「イースの開発=RPG」の図式!?
〜「イース冒険の書」開発者インタビューから

 「イース冒険の書」は、1988年にJICC出版(現宝島社)より発売された案内本でして、この本にも制作者のインタビューが収録されています。見開き2ページと短いながらも「AVG&RPGIII」のインタビューでは語られない話が明らかにされており、ゲームシステムや物語がどのようにしてできあがったかがうかがえる内容で、「イース」を知る上で欠かせない資料となっています。
(斜体部分は荒井が追加)


「イースの開発=RPG」の図式!?

 コンピュータRPGの世界にビッグな旋風を巻き起こした『イースI・II』。その開発はまさにRPGそのものであったという。今回、日本ファルコム取材班は、開発スタッフに直撃インタビューを行った。
 これから紹介する内容は、その結果を再構成したものである。ゲーム開発の意外な一面が見られたと信じているのだが、皆さんはどのように思われるだろうか。

●メンバー
シナリオライター:宮崎友好氏
プログラマー:橋本昌哉氏
グラフィック:桶谷正剛氏・大浦孝浩氏
音楽:石川三恵子氏
その他:頑張れファルコム取材班

取材班:イースの開発のきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

宮崎:きっかけというか、イースIからだとずいぶん前になってしまうのでハッキリした記憶はありませんが、みんなでワイワイ話しているうちにアイディアが固まってきたんです。ファルコムの場合はたいていそうです。

取材班:原案ではどんなゲームになるはずだったのでしょうか。

宮崎:イースという国の過去がしだいに明かされていくというのは最初からできていました。あと、人間性やお互いの信頼を大切にするゲームにしようとは思っていました。

取材班:改めてイースIIはどんなゲームだったのかということをお聞きしたいのですが。

宮崎:全編を通して人物が大勢出てきましたね。あれは、実はラストに出てくる人間たちの人物紹介だったんです。
 また、アドルはたくさんの人に助けられながら旅をするので、見た目には一人ですが、本当は見えないパーティが組まれているのだと思ってください。
 ゲームのテーマはラストシーンにすべて隠されていますから、それは皆さんが実際にプレイしてご覧になってください。

取材班:さて、宮崎さんにはシナリオライターとしてお話していただきましたが、プログラマーとしての立場で橋本さんが、常に意識されていたことはありますか。

橋本:私の場合は内部的なことですが、できるだけプログラムに汎用性を持たせて、開発者の誰にでも使える形にするということでしょうか。ユーザー側に目を向ければ、メッセージが多くつくれて、ディスクのアクセス回数をできるだけ減らすという部分ですね。開発側、ユーザー側を問わず、みんなの制約を少なくするのが仕事でした。
 あと、やりたいこととできることの差というのが常に頭の中にありました。例えば、イースの場合はキャラクタが小さいですよね。表情が直接出せないので、感情が表現できなかった。その辺辛かったです。

取材班:イースIIで、魔王との戦闘シーンに使われた炎はスゴイの一言ですね!

橋本:(思わずほおが緩む)ええ、ずいぶん反響がありました。イースIIでは映画的なつくりというのを前面に押し出していましたから、文字どおり「最後の演出」というところでしょうか。

取材班:細かい部分になりますが、ふつう、ゲーム中で起こる事件はシナリオ中心に展開するのだとは思いますが、例えば、プログラマー側からゲーム中でこんなことがしたいとか提案することはあるのでしょうか。

橋本:それはあります。イースIIの氷の世界の滑り台とか、神殿の窓の向こうでも背景がスクロールしている場面などは、プログラマー側からのアプローチでした。まあ、スタッフがお互いに意見を言い合ってぶつかっていくことがいいんだと思います。どんなにぶつかっても「信頼」がありますから、相手の気持ちがわかる。

取材班:どことなくRPGみたいですね。

橋本:本当にそうです。みんなでやっていく仕事ですから、信頼で結ばれた中でお互いに主張し合って目的に進んでいくわけです。

取材班:では、イースの視覚的なイメージを決定づけるのに重要な役割をされたアートディレクターの桶谷さんですが、どのようなところに注意されてグラフィックをつくられましたか。

桶谷:私はマップをつくったり、グラフィックの方に指示を与えるのが仕事ですが、ストーリーの展開を大切にするとともにダイナミックな展開も狙ったので、例えば、氷の世界の次に溶岩地帯をもってくるなどシーンのつながりには気を使いました。マップの構造を考えるのは大変でした。

取材班:オープニングとエンディングのアニメーションも桶谷さんが手がけられたわけですか。

桶谷:絵コンテはやりました。ただ、エンディングでアドルとフィーナの顔が出てくるんですが、いったいどんな顔にしようか……悩みました。

取材班:グラフィックの大浦さんは主にマップを構成している最小単位の”チップ”と呼ばれる絵を担当されたそうですが、楽しかったところやご苦労はありましたか。

大浦:基本的にドット絵ですから、なかなかイメージどおりにならないことがありました。特に聖域のイメージはもめたんです。私は神聖な感じでつくったつもりだったんですが、回りからは下水道だって言われました。ひどい。あと、思っていたのとは違う使い方をされることがありましたね。

取材班:チップの枚数はいくらでも使えるんですか。

大浦:128×16で計2048個という制限の中ですから、作っていて足らなくなるというようなこともありました。

取材班:音楽の石川さんは、あのかっこいい音楽を作曲されたご本人ですが、イースIIのイメージはというのはどんなものだったのでしょうか。

石川:どこか少年っぽいというか時代劇のような感じですね。

取材班:曲数は全部で、

石川:25曲です。数えてはいませんが、つくったものはその倍はあったと思います。その中から厳選してゲーム中に使いました。最近のユーザーさんは結構うるさいので同じメロディが繰り返すだけだとあきられてしまいますから、少ないデータ量でいかに楽しくつくるかということに気を使いましたね。

取材班:皆さん今日はどうも有難うございました。

(1988年9月「イース冒険の書〜イースからイースIIへ〜」より抜粋)

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