投稿ゲーム再発見「ミッドナイトチェイス」

「ミッドナイトチェイス」タイトル画面 ごみが湿って火が点かない! 「ミッドナイトチェイス」ゲームオーバー画面

キミの使命

 おはよう○○君。その男はX社社長だ。X社は近年コンピューター分野で大躍進を遂げているが、その裏で某国と秘密取引をしており、莫大な見返りと引き替えに、国際条約で禁止された新兵器開発にかかわる重要技術を横流ししている。内通者の情報により、その証拠となる重要機密書類がX社社長邸に保管されており、さらに48時間後、某国に引き渡されることが判明した。
 そこで今回の君の使命だが、X社社長邸に潜入し、引き渡し前にその書類を確保することにある。
 例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する……

(あらすじを元に荒井が勝手に創作)


「ミッドナイトチェイス」とは

本当のストーリー

 キミはしがない産業スパイ。今日も今日とてさる大会社の社長宅へ侵入しなきゃなりません。いけないこととはわかっていながら、いちど始めたこの稼業。途中で投げたら、男がすたるってもんです。さあて、いちょいくか。

(ログイン1986年3月号より)

 アスキー発行のパソコン情報誌「ログイン」は、80年代のパソコン誌でも、特に人気の高い雑誌でした。コンピューターゲームはもちろん、最新アミューズメントや注目科学技術等の紹介、「ヤマログ」に代表されるナンセンス投稿企画等々、その内容は日本のコンピューター文化の成立に大きな影響を与えています。そしてもちろん、読者投稿プログラムも掲載していたのですが、その内容は数あるパソコン雑誌の中でも相当に高水準なもので、市販ソフトに引けを取らない作品が掲載されることもしばしばでした。
 今回紹介する「ミッドナイトチェイス」は、その「ログイン」1986年3月号に掲載されたMSX用アドベンチャーゲームです。プレイヤーは産業スパイとなり、某社社長の屋敷より重要機密書類を盗みだすという内容で、本作ではその前半、屋敷に忍び込むまでが描かれます。
 制作者の念頭にはAppleII用AVG「King's Quest」があったようです。「リアルタイムアドベンチャーゲーム」を名乗るとおり、本作はアクションゲーム風のゲームシステムを採用しています。全ての操作はカーソルキー&スペースキーで可能で、アクションゲームよろしくフィールド上を動きまわり、コマンドを試すことができまして、お手軽かつ快適に遊べるのが魅力となっています。さらに操作に応じて大きなキャラクターがスムーズに動くのは見応え満点で、ログイン編集部でも高く評価されました。随所にはリアルタイムゲームならではの謎や仕掛けもいくつか盛り込まれ、実によく考えて作られた印象を受けます。

 「ポートピア連続殺人事件」「デゼニランド」「惑星メフィウス」等々、当時のAVGは、一枚絵で示される状況を判断しながら、取るべき行動をキーボードから文字で入力するという、コマンド入力式が主流でした。その中でアクションゲーム風のゲームシステムで進行するリアルタイムアドベンチャーゲームという存在は、ひときわ斬新なものがありました。日本ではARPGが出現したためか、その後あまり発展しなかったジャンルですが、海外では先述の「King's Quest」「マニアックマンション」「モンキーアイランド」等々、数々の名作が生まれています。個人制作の投稿プログラムでありながら、この当時に相当な水準のリアルタイムアドベンチャーゲームを、しかもMSX上で実現したということは、非常に野心的な試みだったと言えるでしょう。

 本作はボリュームが少ないのが玉に瑕で、解法を知っていれば5分程度で解けます。編集部でも「もっと長けりゃグランプリ間違いなし」と評されており、これに対する反省が、続編「ミッドナイトチェイスパート2」へと繋がっていきます。


作品概要

「ミッドナイトチェイス」 アスキー「ログイン」1986年3月号掲載 同号ソフトウェアコンテスト2nd PRIZE
対応機種:MSXシリーズ(RAM32KB以上) 作・高原保法(たかはらやすのり)
ジャンル:リアルタイムAVG
プログラム構成:BASICリスト×2,マシン語リスト×1
メディア:テープ専用

謝辞・プログラムを提供してくださったTOSHIさんに、この場を借りてお礼申しあげます。

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