山元林道未舗装区間

次第にガレ場が目立ってきます

 平田側登山道の様子も見てきたところで、残る林道も走ってしまおう。登山口を過ぎると道はますます過酷になってくる。路面こそ締まっているが、幅は狭く曲がりくねって見通しが利かない上、落石や路肩崩壊などもあって、気の抜けない区間が続く。

落石と崩落で痛んだ箇所

 ずいぶん痛んだ区間に遭遇。山側の路肩は落石で埋もれ、同じく谷側は少し崩落している。

ガレ気味カーブ

 ガレ気味のカーブ。落石のおかげでコースが少々変わっている。

荒々しい切り通し

 荒々しい切り通し。よくこんなところに車道を通したもんだと感心しきり。

そろそろ終点です

 そして林道は田沢川の渓谷を離れ、山中へと向かう。ここまで来れば山元林道も終点間近。


湯の里林道平田側

湯の里林道起点の広場

 山元林道入り口から9キロほど走った末、山元林道終点に到着。終点は広場になっていて、峠の送電線や湯の里林道が見える。広場に立つ看板は判読不能なほどに色が褪せているが、どうやらここが湯の里林道起点であることを示しているらしい。

湯の里林道平田側入り口

 山元林道を走破すると、引き続いて湯の里林道が始まる。

湯の里林道コンクリート舗装区間 かぶと沢橋 本当よく整ってます

 湯の里林道に入ると、それまでの険路はなりを潜め、急に走りやすくなる。新しいからか幅は広いし整備も行き届いている。

法面崩落箇所

 それでもここが険しい山中であることに変わりはない。やっぱり痛むところは痛んでいて、こんなに法面が崩れているところもあった。

車道最高地点のカーブ

 このカーブが車道の最高地点。新与蔵峠の800m手前あたりにある。


新与蔵峠再び

新与蔵峠再び

 林道経由で平田側からも新与蔵峠に到着。平田側から登ってくると、ここを境に鮭川の盆地が見えてくる。
 与蔵峠は明治初頭の磐根新道開通や大正期の陸羽西線開通によって衰退し現在に至るが、現代的な幹線道路を通そうという計画が持ち上がったこともある。
 戦後、酒田北港に工業地帯を作るという計画が浮上したのだが、その際、庄内最上連絡道の貧弱さが問題となった。先述したとおり、近代以降の庄内最上間交通は実質上磐根新道一本に頼りきっており、代替路はきわめて少ない。何らかの理由で磐根新道が通れなくなれば、たちまち両地方の往来は滞ってしまう。それでは輸送路として心許ないというので磐根新道と並ぶ幹線道路の必要性が叫ばれ、その路線として与蔵峠が注目されたのだ。
 実際、車道建設のための調査もされたのだが、結局工業地帯建設計画は中止になった。それにともない新道建設の必要もなくなったのか、与蔵峠の幹線道路化計画は幻に終わった。その後峠が登山道や管理道として細々と命脈を繋いでいたのは、これまでご覧のとおりである。

県道整備促進の看板
鮭川村で見つけた看板。村は峠筋の整備に力を入れているようだ。林道の県道昇格も遠くない未来のことだろう。

 湯の里林道は、かつての悲願の実現でもあった。そう考えると、林道がやたら立派なのも納得がいく。この林道もゆくゆくは県道に昇格されるのだろう。しかしその時にも、峠の森には与蔵が住んでいてほしいとつくづく願う。

(2007年6月取材・2008年4月記)


案内

場所:最上郡鮭川村羽根沢と酒田市(旧平田町)坂本の間。郡界。与蔵峠登山道および羽州湯の里林道。与蔵沼標高640m。

所要時間
羽根沢から郡界まで自動車で約30分。郡界から坂本まで同約1時間。鮭川側登山口より与蔵沼まで徒歩約1時間半。与蔵沼から平田側登山口まで同約30分。

特記事項
 全体的に登山道はよく整備されている。標識もいくつか設けてあるので、歩く上で困ることはあまりないだろう。ただし峠口に行くまでは車がないと少々きつい。地形図には平田側の古道も載っているが、こちらは完全に廃道化しており通行困難。羽州湯の里林道の開通によって、自動車での鮭川・平田間通り抜けもできるようになった(地形図によっては湯の里林道が記載されていないものもある)。林道未舗装区間約15.7km。状態が悪いところもあるので、走行の際は気をつけること。登山道も林道も鮭川側は絶好の展望が楽しめる。鮭川側峠下に羽根沢温泉、同じく平田側に小林温泉。どちらも気軽に利用できるので行き帰りにどうぞ。1/25000地形図「羽根沢温泉」「清川」「中野俣」。同1/50000「清川」「大沢」。

参考文献

「東北の峠歩き」 藤原優太郎 無明舎出版 2004年

「ニタイとキナナ」 高室弓生 青林工藝社 2006年

「最上地域史 第27号」 最上地域史研究会 2005年

「やまがた地名伝説 第一巻」 山形新聞社編 山形新聞社 2003年

「やまがたの峠」 読売新聞山形支局編 高陽堂書店 1978年

「山形県最上の巨樹・巨木」 坂本俊亮 東北出版企画 2002年

参考サイト

「国土地理院基準点成果等閲覧サービス」
URI:http://sokuservice1.gsi.go.jp/

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