もともと「イース」が一本のソフトとして企画されたことも、ファンの間ではよく知られています。当初は一本のソフトとして制作される予定だったのですが、記録メディアの容量や制作日程の都合などから、前編・後編の二本に分かれることになりました。
その後編が、今回紹介する「イースII Ancient Ys Vanished The Final Chapter」(以下「イースII」と略)です。
なお、今回も物語の核心に触れる内容を扱っています。「イースII」のみならず、「イースI」のネタバレも含んでますので、自力で解きたいという方は、ゲームを解いてから読まれることをお勧めします。
(画面写真は全てMSX2版のもの)
日本ファルコム 価格はいずれも7800円
魔導師とおぼしき魔物が、ダームの塔が陥落したことを謎の球体に報告していた。報告を受けた球体は、アドルを見下すかのように、高みの見物を決め込んだ。
時をさかのぼること800年前。自由と秩序の国、イースが誕生した。イースは二人の女神と六人の神官によって治められ、「黒い真珠」と呼ばれる宝珠の魔力によって繁栄していた。黒真珠は全ての魔法の源で、神官たちがその力で魔法金属「クレリア」を生み出したおかげで、イースはますます栄えた。
ところが空前の繁栄を享受するイースに、突如災いが降りかかる。クレリアが作られる副作用として「魔」が生まれ、イースを蹂躙し始めたのだ。
神官たちはクレリアを地下に封じたが、「魔」の勢いを止めることはできなかった。人々がサルモンの神殿に追いつめられると、神官たちは黒真珠の力で神殿を地上から切り離し天空へと逃れた。魔物たちは天空に昇った神殿を追うため、ダームの塔を築いた。
あるとき、二人の女神が姿を消した。それから程なく、突如として魔物の追撃が止んだ。イースには一応の平和が訪れたが、もはや女神も神殿もなく、かりそめにすぎなかった。いつか真の平和が戻るよう、神官たちはイースを結集した力を秘めた六冊の「イースの本」を著し、それぞれの子孫に託した。
それから700年。イースが忘却の彼方に追いやられた頃。「エステリア」と名を変えたイースの地で、クレリアが「銀」として発見される。銀は人々の暮らしを潤したが、それは災厄の再来だった。人々が銀に手を出したおかげで、「黒いマントの男」ダルク=ファクトが、「魔」を甦らせてしまったのだ。
その頃、駆け出しの冒険家アドル・クリスティンがエステリアに渡ってきた。エステリアの異変を察したアドルは、持ち前の好奇心と意志の強さで事件の究明に乗り出した。サラ、ジェバ、ゴーバン、ドギ、ルタ、ラーバ、それにフィーナとレア。様々な人々と出会い、協力を得ながら、アドルはイースの本を集めていく。そしてダームの塔の最上階で最後の本を賭け、ダルク=ファクトと対決する。
死闘の末ダルク=ファクトを征し、ついに六冊の本を揃えると、本から光があふれ出しアドルを包み込んだ。光はアドルに告げる。「本当の戦いはまだ終わっていない。選ばれし勇者よ、天空へ翔べ。」と。
夜明けを迎えたダームの塔。頂上から光がほとばしる。光は野を駆け、山を越え、天めがけて疾走した。光に気付いて少女が振り向く。何かが起こるという予感を感じて。するとそこには気を失ったアドルが倒れていた。
光がアドルを導いた場所。それこそ、700年前地上を離れて天空に逃れたイースだったのだ。
アドルは少女に介抱されて目を覚ました。少女の名はリリア。アドルはリリアに教えられ、自分が光に導かれてイースに渡ってきたことを知る。アドルはリリアに促され、リリアが住むランスの村に向かった。
一見平和なランスの村にも異変は起きていた。村人の話によれば、村の地下から魔物の気配がするようになったというのだ。
リリアの家を訪ねたアドルは、そこでリリアの母バノアから、リリアが難病で余命幾ばくもないことを知らされる。村の医者フレア=ラルが治療法を知っているのだが、最近姿を見かけないという。アドルはバノアから装備を調えるためのお金とともに、見つけたら渡してほしいとフレア宛の手紙を託された。病気のことはリリアには知らされていない。バノアはリリアのことが不憫でたまらなかった。
フレアの弟に会うと、フレアの消息がわかった。薬草を採りに地下洞窟に行き、落盤で閉じこめられたというのだ。
地下に行くには村の長老の許可が要る。長老に会いに行ったが、村に隣接する廃墟に出払っており留守だった。
長老を捜して廃墟に来たアドルは、地下入口の番人アスタルから、長老と行き違いになったことを教えてもらう。長老は「二人連れの女の子」を追ってここに来たが、見当たらないので村に戻ったという。
村でアドルはようやく長老を捉まえた。長老はアドルがイースの本を持っているのを見て、本とともに廃墟の地下にある「聖域」を訪れるようにと、地下に行く許可を与えた。
許可こそ得たものの、地下には強力な魔物が徘徊しているという。エステリアで手に入れた武具を失いしかも弱体化していたアドルは、剣さばきの勘を取り戻すついで、廃墟を探索してみた。
廃墟には旧い石版が置かれてあった。碑文によれば、イースの本に秘められた力とは六冊集めた者を天空に導くことであって、さらに全ての本を神官に返した時、「サルモンの神殿」への道が開かれるのだという。
廃墟の一角にレグスと名乗る老人がいた。レグスは魔物が守っている宝箱の中身を持ってくるようアドルに命じた。
魔物が守っていた宝箱には「神界の杖」が入っていた。杖をレグスの元に持っていくと、魔法について教えてくれた。「神界の杖」を持って女神像に触れれば、魔法を使う資格が与えられるという。そのとおり、杖を持って廃墟の女神像に触れるとアドルに「魔力」がみなぎってきた。
イースには六つの魔法がある。レグスはそれらを探すようアドルに助言した。
地下に潜ったアドルは、随所で神官像が安置されている区画を見つけた。それが「聖域」だった。像にイースの本を供えると、像は導きの言葉をアドルに伝えた。
ハダルの聖域では、全ての本を返還したとき、災厄の元凶が待つサルモンの神殿への道が開かれるということ。トバの聖域では魔物の拠点にたどり着くためには六人の神官に対応する六つの魔法が必要になること。ダビーの聖域では魔法がある限り魔物は生成され続け、それを断つためには二人の女神の力が必要であること。メサの聖域では神殿にたどり着くためには氷壁面と溶岩地帯を経由しなければならないこと。ジェンマの聖域では魔物とは魔法から生み出された生物で、魔物と語り合えれば何かが判るということ。
くまなく地下を廻ってみたが、残るファクトの聖域だけは道がふさがれ、行けなくなっていた。
落盤を発見したアドルは、土砂を取り除いてみた。奥には閉じこめられたフレアがいた。さっそくバノアの手紙を渡すと、リリアの治療薬を作るのに必要な材料を教えてくれた。ひとつは「セルセタの花」と、もうひとつは「ロダの実」。フレアはこの二つを持ってくれば薬を調合しようと約束した。
フレアを救出したアドルは、さらに奥へと足を踏み入れた。そこで巨大な敵「ベラガンダー」と遭遇する。これまでの強敵と違って剣が一切効かない。アドルは地下で見つけていたトバの魔法「ファイヤー」の杖でこれを退けた。
最下層にはフレアが言っていた「セルセタの花」が咲いていた。また、ダビーの魔法「ライト」の杖もここにあった。ひととおり探索を終え、アドルは地上に戻った。
ロダの実は廃墟に落ちていた。材料を揃えたアドルは、フレアに薬を調合してもらう。薬をバノアの元に持っていくと、バノアは感謝の言葉とともに、礼としてかつて亡き夫が見つけてきたという、ハダルの魔法「リターン」の杖をアドルに贈った。
リリアはアドルとバノアとのやりとりを立ち聞きしていた。自分の命を救うため危険を冒してくれたアドルに、リリアは深く礼を述べた。
話によれば、村人ジラの家の地下室から、魔物の気配がするという。ジラの頼みでアドルは地下室を調べることになった。
調べるうち、壁を打ち壊しておびただしい数の魔物が地下室に押し寄せてきた。壁の先には洞窟から行けなくなっていたファクトの聖域があった。そこでアドルは最後の本を像に返し、神官ファクトより、サルモンの神殿にたどり着きクレリアの剣で魔を封じるよう命じられる。語り終えたファクトはアドルに「導きの巻物」を授けるとともに、神殿への道を開いた。
「導きの巻物」は巻物は女神がアドルを導くためのもので、各地の女神像を訪ねるたびに内容が書き換わる。読んでみると、魔を封じるには剣士の力が必要であるため、神殿を目指すようにと書かれてあった。
全ての本を返すと、聖域にあった開かずの扉が開いていた。扉の先は氷壁地帯だった。探索を進めるうち女神像の前にたどり着くと、巻物が書き換わり、氷壁の先に行くための手がかりが現れた。
氷壁地帯の果てには「ティアルマス」が待ちかまえていた。その跳躍力に手こずりつつもファイヤーの魔法で撃退し、アドルは無事氷壁地帯を抜け出した。
氷壁にはジェンマの魔法「テレパシー」の杖も隠されていた。「テレパシー」は魔物に化ける魔法で、使っている間は魔物が友好的に接してくれる。
アドルは「テレパシー」を使い、魔物に話しかけてみた。乱暴な魔物も多かったが、中には家族や仲間のことを心配する魔物、遊びに誘ってくれる魔物、身の安全を気遣ってくれる魔物、仕事の悩みを打ち明ける魔物までいて、敵ながら共感を覚える部分も少なくなかった。
「魔物とは魔法によって作り出された、戦いのために生まれては死んでゆく悲しい生き物。彼らには彼らなりの生活がある。」と神官ジェンマは言っていた。魔物にも魔物の暮らしがあって、それぞれに喜びや悩みを抱えて生きていた。
気になる情報もあった。ある魔物は、少女を捕まえた巨大な鳥の魔物が神殿の方に飛んでいくのを目撃していた。これと前後して、アドルの後を追ったのか、ランスの村からリリアの姿が消えていたのだ。
氷壁面の内側には溶岩地帯が広がっていた。溶岩地帯には小さな村落があり、そこから先へは進めなくなっていた。橋番のルバによれば、先日魔物が村に押し入り、村から出るための橋が壊されたというのだ。
アドルは「テレパシー」を使ってルバに話しかけてみた。すると「約束どおりアドルを渡らせなかった。」と、曰くありげなことを言った。追及するとルバは真相を明かした。それは魔物がルバの息子を人質に、アドルを足止めするようルバに要求していたのだ。ルバは息子を救出してくれと、アドルに「ささやきの耳飾り」を渡した。
アドルは溶岩地帯の某所で、ルーという魔物の群と会う。ルーは争いを好まないおとなしい魔物で、かつては「神の使い」と呼ばれていたが、溶岩地帯に現れた魔物によって片隅に追いやられていた。アドルはルーから、人間の男の子が魔物に連れて行かれるのを見たという話を聞く。
少年が連れ去られた方には毒ガスが噴き出す通路が控えていた。毒ガスを無効化するには「ロダの葉」が必要だという情報も仕入れている。ロダの葉を使って毒ガス通路を突破したアドルは、その向こうでルバの息子、タルフが閉じこめられた牢を発見する。タルフはキースという友好的な魔物といっしょに閉じこめられていた。キースは人語をしゃべれるようで、彼によれば「黒真珠」があれば牢から脱出できるらしい。
アドルは首尾良く「黒真珠」を見つけだし、タルフの救出に成功した。
タルフは集落に戻っていた。橋が壊れたというのはアドルを足止めするための嘘だったと、ルバは礼として対岸への橋を架けた。
タルフに教えられて牢に行ってみると、壁にキースの手記が残されていた。手記は捕らわれて観念しかけたキースが、伝説の女神とおぼしき少女が、神殿に来るよう救いを求める夢を見たというものだった。
橋の先では、巨顔の魔物「ゲラルディ」がアドルの行く手を阻んでいたが、これを倒してアドルはさらに神殿へと足を進めた。