第三章 翼あるものの変貌

アドルを介抱するリーザ

1・牛迷いの窪地

 アドルはラパロを目指し牛迷いの窪地を横断したが、行き倒れになる。

2・村の掟

 ラパロのロドリゴは倒れていたアドルを見つけたが、余所者は村に不幸を招くとして見殺しにする。耐えかねたリーザはこっそりとアドルを助けに行った。
 リーザのおかげでアドルは意識を取り戻した。手紙の主に会えたので、アドルは詳しい話を聞き出そうとしたが、なぜかリーザはかたくなに口を閉ざした。かすかに分かったのは聖域の城にエルディールという有翼人が一人で住んでいるということ。アドルは城を目指すことにした。

3・暗雲

 聖域の城に近づくなり、急に雲が立ちこめ雨が降ってきた。アドルは雷に打たれ瀕死の重傷を負う。そこにグルーダ達が現れ、アドルを魔物にしようと城へ連れて行く。

4・地下室

 落雷は不用意に城へ近づく者を退ける罠だった。アドルを危険な目に遭わせた自責の念に駆られてリーザは城へ向かった。
 グルーダ達は闇の一族の者である。仲間のバミー、ガディスと共に一族の再興を狙っており、そのため「古代超文明の大いなる力」復活の鍵を握る有翼人エルディールに近づいていた。

5・闇に蠢く……

 アドルは城の地下室に運ばれていた。そこに現れたリーザのおかげでアドルは再び意識を取り戻す。アドルは地下室に火を放ち、獣母もろとも部屋の魔物を一掃する。

6・密議

 エルディールはロムン部隊の動きをつかんでいた。「古代超文明の大いなる力」の復活には三つの宝珠が必要で、ロムン部隊はその一つを探しに大河の村ガザールに進駐していると闇の一族に告げる。
 エルディールは城にあった「黒真珠」を取り込んでおり、全てを見通していた。アドルは隠れて聞き耳を立てているのを発見されてしまう。三人組になぶり殺しにされかけるが、巻き添えを食って身代わりにリーザが死んでしまう。

注:「序章」に現れる部屋にあった球体とはこの黒真珠のこと。ゲームではイースの黒真珠の由来が詳述されるが、この小説ではさほど語られていない。

リーザを蘇生させるエルディール

7・城主と娘

 エルディールは有翼人に伝わる首飾りの力でリーザを蘇生させる。エルディールは黒真珠により人格が変わっていたが、リーザが特別な存在であることに変わりはなかった。
 アドルも意識を取り戻していた。城から脱出したアドルはリーザと遭遇する。アドルは三人組を指揮しているのはエルディールだと詰め寄ったが、リーザはエルディールが三人組に騙されていると信じていた。
 城で見聞きしたことをカーナに知らせるべく、アドルは呼子を吹いた。


第四章 三つの宝珠

一族を前に演説するグルーダ

1・ガザールの港

 レオは黄金の都を狙っていた。レオに黄金の都と三つの宝珠の話を吹き込んだのはデュレンだった。レオはガザールの長老を脅し、宝珠の一つ「月の瞳」がエステリアにあるという情報をつかんでいた。
 ガザールではロムン部隊がエステリアに渡る準備をしていた。バミーは色仕掛けでレオ将軍に取り入って、エステリアに同行することとなった。

2・リブロットからの通信文

 呼子に応じて、リブロットから伝書鳩がアドルの元にやってきた。アドルは城で見聞きしたことを手紙にしたためルースに託した。

注:三章7節では、エルディールが三人組を指揮しているとアドルは思いこんでいるのだが、手紙にはどういうわけか、三人組がエルディールを操っていると書いている。

3・長老と孫娘

 アドルの前にラパロの長老が現れた。城での出来事を話すと、長老は真相を語り出した。リーザはエルディールの世話に当たっており、エルディールに特別な感情を抱いていた。その心変わりをいち早く知ったものの、想い人を守りたいがあまり、一人悶々と悩んでいたのだ。
 三つの宝珠は「大地の瞳」「月の瞳」「太陽の瞳」といって、樹海に眠る神殿にあるという。長老は歴史研究家ガゾックを紹介した。

4・誓いの祠

 グルーダとガディスは闇の一族の本拠地へと戻り、来るべき戦いのため一族の者を結集した。グルーダは一族の再興をアレムの石像に誓うのだった。

注:本来「闇の一族」とは部族の名前なので、グルーダ・バミー・ガディス以外にも同族が多数いる。この小説ではグルーダは一族の頭領ということになっている。

5・氷の山

 アドルは魔物を退けつつ、氷の山を目指した。洞窟で氷の巨人を倒したアドルは、ようやくガゾックを見つける。

6・地底の老人

 アドルが事の次第を話すと、ガゾックは大地の神殿にアドルを案内した。大地の神殿には「大地の仮面」という巨大な金属板が安置されていた。ガゾックは「大地の瞳」の交換条件としてアドルにお遣いを頼む。

7・湖畔に咲く花

 ガゾックのお遣いとは、家にガゾックの病気の妻の様子を見に行って、様子がすぐれないようだったら、ガザールにいる医者ガロットにセルセタの花で薬を作ってもらうというものだった。アドルはガゾックの妻に会った後、セルセタの花を採取しガザールへと向かった。

8・ガザールの長老

 ガロットの診療所にはフレアがいた。アドルはセルセタの花をフレアとガロットに渡す。フレアは「月の瞳」を求めてエステリアに向かったロムン部隊の動向を気にしており、帰郷するところだった。
 アドルはフレアの紹介でガザールの長老に会った。長老は「古代超文明の大いなる力」を復活させるには三つの宝珠を集める以外に、黄金の都こと古代都市を浮上させる必要があり、その方法は大長老が知っていると語った。
 そこにグルーダ率いる闇の一族が現れた。グルーダは長老を脅迫し「太陽の瞳」がリブロットにあることを聞き出すと引き揚げていった。

デュレン参上

9・伏兵

 アドルと長老は身動きがとれないよう縛り上げにされてしまった。そこにデュレンが助けに現れる。

10・夜襲

 アドルはリブロットへ急いだ。リブロットでは村人と闇の一族が入り乱れて戦っていた。グルーダとガディスは長老の家に押し入ったが、目当てのものが見つからず引き揚げていった。長老は「太陽の瞳」の秘密を守るべく自害していた。
 アドルの前にカーナが現れ、長老に託されたと言って「太陽の瞳」を差し出した。

注:ゲームでは序盤にカーナが「太陽の瞳」を呆気なく渡してくれる。

11・子守歌

 ガザールに戻ったアドルは、ガロットから薬を受け取りガゾックの家に戻った。約束通りガゾックから「大地の瞳」を預かったアドルはガザールにとって返した。ガザールの長老は、大長老に会う条件として三つの宝珠を集めることを示してきた。アドルは残る「月の瞳」を求めてエステリアに向かった。


解説

 「ログアウト」が創刊された1992年当時でさえ、「イース」は最新のゲームではなかったのですが、にもかかわらず「ログアウト」誌上では「イース」を大きく取り上げることが多かったのでした。当時は「イース」人気がまだ絶頂にあったことを忘れてはいけませんが、まずは広報的な意味合いが強かったのではないかと思われます。
 「ログアウト」誌上ではTRPG版「イース」が発表され、そのリプレイ集も掲載されていました。また一連の小説が掲載されたのはちょうどゲーム版「イースIV」に向けて注目が集まっていた時期です。雑誌としてはTRPGの宣伝になりますし、ソフトハウスとしては前評判を盛り上げるのにもってこいだったのでしょう。大場惑氏の一連の小説化が可能となったのには、こうした背景もあったのです。

 大場惑氏の小説版で忘れてならないのは、池上明子さんのイラストです。少女漫画風の流麗なタッチで描き出されるキャラクターの数々は、多くのファンを虜にしています。ファンタジー小説では、それ目当てに本を買ってしまう人もいるほど挿絵は重要な位置を占めるのですが、その点では、この小説版は飛火野氏の「イース」シリーズよりも恵まれていました。池上さんはその後池上沙京と改名して、現在もファンタジー小説などのイラストレーターとして活動しています。

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