ここに限らず、峠の入り口は杉林になっていることが多い。高度と人の出入りの多寡に関係があるのだろう。
今度は砂利道が出現。現在の峠道は昭和43年に林道として完成したもので、その後何度かの昇格を経て主要地方道になっている。
峠の中腹までは未舗装路が断続的に現れる。花立峠は山形有数の砂利道峠だったが近年舗装化が進み、未舗装路は1キロ程度を残すのみとなった。
つづら折りにさしかかるあたりで行く先を見上げる。急斜面に道が切られている様子が一目瞭然。峠の山形側はうねった山道になっている。
つづら折りの至る法面は崩落防護処理のため、コンクリートやモルタルで固められている。いつものことながら、こんな山奥でよく。
急な登りで180度の急カーブ。峠の中腹はこんな曲がり角がいくつも続く。ガードレールなんてものはない。
少し前までこのあたりは全くの未舗装路で、しかもガレているのが当たり前だった。舗装されて現在は格段に登りやすくなったが、ちょっと寂しいような気もする。
鞍部に到着。標高801m。これまでとうってかわって明るくなだらかな展望が開ける。
鞍部は北にそびえる禿岳や、南の小柴山への登山口になっている。峠の名はその昔、春になると判屋集落の若者が禿岳に登ってその年の豊作を祈り、帰りに花を手折って田んぼに供えたという風習や、往来する旅人が禿岳に花を手向けて道中の安全を願ったことに由来すると言われている。
また、峠には山男や山姥、ダイダラボッチといった異形の伝説も残っている。彼らが実在したかどうかはさておき、峠が古くからの難所だったことは間違いないようだ。
こうした風習は姿を変えて残っているようで、今でも禿岳は田植えの頃に山開きを迎える。
禿岳山開きの様子。この日峠は一年でも一番の賑わいを見せる。
禿岳への登山道をほんの少し登ったところにある広場からは、東の鬼首カルデラが一望できる。必見!
花立峠は鬼首カルデラの外輪山をまたぐ道だとも言える。
奥羽山脈の稜線に立つ。また少し登山道を上ったところから西を見ると、今度は向町の様子が遠望できる。峠は水を東西に分ける大分水嶺のひとつ。風景も見事に東西に分かれる。
峠を境に、県道は鬼首カルデラを内壁に沿って下りてゆく。宮城側は山形側に比べて道が広くて滑落防止用の柵も設けられている。もちろん舗装路で、急なカーブも少なく非常に走りやすい。
宮城側冬季通行止め区間入り口
冬季通行止め区間を抜けると、牛を放牧する牧場やスキー場が見えてくる。どちらもカルデラ斜面の高原を利用して作られている。
牧場を過ぎてしばらくすると、右手にかむろ湖が現れる。江合川の支流、大沢川をせき止めて作った人造湖で、峠からも見える。湖越しに見える山の落ち込んだところが花立峠。あそこからカルデラの底まで降りてきた。
さらに道なりに進む。標識によれば県道はここで二つに分かれている。
さっきの分岐を右に曲がると、整備されたバイパスを経て国道108号線に合流する。ちょうど江合川を渡りきったところが終点だ。
こちらが江合川。鬼首カルデラを一周してから外に流れ出す。
今度はさっきの分岐を直進した場合。交差点から100メートルほど進み、国道108号線につきあたるところがもう一つの終点。鳴子町の分庁舎や小学校があったりと、鬼首の中心部であるようだ。
(2005年10月取材・記・2008年6月追記)
場所:主要地方道最上鬼首線。起点山形県最上町向町交差点。終点宮城県大崎市(旧鳴子町)鬼首国道108号線合流地点。総延長約22km。
地理:
1・満沢街道踏切,2・追分碑&青面金剛碑,3・黒沢神社, 4・馬頭観音碑,5・判屋橋,6・峠入り口,7・ダート地帯, 8・鞍部,9・鬼首カルデラ&向町カルデラ展望地,10・かむろ湖 |
所要時間:どこにも寄らない場合、起点から終点まで約40分。起点から判屋まで約10分。判屋から花立峠鞍部まで約20分。鞍部から終点まで約10分程度。
特記事項:
花立峠重量制限と幅員制限あり。総重量6t、長さ8m・幅2mを越える車両は判屋より先通行禁止。冬季閉鎖あり。山形県最上町判屋から宮城県鳴子町小向原までの11.8km。11月下旬から翌年5月上旬頃まで。山形側の冬季通行止め区間には未舗装路が断続的に現れる。全長は1kmほど。
商店は起点の向町と終点鬼首にしかない。終点近くには轟温泉、吹上温泉、鳴子温泉といった温泉地が集結している。峠の行き帰りにどうぞ。