンジャー。ゲームミュージックから歌謡曲まで幅広くアレンジを手掛ける。繊細な音作りには定評があり、イースを手掛けたことでゲームミュージックファンには特に有名。PC版『イースI・II』『イースIII』、そして今回のIVも氏がアレンジを担当している。


 すばらしい音楽で、多くのファンをつねに魅了する「イース」シリーズ。その美しい音楽の秘密はどこにあるのか? イースシリーズのアレンジを多く手がけている米光亮氏に、その秘密を聞いてみた。

−アレンジというのはどういったことをする仕事なんですか?

 あはは、たとえば作曲家の方や作詞家の方がいますよね? そういった方にも「米光君、アレンジの仕事って、ナニしてんの?」って言われちゃうぐらいわかりにくいんですよ。
 そうですね、僕自身は色のない絵に色を付けたり、背景を描きこんだりする仕事だと思ってます。

−それは作曲家が作った曲を完成させるということですか?

 語弊があるかもしれないですけど、そうです。たとえば作曲家の作った曲はメロディーラインだけだったりすることもあるんです。そこにドラムをいれたりストリングス(弦楽器)を入れたりして、曲を仕上げるわけです。

プレッシャーはありました

−マニアックなファンの多いイースシリーズのアレンジを手がけることに、プレッシャーのようなものはありましたか?

 それはやっぱりありました。特に今回はシリーズ4作目ですよね? そうすると固定ファンの人なども多いでしょうし、思い入れも強いんだろうな、と。
 それに元は(原曲は)ファルコムさんですよね。だからファルコムさんの味もありつつ、根強いファンの方の期待もありつつ、でもやっぱり前のよりは良く、新しくしなきゃいけない。そういうプレッシャーですね。ただそれは、どんなことをやってもあるんですけどね。

−米光さん自身、ゲームは?

 あっ、私ダメなんですよ、ドン臭くて(笑)。すぐやられちゃうんです(笑)。だから自分はゲームがうまければ、もっとツボを押さえてアレンジできると思うんですけどね。いかんせん、最初の画面で終わっちゃう(笑)。

−ではイースも?

 じょうずな人がやるのを見せてもらって、ああなるほどなるほどって感じです。そういう自分がこういった仕事を一杯やらさせていただいていいのかなぁ?(笑)

−なんでも今回、今までのイースシリーズとは雰囲気が違うアレンジのため「チャレンジ三部作」と呼ぶ作品があったそうですが?

 あははは(いきなり爆笑)。いや、そんな大げさなモノじゃないんですよ、ゼンゼン。今回はシリーズ4作目でもありますし、音楽に1つの路線というものがありますよね、当然。でまあ、メインの曲をあんまり変えるわけにはいきませんけど、サブの曲を今までとは少し雰囲気を変えてみましょうか? とハドソンさんに言ったんですよ。そうしたらね「そうですね……」って言って固まっちゃった。こいつは、いったいなにをやろうとしているんだ? みたいな(笑)。
 そこでとりあえず作ってみて、問題があったらオリジナルに近いものに直そうと。そういう曲が3曲あったので、チャレンジ三部作って呼んでたんですよ。

−その3曲とは?

 聞いてみてのお楽しみと言うことで。

−あはは。ところで、今までイースのさまざまなアレンジを手掛けてきた米光さんのイース観のようなものを教えてください。

 重々しい感じですね。ゲームっていろいろなものがありますよね? おちゃらけていて楽しいものとか。そんな中でイースは1つの王道って感じですね。僕のイメージでは。
 だからあんまりおちゃらけてはできないんです。真面目にやらねば……みたいな。

−実際にアレンジするときはどんな感じで?

 まず原曲がありますよね、それでできるだけお願いしていることはすごくラフな形でもいいのでその曲のかかるシーンのビデオなどをいただいてそれを見たり、打ち合わせで状況や主人公の心の動きをなるべく細かく教えてもらったり。で、なるほどここは勇ましい感じにすればいいんだな、と。理想をいえば完成版を見せていただけるといいんですが、それはスケジュールのつごうなどで無理ですからね。

−作るうえで苦労したところなどは?

 オープニングやエンディングなどでコンテ(どういう絵が入るかのスケッチ台本)を見て、原曲とタイミングがあわないところなどですね。コンテではここで曲の雰囲気が変わるという指定があっても、原曲はもう少し長くてタケが合わない。そういうときはコンテに合わせて曲を短くするか、曲はそのままでコンテを変更するか、調整で苦労します。
 それと今ではシンセでやることが多かったのですが、今回は生楽器を多く使ったので大変でしたね。どの曲でどの楽器を使うかが悩んだところでした。あと、ハドソンの開発が札幌だったんで、連絡が大変でした(笑)。

2分じゃもったいなかったなぁ

−今回の音楽は素晴らしいものばかりですが、米光さんにとってここが聴きどころだ!という部分はどこでしょうか?

 う〜ん、それは難しいですね。その、個人的な趣味のものと、職業人としてこれは良くできた、というものがありますからね。まぁ、個人の趣味のほうでいえばダームの塔の曲はよくできたと思います。時間の制約で2分くらいの曲なんですけど、2分じゃちょっともったいないなぁ、なんて(笑)。

−では、最後にこれからゲームを遊ぶ人になにかひとことお願いします。

 そうですね、あんまり目を悪くしないように、ですかね(爆笑)

 と、終始にこやかに語ってくれた米光さん。本当にすばらしい曲ばっかりだから、いい音響で遊ぶことを強くおすすめするぞ!

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