名作になれなかった迷作を探る〜「イースV 失われた砂の都ケフィン」

 前回は「イースV」原案小説の紹介をしました。今回はゲーム本編の物語を紹介いたします。前回述べたとおり、原案小説とゲームの物語の詳細は違っています。ゲームの物語は基本的に、原案小説を翻案・再構成したものとなっていますが、その過程で変わってしまったのか、原案小説の一場面が形を変えて現れた部分や、原案小説とは異なる部分が散見できます。


基本データ

「イースV 失われた砂の都ケフィン」

イースVパッケージ アートby駄馬寛
  • 価格:12800円(税別)
  • 開発・販売:日本ファルコム
  • 機種:スーパーファミコン
  • メディア:24MROMカートリッジ
  • 発売日:'95/12/29
  • ジャンル:ARPG

プロローグ

タイトル画面 スタンに救出されるニーナ

 アフロカ大陸ケフィン砂漠には、錬金術が眠る幻の都の伝説が残っていたが、その都を見つけた者は誰もいなかった。
 幻の都の手がかりを求め、遺跡を探索していた冒険家スタンの一行は、砂漠で記憶喪失の娘ニーナを見つけた。スタンは身寄りのないニーナを引き取り、養女として育てることにした。
 それから二年。スタンは再び砂漠に旅立ち、消息を絶った。


サンドリア

リジェ登場

 スタンが消息を絶ってから三年、アドル二十歳の時のこと。アドルは船でサンドリアに上陸するなり、治安部隊に怪しまれ路地裏に連れ込まれた。そこに治安部隊の女隊長リジェが現れた。アドルはリジェの鶴の一声で解放された。

スカウトに現れるツェット ドーマンの依頼

 アドルは酒場で、サンドリア一帯に伝わる幻の都の噂と、それを探すべくドーマンという交易商人が冒険者を募っていることを知った。そこに現れたドーマンの手下ツェットに頼まれ、アドルはドーマンに会うことになった。
 サンドリア一帯は砂漠化や魔物の出現といった災厄に見舞われ、深刻な事態に陥っていた。ドーマンは幻の都に眠る古代錬金術の力でサンドリアを災厄から救いたいと述べ、アドルにその捜索を依頼した。
 アドルが快諾すると、ドーマンは幻の都が実在する証拠として、前任者スタンが見つけた光の結晶「ルミナス」を見せた。錬金術と深い関わりのある結晶は、他にもいくつかあり、全てを集めれば幻の都について何かわかるかもしれないという。
 ドーマンはアドルに、手始めに結晶が発見されたフォレスタ村の洞窟に向かうよう言った。


フォレスタ村

アドルを遠ざける村人たち

 フォレスタ村には「凍って眠る少女」とそれを守る魔人の伝説とともに、赤毛の剣士が災いを招くという伝説があった。村人たちは赤毛のアドルを忌み、村の奥にある洞窟に入れようとしなかったが、冒険にあこがれる少年ウィリーだけはアドルになついてきた。
 いつの間にか広場に人だかりができていた。洞窟から怪我人ロポラが担ぎ出されたのだ。ロポラはニーナを案内して洞窟に入ったが、突然何者かに襲われたという。中にはニーナが取り残されていた。長老の指示で、やむなくアドルが洞窟に向かうことになった。

ニーナ救出 魔人ストーカー

 アドルは無事ニーナを救出した。ニーナは父スタンが来た場所を見ようとここを訪れていた。スタンは三年前、この洞窟で「ルミナス」を見つけていた。ニーナは追いついてきた村人に付き添われ村に戻っていった。
 アドルはさらに奥に足を踏み入れ、最深部で「凍って眠る少女」を目の当たりにした。すると落ちてきた腕輪から、ストーカーと名乗る男が現れた。ストーカーは氷漬けの少女フォレスタを助けるため、腕輪の力で魔人となり、以来時がくるのを五百年もの間待ち続けていた。ストーカーは、腕輪の主がいなければこの世にいられない。ストーカーに見込まれ、アドルは「契約の腕輪」を手にした。強大な魔獣を退け、アドルは無事洞窟から生還した。


ニーナの店

店先でオカリナを吹くニーナ

 ニーナはサンドリアの一角で道具屋を営んでいる。一度サンドリアに戻ったアドルは、ウィリーのすすめもあり、ニーナの様子を見に行くことにした。
 ニーナは店の前でオカリナを吹いていた。アドルの姿に気がつくと、礼を述べるとともに、スタンのことを思い出し涙ぐんだ。ニーナにとってスタンは恩人なのだ。

 次にアドルはこれまでのことをドーマンに報告した。ドーマンは「ルミナス」を手渡すとともに、結晶の一つが沼地の洞窟にあるというので確かめるようアドルに指示した。

メダルを奪うカリオン

 ドーマンの屋敷を辞してニーナの店近くに来ると、ニーナの悲鳴が聞こえてきた。店に急行すると、一人の大男が押し込んでいた。男はアドルに「ケフィンのことには関わるな」と警告し、スタンが遺跡で発掘したメダルだけを奪うと、逃げていった。
 そこに現れたウィリーに、アドルはメダルとケフィンのことを聞いてみた。ケフィンとは大昔錬金術で栄えた王国で、五百年前東の砂漠に遺跡「廃都」を残したまま、突然消え去ったという。メダルはケフィン王国と何かの関係があるものらしい。ウィリーはケフィンについて詳しく聞きたいのなら、マーシャという女性を訪ねるよう勧めた。

注:ニーナの店に押し入ったのはリジェ三幹部のカリオン。このメダルがリジェの手に渡った。


マーシャの家

マーシャ登場

 マーシャは若い錬金術師で、森の入り口に小屋を構えて暮らしていた。アドルは幻の都にまつわることがらを尋ねてみた。幻の都の伝説とは、ケフィン王国の一部がいまだに昔の姿のままどこかに残っているというものだった。スタンが廃都で見つけたメダルは、王家の紋章を示すもので、錬金術を扱う者にとっては特別な意味があるらしい。結晶とは錬金術の元となる六つの元素(地・水・炎・風・闇・光)の力を強く宿したもので、幻の都を探す手がかりになるという。
 マーシャはアドルに錬金魔法のなんたるかとその使い方も伝授した。結晶のあるところで魔法を発動することは、暴走を招きかねず危険なことも教えてくれた。
 ストーカーは一部始終を陰から眺めていたが、マーシャとフォレスタが似ていることに驚いていた。


イブール一家登場

アドルを前に一芝居打つイブール兄妹 アドルを嘲るイブール兄妹

 沼地に行くためには、魔物がはびこる森を抜けていかなければならない。サウスウッドの出口では、一人の少女が二人の大男に責め立てられていた。見るに見かねてアドルが割って入ると、男たちは少女が抱える多額の借金の返済を求めてきた。払えないなら一仕事しろと、男たちに案内されたのは闘技場だった。男たちはアドルに魔物をけしかけたが、アドルはこれを仕留めてしまった。
 これを見た少女は大男とともに目を丸くした。少女テラと大男ディオスとノティスは盗賊団イブール一家の者で、はじめからアドルに因縁をつけた上で、追い剥ぎをするつもりだったのだ。イブール一家はアドルをお人好しと嘲笑して去っていった。


コキリコ村と沼地の洞窟

ロッドに事情を話すハルタ

 森にあるコキリコ村では、魔物の出没に木こりたちが頭を抱えていた。沼地の洞窟には森の守り神ネードが住んでおり、結晶は強力な魔獣に守られているという。
 村では旅人ハルタが足止めを食らっていた。病気にかかった沼地の宿の娘に特効薬「カメリアのつぼみ」を届けるため、森を越えると言って聞かないのを、木こりが押しとどめていたのだ。事情を知った木こりの親方ロッドは、代わりに自分が行くと言い、ノースウッドに入っていった。
 アドルが後を追うと、ロッドは魔物により負傷し、倒れていた。アドルはロッドに「カメリアのつぼみ」を託された。

ピュイをアドルに託すネード ピュイを横取りするイブール一家

 無事「カメリアのつぼみ」を沼地の宿に届けたアドルは、元気になった娘から沼地の洞窟に入る方法を聞き出すと、洞窟に踏み込んでいった。守護獣を倒すと水の精霊ネードが現れた。ネードは結晶が閉ざしている力は危険なもので、心なき者の手に渡ると大きな災いを呼ぶと言った上で、アドルに水の結晶「ピュイ」を託すことにした。ところがそこにイブール一家が現れ結晶を横取りし、セーベ遺跡に行くと言い残して去っていった。


ラムゼンの町

ラムゼンの町

 ロッドによれば、セーベの遺跡には炎の結晶があり、一家はそれを狙っているのではないかという。
 セーベの遺跡に行く前に、アドルはラムゼンの町に立ち寄った。町に着くなりアドルは中年のおばさんから、結晶を狙って若い三人組が遺跡に向かったという情報を押し売りされた。おばさんはイブール一家の頭領アルガだった。情報はもちろん嘘で、一家はアドルが遺跡から炎の結晶を持ち帰ったところを強奪しようと企んでいたのだ。

 ラムゼンには図書館があった。蔵書にはセーベの歴史書もあった。五百年前、強大な勢力を誇ったセーベ王国はケフィン王国に攻め入ったが返り討ちにされ滅亡したという。セーベの遺跡に入るためには「水門の鍵」が必要だということもわかった。
 「水門の鍵」はセーベの民の末裔ガラム老人の家にあるらしい。ガラムはセーベ遺跡に出払っていていなかった。ガラムの娘から水門の鍵を借り受けると、アドルはセーベの遺跡に向かった。


セーベの遺跡

セーベの遺跡 ガラムの部屋

 遺跡の奥で、アドルはガラムと対面した。ガラムは一家の伝承を守り、遺跡の一角の小部屋で寝起きして、人を待っていたのだ。ガラムはスタンとも会っていた。スタンによれば、結晶とはセーベを滅ぼした力を封印しているものらしかった。
 遺跡の奥でアドルが守護獣を倒し炎の結晶「アグニ」を手に入れると、ガラムが現れ、使命は果たされたと言い、二人してラムゼンに戻ることとなった。ガラムの家の伝承と使命とは、赤毛の旅人が炎の結晶を手にするのを見届けよというものだったのだ。

ラムゼンで密談するドーマンとリジェ

 夜、ラムゼンの一角ではドーマンとリジェが密談をしていた。二人は遺跡の発掘物をサンドリアに運ぶためラムゼンに来ていた。発掘物はドーマンの所有物で「儀式」に使うものらしい。
 ドーマンはその財力で結晶を集めていた。リジェは幻の都に行くために必要な王家のメダルを手にしていた。二人は幻の都を狙い、結託していたのだ。互いに牽制する言葉をやりとりした後、リジェは発掘物の運搬を承諾した。

 一方、アドルはガラムとともに、ガラムの家にいた。ガラムはスタンの手記をアドルに渡した。手記は地の結晶が北にあることをほのめかすと同時に、結晶の意味とその危険性を示唆するものだった。
 町の住人は、リジェやドーマンの動きを見逃さなかった。アドルは住人の口から、リジェとドーマンが怪しげな動きを見せていることを知る。


サラバットの試練

難所ラムゼン大滝

 翌朝、アドルがガラムの家を出るとドーマンが話しかけてきた。水の結晶を奪われたのも気にとめない様子で、結晶を探して北の方に足をのばしてみてはどうかと勧めてきた。スタンの手記のこともあり、アドルは北を目指した。

 ラムゼン大滝の傍らにある一軒宿によれば、結晶は鍾乳洞にあるらしい。足場の悪い滝を抜け、鍾乳洞にたどり着くとストーカーが現れ、地の結晶「テール」はサラバットなる老人が鍾乳洞から別の場所に移したと言った。
 サラバットはストーカーの師匠で、六百年近く生きており、ジャングルの中で暮らしている。サラバットはアドルの実力を試すべく、地の結晶を手に入れたくば、魔獣を倒し自力で取ってこいと告げた。サラバットのすすめで、その日アドルはサラバットの小屋に泊まることとなった。

ストーカーの回想

 その夜、ストーカーは小屋の外で五百年前のことを回想していた。ストーカーはフォレスタとともに「ルミナス」を守っていた。ところがそこに兵士の一隊が現れた。ストーカーは結晶とフォレスタを守るべく応戦したが、絶体絶命の危機に陥った。そのときフォレスタはストーカーを救うべく、結晶を目の前に魔法を発動させたのだ。結晶のそばで魔法を使えば暴走する。その代償は大きかった。ストーカーが気がつくと、フォレスタは氷漬けになっていた。

 夜が明けアドルが起き出してくると、ストーカーは己の過去を語った。自分の力不足でフォレスタを助けてやれなかったと悔いるストーカーは、フォレスタを救う希望をアドルに託し、また会おうと言い残して姿を消した。

謎の老人サラバット 地の結晶テール

 サラバットの試練をくぐり抜け、アドルは見事地の結晶「テール」を手にした。サラバットによれば、結晶とはケフィンの悪しき力を封じるためのものだった。砂漠化や魔物の出現は「ルミナス」が持ち去られたことがきっかけで起きたことだった。食い止めるには、ケフィンへ乗り込み元凶を破壊しなければならない。
 サラバットは超人的な能力ですべてを見通しており、ドーマンの目的はサンドリアの救済ではなく、ケフィンの復活だとアドルに告げた。六つの結晶のうち、「ルミナス」「アグニ」「テール」の三つはアドル、「ピュイ」「ヴェント」の二つはドーマンの手に渡っている。残る闇の結晶「ニュクス」を手に入れ次第、ドーマンの手から二つの結晶を取り上げ、地上に災いが及ぶのを阻止せよとアドルに命じた。
 アドルはサラバットが手配した筏に乗り、ひとまず近場の町に向かうことにした。


フェルテの町

フェルテに漂着するアドル

 筏に乗っていると砂嵐が吹き荒れ、アドルは吹き飛ばされた。フェルテの町の桟橋に漂着したところを、エフィという娘に保護された。
 ケフィンの廃都は砂漠を越えたオアシスにあるという。元気になったところで、砂漠横断に必要な「デザートマント」を買い込み、さっそく砂漠に向かった。ところが砂漠は砂嵐が吹き荒れ、越えることもできない。砂漠越えにはエフィの父親で町の実力者ムハーバが持っている「サージアイ」が必要らしい。

サージアイ使用中

 砂漠で魔物に襲われているところを助けた縁で、ムハーバと近づきになったアドルは「サージアイ」のことをきりだしてみた。ムハーバはドーマンに用心するようアドルに助言しつつも、気前よく「サージアイ」を譲ってくれた。


ケフィン廃都

コボルドが住むケフィン廃都

 廃都のそばでは隊商が天幕を張っていた。スタンを覚えている者もいた。五年前、廃都で結晶を確認した後、砂漠でニーナを助けたという。それから三年ほどして再びここで結晶の調査をしていたが、それ以降足取りが途絶えたとのことだった。
 ケフィン廃都には、人語を話すコボルドたちが住みついていた。コボルドによれば「ニュクス」はここにあるらしい。その通り、アドルは廃都の奥で守護獣を倒し「ニュクス」を入手した。


サンドリア異変

アドルを待ち受けるドーマンとリジェ

 フェルテではムハーバが出迎えに現れた。ドーマンに結晶を渡せばどうなるかはわからないと、ムハーバはアドルを心配して「地下道の鍵」を渡した。
 サンドリアに近づくとウィリーが現れ、ドーマンのためにサンドリアが大変なことになっていると告げた。マーシャも結晶が揃うことを憂慮していた。幻の都が封印されていた理由を探るべく、マーシャはアドルとともにサンドリアに向かうことになった。

 その頃、ドーマンの屋敷ではドーマンとリジェが密談をしていた。ドーマンはアドルが歯向かうことを見越して、ニーナを利用することを思いつく。承知したのか思うところでもあったのか、リジェは無言で立ち去った。

 サンドリアはドーマンの放った兵士がうろついていた。アドルはニーナの店に行ったが誰もおらず、そのかわり結晶と引き替えにニーナを解放するという、ドーマンからの手紙が置いてあった。
 アドルは地下道経由でドーマンの屋敷に侵入した。そこでドーマンたちと対峙したが、リジェ率いる三幹部に捕らえられ、結晶を奪われてしまった。

本拠地へ向かうイブール一家とマーシャ

 一方、屋敷の地下にはイブール一家も捕らわれていたが、脱獄していた。マーシャも合流し、ドーマンに一泡ふかすべく、ドーマンの本拠地である沖の小島に向かった。


ドーマンとの対決

アデプトスドーマン

 アドルは本拠地の小島に連行された。ドーマンはここに発掘品を持ち込み錬金術の実験を重ね、幻の都復活の準備を密かに進めていたのだ。突如現れたマーシャの制止も聞かず、ドーマンは結晶を作動させたが、すぐに止まってしまった。
 そこにイブール一家が駆けつけ種明かしをした。一家がドーマンに渡した「ピュイ」は偽物だったのだ。出し抜かれて悔しがるドーマンは、錬金術で強大な怪物に変身してアドルに襲いかかったが、倒された。

一行を出し抜くリジェ

 ところが今度はリジェがニーナを人質に本物の結晶を奪い取ってしまった。六つの結晶はリジェの手に渡ってしまった。結晶はケフィンを封印するものだった。リジェはケフィンの封印を解いた上で、二度と封印されないよう結晶を集めていたのだ。リジェと三幹部は結晶とニーナの店から奪った「王家のメダル」の力でケフィンへの門を開くと、ニーナともどもケフィンへ行ってしまった。

アドルに心を開くテラ

 そのとき、本拠地の建物が崩れ始めた。一行は急いで脱出したが、アドルとテラは逃げ遅れ、奈落の底に落ちてしまった。さらにテラが魔物に襲われた。アドルが魔物を撃退すると、テラはとまどいながらもアドルに心を開いた。二人は協力して脱出を果たした。

 マーシャによれば、封印が完全に解けた今ならば、廃都からもケフィンに行けるという。さいわい王家のメダルと同じものをマーシャが持っていた。ニーナの店に集合した一行は、改めて廃都に向けて出発した。

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