イブール一家(イーブル一家)

イブール一家

敵から仲間に変わるのは同じですが、物語での役どころや意味合いは相当に異なっているようです。


アルガ(ママ)

アルガ

イブール一家の頭領。兄弟とテラの母親。気っぷのいい親分肌の性格。
認めた人物にはとことん入れ込むタイプ

原案:39歳。夫が処刑されて以来、罪人の家族としてまっとうに生きることを許されず、やむなく盗賊になった。リジェにかくまわれた義理で結晶探しを引き受た際、再出発のためケフィン行きを決意。当初アドルを邪魔したが、ドーマンに陥れられたのをきっかけに和解する。ケフィンでは悪人とされたがアドルたちと協力して戦った。最後は更生を目指し、家族で新天地に渡っていった。

ゲーム:45歳。どういうわけか結晶を狙っている。ドーマンに捕らえられた仕返しのため本拠地に乗り込む。ビュイを偽物とすり替え、ドーマンを阻止した。ケフィンに渡ったがリジェに捕らえられ、ケフィン復活の生け贄にされかける。


ディオス&ノティス(グリド&ガリブ)

ディオス&ノティス
左・弟のノティス 右・兄のディオス

双子の大男兄弟。どこか間が抜けているが相当な遣い手。アルガの息子たちにしてよき相棒。

原案:グリド&ガリブ。それぞれ18歳。一家で度々アドルをだまし討ちにして結晶を奪う。ドーマンの企みが発覚してからはアドルと共闘することになった。ケフィンでは悪人と審判され、投獄されたがまんまと脱獄を果たし、ケフィン解放のため活躍する。

ゲーム:ディオス&ノティス。テラとともにアドルをだまし、追いはぎをしようとするが失敗する。沼地の洞窟ではアドルの目の前でビュイを奪い去った。一家そろってドーマンに捕らえられるが、脱出し本拠地に現れる。ケフィンでは南の塔に潜入し、ニーナを救出した。その後リジェに捕まり、ケフィン復活の生け贄にされかける。

 この面子にテラを加えた四人がイブール一家ですが、テラは既出なので略します。親子という関係は変わりないのですが、原案小説とゲームとでは名前が変わっています。原案小説では、イーブル一家で、頭領は単にママと呼ばれるだけです。息子たちはグリドとガリブでした。ゲームではイブール一家で、頭領はアルガ、息子たちはディオスとノティスと呼ばれています。ちなみに糸目で剣を持っている方が兄ディオス(グリド)で、斧が弟ノティス(ガリブ)です。

 物語前半ではアドルの敵として現れますが、中盤で和解し、後半では仲間としてともに戦うことになります。原案小説ではアドル同様ドーマンに欺かれる立場で、同じ境遇だったことが共闘する大きな理由となっています。
 原案小説では、ママは一家で堅気としてやり直すためケフィンを目指していました。結晶を集めていたのはそのためです。ところが非情にも、新天地ケフィンでも一方的に悪人と判断されてしまいます。原案小説では「正義と称して悪を切り捨てる」ケフィン王と「更生を目指しているがそれさえ許されない」一家とを対比して、大きなテーマの一つである「正義とは何か」を描いています。一家には物語上非常に重要な意味があり、単なる盗賊では終わらない役どころとなっています。
 ところがゲームでは、ケフィン到着早々宝を探しに行ってしまうので、更生を願っているとは思えません。結晶を集めればケフィンに行けることは知っていたようですが、ケフィンを狙っていた理由は明示されていません。誰かに依頼されたわけでもなく、結晶も独自に探していたようです。ゲームでは単なる盗賊に徹していまして、道化役の印象が強くなっています。

 また原案小説では、ママの夫は下っ端の役人です(小説版では鍵屋)。かつて「へまをやらかして」処刑され、それが一家が盗賊に身を貶めるきっかけとなっています。ところがゲームの続編「ナピシュテムの匣」に、アルガの別れた夫でテラの父親である海賊ラドックが登場したため、原案小説の設定は「なかったこと」になっています。イブールというのはおそらく一家の姓なのでしょうが、原案小説・ゲームともに全く触れられていません。
 ついでに、ゲームではサウスウッドで一芝居打っているテラたちを見過ごして別のマップに行った後再び戻ってくると、一息入れて仲むつまじく相談している様が見られます。

一息入れるイブール兄妹
お前らバレバレだ。


協力者

いつの間にか、登場人物の多さがシリーズの特徴となったようですが、それは本作も例外ではありません。


マーシャ

マーシャ

錬金術を継ぐ謎の美女。

原案:24歳。ケフィン出身の錬金術師。スタンの恋人。ケフィンを訪れたスタンに感化され、ケフィン改革のため立ち上がる。病死を装い地上に降り、共に戦う仲間を捜していた。アドルをケフィンへ誘い、導くことになる。最後は身を挺して賢者の石の制御を試み、ケフィンを救うことになる。物語の鍵となる人物。

ゲーム:24歳。錬金術師オーウェルの末裔。地上出身で、錬金術を受け継いでいる。スタンとも面識がある。アドルに錬金魔法を授けた。ケフィンが封印された理由を探るべくアドルと共にケフィンに行く。ケフィンでは「パルチザン」と協力して、ケフィン破壊計画に携わることに。

 マーシャはこの物語三人目のヒロインと呼んでもいいのですが、相手役ともやや違うような気がするので、ここでは協力者として採り上げています。原案小説ではアドルも多少気があったようで、年上のマーシャの魅力に圧倒される場面や、スタンと恋人同士であることを知り呆然とする場面が出てきます。
 原案小説において、マーシャの役割は「失われし古代王国」のレアに匹敵します。もちろんその正体は古代の女神ではありませんが、ケフィン最後の古代錬金術師でして、「黒真珠」のダームならぬ、「賢者の石」のジャービルを倒すべく、全編を通じてアドルを導きます。本編の最重要人物と言っても過言ではありません。
 ゲームでは物語上それほど重要な立場ではありません。地上出身に変わっており、ケフィンの実情について詳しくは知っていません。ケフィンで何が起こっているかを突き止めに行くという点で、その立場はアドルと同じです。原案小説ではケフィン破壊計画の中心として動きますが、ゲームではその役割はオーウェルが担っています。
 オーウェルやフォレスタの遠い子孫であるという設定はゲームのもので、それゆえマーシャとフォレスタはよく似ているということになっています。とはいえ、マーシャの錬金術がオーウェル流のものであることを説明する程度の意味しかなく、物語でそれが重要な意味を持つということは特にありません。

 原案小説では、マーシャはスタンの恋人ということになっています。最後にはスタンと結ばれ、ニーナと三人で暮らすことになります。ゲームでもマーシャはスタンに想いを寄せているようなのですが、そこまで深い仲であるという描写は出てきません。
 また、マーシャは原案小説ではアドルに「火球の杖」を、ゲームでは錬金魔法を授けてくれることも記述しておいた方がよいでしょう。ゲームシステム上でも重要な役です。


スタン

スタン

冒険家でニーナの父親。ケフィンを探しており、渡った後はケフィン解放のために活動していた。

原案:32歳。三年前ニーナを連れサンドリアに来る。「砂の都」を探しに行くと言い残し消息を絶つ。その間旧都の遺跡からケフィンに渡っていた。マーシャとの出会いをきっかけに、ケフィン解放運動を始めるが捕らえられ三年間牢に幽閉された。救出後はアドルとともにケフィン王やジャビルと戦った。事件収束後冒険家を引退し、ニーナとマーシャ三人で、故郷で暮らすことになった。

ゲーム:アドルの前任者として、ドーマンのために結晶を探していた。五年前廃都を調査中、メダルとニーナを発見、保護する。三年前「ルミナス」発見を経て、再び廃都を訪れケフィンに渡っていた。「運命の審判」について調査するうちケフィンの実態を知る。以来「パルチザン」のリーダーとして、オーウェルとともにケフィン救済活動を続ける。最後は無事サンドリアに生還を果たす。

 マーシャに次ぐ協力者が冒険家のスタンです。シリーズでは「イースIV」のレファンス同様、理想の冒険家や勇者として位置づけられているようです。原案小説では、ドーマンに雇われていたとか、ニーナを拾ったという記述はありません。ニーナの実の父親であるという可能性さえあります。
 物語の前半はスタンの足取りを追う形で結晶を探すこととなり、後半では協力して行動することになります。原案小説ではアドルがケフィンをさまよううちに、ケフィンの欺瞞に少しずつ気づいていき、スタンと対面するに至ってついに確信するという流れになっています。
 ゲームでは城に潜入したところで遭遇します。背後から三幹部のアビスを一刀両断するという派手な登場をするのですが、唐突な印象は否めません。また、原案小説ではケフィン旧都の遺跡にあった往復便でケフィンに向かっているのですが、ゲームの場合、結晶を集めたわけでもなく、王家のメダルを持参したわけでもないのに、どうやってケフィンに行ったのかはわかりません。


エフィ

エフィ

気だての良さが評判のフェルテの娘。

原案:17歳。たまたま助けてもらったドギにフェルテ救済を頼む。ドギに気があり、結ばれることになる。

ゲーム:16歳。フェルテに漂着したアドルを発見し救助する。フェルテの実力者ムハーバの娘。

 原案小説ではドギの相手役として、シリーズ上重要な役割を占めます。ゲームではドギが登場しなくなった分、漂着したアドルを救助することになりますが、端役にすぎません。
 漂着したアドルをヒロインの美少女が救助するというのはシリーズのお約束です。原案では「従来のヒロイン像に一番近い」とされています。ところがリリアやオルハと違い、エフィはゲームの本筋に絡んできません。もともとドギの相手役だったせいか、ドギが出ない分、その存在意義はきわめて薄くなりました。ドギと結ばれるという原案の設定も「ナピシュテムの匣」発売にともない、否定されることとなったようです。


ムハーバ(フェルテ村長)

ムハーバ

フェルテの実力者。砂漠越えの手伝いをする。

原案:フェルテ村長と呼ばれるのみで名前はない。エフィが連れてきたドギの働きぶりを見て、全幅の信頼を置く。アドルとドギが砂漠越えをする際、ドギにコンパスを貸し与える。

ゲーム:エフィの父親。行商人の元締。見た目は怖いが人はよい。砂漠で魔物に襲われていたところをアドルに救われたことを恩に着ている。アドルにサージアイを与える。

 ムハーバはアドルの砂漠越えの手伝いをします。砂漠越えに必要なアイテムを与えるところは共通しています。ゲームではエフィの父親となっていますが、原案小説にはそのような記述がないため、父親かどうかはわかりません。


ドギ

ドギ

アドルの相棒。「失われし古代王国」「セルセタの樹海」「フェルガナ冒険記」ではアドルの手助けをした。
用心棒としてフェルテ村に雇われ、村のため尽力する。

原案:25歳。「ナルムの使徒団」から助け出したエフィの求めに応じ、フェルテを砂漠化から守るべく活躍する。フェルテが砂没して自暴自棄に陥っていたが、アドルの励ましに気を取り直す。アドルがケフィンにいた頃、フェルテの難民を救うべく砂漠を動き回る。最後はフェルテの復興を見届けるべくこの地に留まり、長年の相棒アドルと別れることになる。エフィと結ばれる。

ゲーム:未登場。

 原案小説とゲーム最大の違いの一つに、ドギの存在があります。原案小説ではドギが登場し、シリーズ上重要な役割を果たします。「イースV」では「アドルの独り立ち」が最大のテーマとして掲げられていました。前作の登場人物がほとんど登場しないのはそのためですが、その中でドギだけが登場していることからも、与えられた役割の重大さはわかることでしょう。

 原案小説でのドギは、従来のような、危機に陥れば(都合よく)駆けつける「頼れる相棒」というだけの役ではありません。途中からアドルと別の目的を持って、別の行動を取ることになります。さらにその目的のため、物語の最後でアドルと別れます。
 物語の前半ではドギと協力しつつ冒険を進めますが、最初の砂漠越えの際、頼りにするつもりだったドギのフェルテでの活躍ぶりを耳にして、(結局同行してくれるのだが)アドルが一人で砂漠に向かおうとする場面が出てきます。また、ドギはケフィンに行かないため、後半では頼りにすることもできません。シリーズおなじみのドギとの関係の変化とその別れを通じて、アドルの独り立ちが描かれます。
 一方ゲームには全く登場しません。前作の人物を全く出さないことで、アドルの新しい冒険を演出しようという意図だったようですが、独り立ちというテーマが見えにくくなった感は否めません。

 ところでドギは続編「ナピシュテムの匣」に登場していますが、それにともない、本作での設定は全て「なかったこと」にされています。


ウィリー

ウィリー

冒険に憧れる少年。フォレスタ村在住。アドルを「兄貴」と呼び慕う。

原案:未登場。

ゲーム:序盤の案内役。フォレスタ村で村長の像の手入れをしている。フォレスタ洞窟を案内したり、マーシャのことをアドルに教えてくれる。最後はアドルと共に旅立とうとするが、アドルに置いて行かれる。

 ウィリーはゲームだけの登場人物です。「イースII」のタルフに匹敵する人物です。エンディングにも出てくるのですが、物語上大きな意味があるわけでもなく、神官ハダルの子孫だったタルフほど重要な役ではありません。


ロポラ

ロポラ

スタンの助手。五年前廃都の調査に従事した。

原案:未登場。

ゲーム:五年前、スタン・ツェットとともに廃都を調査していた。ニーナに頼まれフォレスタ洞窟に連れて行ったが、そこで魔物に襲われ大怪我を負う。

 ロポラもゲームだけの登場人物です。ここで述べたような過去のある人物なのですが、ゲーム中それが大きな意味をもつでもなく、端役となっています。


ガラム(遺跡の老人)

ガラム 原案版ガラム

アドルにナルム近辺の歴史を伝える。

原案:遺跡の老人。アドルにナルム王朝とケフィンの歴史を教える。セーベの遺跡から脱出したアドルとテラを保護した。

ゲーム:ガラム。ラムゼンに住むセーベの民の末裔。一家の言い伝えに従い、「アグニ」を手にする赤毛の剣士を待っていた。

 端役ではあるのですが、ガラムも紹介しておきます。
 原案小説に現れる遺跡の老人は、古代史研究家でして「イースIV」のガゾックのような人物です。ナルム王朝の歴史の語り部として、アドルに古代史を教えてくれます。古代史におけるナルム王朝対ケフィンの構図は、ドーマンが錬金術を狙う理由として、原案小説の前半を支える枠組みとなっています。
 ゲームでは語り部としての役割は薄いのですが、そのかわり、遺跡での冒険の後見人といった役どころになっています。ガラムはセーベの民の末裔なのですが、セーベ対ケフィンの構図がゲームに反映されているということはありません。原案小説では頻繁に登場するナルムという言葉も、ゲームではほとんど現れません。
 ついでに、ゲームに登場するガラムの娘はマサラという名前ですが、親子そろって香辛料の名前をもじって付けただろうことは容易に予測できます。


ジャン

スタンの賛同者。スタンと共にケフィンの体制に反抗し、アドルの手引きをする。

原案:名無し。ケフィンを探るアドルと接触し、スタン救出を依頼した。

ゲーム:ジャン。「パルチザン」のメンバー。審判の館に入ろうとするアドルを引き留め、「パルチザン」アジトに招き入れた。

 原案では単に「謎の男」とのみ呼ばれていますが、ゲームでのジャンがそれに匹敵します。スタンをリーダーに仰ぎ、地下組織でケフィン解放のため活動していることは同じで、その役割はアドルと地下組織の橋渡しです。とはいえそれ以上の役でもありません。
 ゲームでは地下組織に「パルチザン」という名前があります。もともと「パルチザン」とはフランス語でして、民衆による非正規軍のことを指します。

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