徹底比較イースIV〜ゲームシステム

 「イースIV」は、SFC版もPCE版も見下ろし視点の体当たり型ARPGです。つまり「イース」「イースII」と同じようなゲームシステムを採用しています。三作目「ワンダラーズフロムイース」では横視点でアクション性の強いゲームシステムを採用していましたが、「イースIV」では元に戻っています。
 もともと「イース」オリジナルのプログラマー橋本昌哉氏は、新作を作るにあたり、「イース」とはがらりと違うゲームが作りたかったようです。それが「ワンダラーズ」なのですが、ゲームシステムもストーリーもあまりに違いすぎて、旧来のファンにはとまどいを覚える人もいたのです。特に「イースII」の続きを期待していた多くのファンには評判がよくなかったようです。

ワンダラーズフロムイース
「ワンダラーズフロムイース」

 「イースII」直接の続編を求めるファンの声は大きく、それならば、と日本ファルコムは「イース」の新作を作るなら「イースII」と「ワンダラーズ」の間の話にしようと決めたそうで、それにともないゲームシステムも最も好評だった「イースII」のものに戻すこととなりました。「イースIV」はファンが「失われし古代王国」の続編を熱望した結果の産物であると言えます。
 これまでは物語や登場人物といった部分を比べてきましたが、今回はゲームとして肝心なシステム面を比較した上で、最後に「イースIV」に対する荒井の私見を申し上げて「イースIV」の解説は終わりとします。


スーパーファミコン版

樹海マップ
フィールドマップ 樹海南部


SFC版ゲームシステム

 「イースII」のものに戻したとはいえ、IVのゲームシステムは、厳密にはIIの改良型になっています。まずSFC版から見てみましょう。主な改良点は以下のとおりです。

 「イースII」で滅んだはずの魔法が「イースIV」ではまた使えるようになっています。古代セルセタ文明の力が存在しているおかげのようで、攻撃魔法4つと回復魔法1つがあります。魔法が込められた剣があって、装備すると対応する魔法が使えるようになります。魔法の強化も可能です。
 しかし攻撃魔法はどれも威力・攻撃能力ともにいまひとつで使えません。魔法を選ぶ度弱い剣に持ち直さなければならないのも問題です。皮肉なことに一番利用価値が高いのは回復魔法です。
 ボス戦でアイテムウィンドウを開けるのは「ワンダラーズ」と同じです。つまりボス戦中に体力回復が可能なので、ボス戦が格段に楽になっています。
 ステータス異常というのもSFC版のみの新要素です。敵には毒を持っているものがいまして、毒を喰らうことがあります。そうなると一定時間ごとに体力が減って行きますが、解毒剤で状態回復可能です。しかしこれでゲームが面白くなったかというと疑問です。毒を持った敵もほとんどいません。

スクリーンセーバー起動中
世にも珍しいスクリーンセーバー機能

 SFC版最大の特徴とも言えるのが、スクリーンセーバー機能です。画面焼き付き防止ソフトが組み込まれていまして、一定時間入力がないと画面が暗転して「Ys4」のロゴが画面を飛び交います。しかし、普通に遊んでいる分には、エンディングまで一度も起動することはありませんでした。何のためにあるかよく分からない機能です。
 SFC版のゲームシステムはそれ以外、特に見るところはありません。改良点も練り込んであるとは言えません。


操作性・難易度・演出・音楽

暗黒の騎士
ボス敵 暗黒の騎士

 SFC版の操作性はさほど良くありません。軽すぎます。またステータスウィンドウの操作がもたつきます。ARPGで操作性の悪さは致命的です。
 しかし、ゲームの難易度はそう高くありません。むしろ「ヌルい」部類に入ります。理不尽に難しい謎はありませんし、敵もそう強くはありません。ボス戦は大味です。がんばってレベルを稼げばごり押し可能、むしろレベルに任せた玉砕戦法が最も効果的な戦術となってます(しかも魔法やアイテムが尽きるまで何度でも回復可能)。楽ですが従来のように緻密なボス攻略は楽しめません。

リリアを抱えるアドル
こういうグラフィック

 グラフィックや演出に関してはファミコン並です。描き込みが甘く、安っぽくて密度感がありません。SFCの性能を使いこなしているようには見えません。
 SFC版をやった人間が口々に酷評するのはチップキャラの演技のひどさです。チップキャラがその場でぐるぐるっとスピンする演出が全編に渡って出てくるのですが、『安直』『目障り』『目が点になった』という酷評こそ何度も目にするものの、これをいいと言った意見は、これまでただの一度も見たことがありません。
 「イース」シリーズの売りである音楽ですが、サウンドドライバーのせいなのか、使いこなせていないためなのか、ベタで鳴らした感じです。SFC版は全体的に技術水準が低いです。


ゲーム構成

湖畔でつぶやくアドル
湖畔でつぶやくアドル

 構成については前にも触れていますが、SFC版の物語は大きく二部構成です。前半は三つの瞳を集めて大長老に会うのが目的で、後半は復活した古代都市を破壊するのが目的となっています。ゲームクリアまでゆっくり遊んで15時間ほどです。
 しかしその間盛り上がるイベントはそうありません。前半の重要イベント瞳集めにしても、二つは労せずなぁなぁで入手してしまいます。それは全体にも言えることでして、締まらない印象を受けます。
 ちなみにSFC版はアドルにも台詞がありまして、饒舌にしゃべりますが、無口なアドルに慣れた旧来のファンにはあまり受けが良くなかったようです。


SFC版総評

 全体的に見てSFC版は、IIから改良されたとはとても言えません。どこにもとがったところのない極めて凡庸な作品です。むしろ全般に及んで技術力の低さと作り込みの甘さが目立つ分損しています。これでは駄作と言われても仕方ない出来です。
 噂に寄ればSFC版は急遽開発が決まって、短い期間でついでに作られたとかいうのですが、そういうものかもしれません。
 ただし、ヒロインの存在感だけは際だっています。特にエルディールとリーザの描写は秀でていますので、それだけに残念です。

文頭に戻る目次に戻るトップページに戻る次を読む