古代セルセタ史解明

大長老 光の伝承
SFC版PCE版

SFC:デュレンによれば大長老は古代史に通じており、異変はそこに収束するのではないかという。三つの瞳を集めたアドルはついに大長老と対面した。そこで古代セルセタ文明の大いなる力が異変の原因であると告げられる。かつてこの文明を築いた有翼人は人類の支配を試みたが、レファンスとその仲間五忠臣により打ち破られた。有翼人は古代都市を樹海の底に沈め、文明を動かす三枚の「太陽の仮面」と三つの「瞳」を人類に明け渡した。文明の復活を恐れたレファンスは、レリーフに警句を残した。エルディール達は文明の復活を狙っていた。事態が差し迫った今、再びレファンスの力を得て文明を封印しなければならないと大長老は言った。

PCE:これまでアドルは各地でラメス・エンゾ・アリアこと三人の賢者に会い、太陽の仮面にまつわる古代セルセタの伝承を見てきた。かつてセルセタは有翼人がもたらした「太陽の仮面」の力で栄えていた。そこに殺戮王アレムが現れ圧政を敷いたが、レファンスとその仲間五忠臣がアレムを打ち倒しセルセタ王朝を開いた。有翼人の祝福のもと、太陽の仮面とそれを制御する「月の仮面」のおかげでセルセタ王朝は栄えたが、ジーク=ファクトの出現で平穏は破られ、太陽の仮面は古代都市と共に樹海の底に沈められてしまった。

 物語の背景にセルセタとイースの古代史があります。ここで一度古代セルセタ史に触れておきましょう。ゲームでは中盤に解明されます。有翼人、太陽の仮面、レファンス、五忠臣とキーワードは共通して出てきますが、あらましは全然違っています。
 SFC版ではレファンスと五忠臣は有翼人と戦ったことになっていますが、PCE版では殺戮王アレムという圧政者と戦ったことになっています。このアレム王はPCE版のみの登場人物で、SFC版には名前さえ出てきません。有翼人もSFC版では人類と対立した存在ですが、PCE版では人類を導いた存在として描かれています。
 エルディール達が太陽の仮面復活を狙っていることは、古代史解明の過程で明らかになりますが、そのために必要なアイテムが古代セルセタ王朝から古代イース王国に渡っているのはそれぞれ同じです。


イース古代史

ルタとの再会 女神との再会
SFC版PCE版

SFC:ルタ=ジェンマはイース古代史の研究を進めていた。再びランスの村を訪れたアドルの前に現れ、イース建国は古代セルセタと関係があると語った。エステリアにある女神像は二柱の女神ではなく、一人の有翼の女神を象ったものだった。そのモデルはセルセタからエステリアに渡ってきた有翼人であり、その証拠としてセルセタに由来する月の瞳がエステリアにあり、しかも現在リリアが持っていることを突き止とめていた。

PCE:アドルはジェバにセルセタで拾った悲しみの石版を解読してもらった。そこには有翼人国家エルディーン滅亡に際し、有翼人が二人の赤子を物言う石と共にドゥアール海に流したと書かれてあった。その後廃坑でフィーナとレアに再会し、この二人の赤子こそが二柱の女神で、黒真珠こと物言う石の力でイースを作ったことが判明する。古代セルセタ王朝を滅ぼしたジーク=ファクトは700年前月の仮面と共にイースに渡っていた。ダルク=ファクトは月の仮面の力で700年間生きながらえたジークその人だった。ラーバの手紙により、ジークが古代イース王国滅亡を招いたことも判明する。

 次はイース古代史です。こちらもゲーム中盤に明らかになります。イース古代史の解明は「イースIV」の大きな売りの一つですが、特にPCE版は『イースの黎明』という副題を掲げているだけあって、重要イベントとして力を入れています。SFC版でも古代史の解明は重要なのですが、その実イベントそのものは非常にあっさりしたもので、イース古代史の解説はルタ=ジェンマとの立ち話で終わってしまいます。
 イース建国の源に有翼人の文明があるのは同じです。PCE版に現れるエルディーンとは、有翼人がセルセタに渡る前に作っていた古代国家ですが、自然災害で一夜にして滅亡し、その遺民が太陽の仮面と共にセルセタに渡ったということになっています。イースの女神ことフィーナとレアもエルディーンの遺民のようです。
 SFC版では、有翼人は元々セルセタにいたことになってまして、その一人が月の瞳とともにエステリアに渡り、イースの源となったとされています。フィーナとレアはその有翼人の血を引いているようです。

 ところで、SFC版で月の瞳は有翼人敗北の際、レファンスに明け渡されたはずなのですが、どうしてそんなものを再び有翼人が持ち出すことができたのでしょうか? 持ち出せたとしても、本来女神が持つべきものを、なぜリリアが持っていたのでしょう? PCE版でもアレムが台頭している間有翼人は何をやっていたのでしょう? IVのストーリーには疑問がありまして、その最たるものがPCE版の「ジーク=ファクト」なんですが、話すと長いので、解説は後に回します。


レファンス公との対面

レファンス廟 エル・ドラン
SFC版PCE版

SFC:大長老に会ったアドルは、復活しつつある古代文明の力を封じるためにレファンスの力が必要であることを知る。そのためにはレファンスが使っていた英雄の剣が必要である。炎の山で剣を手に入れたアドルはレファンス廟でレファンスの魂と対面した。レファンスは古代文明を完全に破壊するために、黄金の城こと古代都市を復活させるように命じ、英雄の剣に力を与えるのだった。

PCE:五忠臣の「試練」はレファンスに会う資格を試すものだった。数々の妨害に会い、グルーダに月の仮面を奪われもしたが、アドルは残るラディー、トリエの試練をかいくぐり、レファンス廟でついにレファンスの魂と対面する。レファンスは、闇の一族が月の仮面の力で太陽の仮面を復活させつつあることを危惧し、アドルに復活を阻止するように命じた。

 古代文明の力を封じるために、かつての英雄の協力を得るのは同じです。前半の瞳集めとか五忠臣の「試練」といったイベントは全てレファンスに会うためで、ここに収束します。

スラノの試練
PCE版「試練」

 説明を後回しにしていたPCE版の「試練」ですが、五忠臣操る強敵と戦って、その司る魔法の力を獲得するというのがそのあらましです。魔法の力で太陽の仮面復活を阻止せよということです。「イースII」のイースの本返還イベントみたいなものでして、PCE版はこれがゲーム中大きなイベントとなっています。


古代都市復活

古代都市復活 浮上する古代都市
SFC版PCE版

SFC:レファンスの指示によりアドルは古代都市を復活させた。そこでは闇の一族が待ちうけていた。ガディスを撃破した後、アドルは五忠臣の魂と対面し、その加護を得る。古代都市の奥に進むとバミーが現れ、リリアと引き替えに三つの瞳を要求してきた。瞳を渡すも裏切られ、リリアは太陽の仮面復活の生け贄として殺されてしまった。そんなアドルの前にリーザが現れた。彼女は輝きの首飾りを渡すと共に、エルディールを悪に染めた闇の一族を倒してほしいとアドルに懇願した。首飾りの力でリリアを蘇生させたアドルは、古代都市に乗り込んできたドギやカーナ、レムノスの協力を得て古代都市の最深部を目指した。

PCE:湖畔の遺跡ではリーザを生け贄に、エルディールが太陽の仮面復活の儀式を執り行っていた。アドルは阻止に向かったが、バミー捨て身の抵抗に遭い、古代都市と共に復活を許してしまった。まさにリーザが殺されようとしているところ、グルーダの裏切りで代わりにエルディールが殺されてしまう。目の前でエルディールを失ったリーザは、彼を救えなかったことを悲嘆した。樹海に現れた古代都市に突入しドギと合流すると、黄金の城を狙うレオ率いるロムン部隊が現れた。しかし罠にかかって次々に兵を失い、最後にはレオも自滅してしまう。

 太陽の仮面復活には有翼人の力と生け贄が必要となります。これはSFC版もPCE版も同じです。ところがPCE版では生け贄としてエルディールが殺されてしまいます。SFC版ではすぐに復活できるものの、かわりにリリアが殺されます。両機種最大の違いと言っていいかも知れません。ちなみにバミーに瞳を渡さないと即リリアを殺されてゲームオーバーになります。いずれにせよ殺されて、しかもすぐ復活できるのなら意味がないような気もするのですが。

リリア蘇生
SFC版・リリア蘇生

 SFC版ではリーザとカーナ達も古代都市に乗り込んできます。SFC版は3人のヒロインとも積極的に物語に絡んでくるため、強く印象に残ります。
 PCE版ではかわりに黄金の城を狙っているロムン部隊が現れます。SFC版のロムン部隊はどうしたのかというと、実はとっくに殲滅されています。リリアを追って聖域の城に突入する際、コモドに攻め込んでくるのですが、アドルと決闘して破れています。


太陽の仮面

三枚の仮面 太陽の仮面と月の仮面
SFC版PCE版

SFC:三枚ある。太陽・大地・月三つの瞳とともに古代都市最深部の祭壇に供えることで台座を形成し、大いなる力を呼び出すことができる。大いなる力の正体は黒真珠を生み出す強大な黒真珠の力とされているが定かではない。仮面そのものは三枚ともバラバラに、各地の遺跡に安置されていた。

PCE:一枚のみ。月の仮面によって制御される。古代の力の正体は太陽の仮面そのものの力のことで、黒真珠=物言う石はその力を取り出すための道具。太陽の仮面は太陽の神殿に安置されている。古代都市と共に地下深くに封印されていた。月の仮面はエステリアに持ち出され、マスクオブアイズとして今に伝わっている。

 イベントではありませんが、太陽の仮面についても触れておきます。古代セルセタ文明の力の源であることはどちらも同じですが、その枚数やあらましは両機種でずいぶん異なっています。SFC版では各地の神殿に安置されていまして、物語が佳境に入ると闇の一族が持っていったのか神殿から姿を消します。PCE版では古代都市の最深部に置いてあります。
 ちなみに「イースVI」で追加された設定では、黒真珠や仮面の正体は魔法金属「エメラス」であるということにされていますが、「イースIV」当時そうした設定はなかったので、ここではVIの設定はあえて無視しています。


グルーダとの対決

グルーダの目的 グルーダとの対決
SFC版PCE版

SFC:レファンスの導きで、アドルは最深部を目指しイリスの塔を登り、バミーを撃破して黄金の神殿に突した。そこでグルーダは力の復活が近いことを告げ、自らの目的と古代文明の力の正体を明かした。グルーダは古代の力こと強大な黒真珠の力で世界征服を企んでおり、エルディールは力の復活のために利用しているに過ぎないという。対決の末、アドルはグルーダを撃破した。

PCE:負傷したドギと別れたアドルは、古代都市で再びレファンスと対面し、殺戮王アレムの復活が近いことを知らされる。闇の一族の狙いは一族の王アレムの復活で、エルディールはその鍵を握る太陽の仮面復活のため利用していたに過ぎなかった。太陽の仮面のある最深部太陽の神殿に侵入するため、アドルはザンリア・ルネス二つの塔を攻略した。ルネスの塔最上階でグルーダを撃破し、アドルは月の仮面とクレリアソードを取り戻した。クレリアの武具を取り戻したアドルに、レファンスは太陽の仮面に対抗しうる魔法「エル・ドラン」を授けた。

 古代都市最深部に行く前に、闇の一族と決着を付けるのは同じです。闇の一族がその目的のためにエルディールを利用しているのも同じですが、SFC版では闇の一族の方が先に滅ぼされるのに対し、PCE版では一応目的を達成してしまいます。
 セルセタ古代文明の力の正体が、「イース」にも出てきた黒真珠に関連しているのは同じですが、その定義は違っています。SFC版は黒真珠の力、強大な黒真珠を生み出す力と語られてはいますが、それが具体的にどういうものかはよく判りません。PCE版は太陽の仮面の力で、黒真珠こと物言う石は太陽の仮面の力を引き出すため、仮面によって作られたものとなっています。このあたりはPCE版の方がすっきりしてわかりやすくなっています。
 ところでPCE版ではクレリアソードはグルーダの手に渡っています。PCE版ではアドルは最初からクレリアの武具を持っていますが、序盤でレオに没収されます。エステリア捜索で闇の一族がレオと手を組んだ際、レオが闇の一族に没収したクレリアの武具を与えています。


最終決戦

エルディール戦 アレムとの決戦
SFC版PCE版

SFC:グルーダを征したアドルは、黄金の神殿最深部で古代の力を手にしたエルディールと対決する。エルディールは様々な攻撃でアドルを苦しめたが、レファンスと五忠臣の加護を得たアドルの前についに撃破された。戦いが終わると使命を終えた英雄の剣は砕け散った。

PCE:魔法「エル・ドラン」の力を得たアドルは、五忠臣の力が注ぎ込まれた月の仮面と共に太陽の神殿最深部に向かい、そこで復活したアレムと対決する。アレムは太陽の仮面の力を借り、しぶとく攻撃してきたが、ついにはレファンスと五忠臣の力を得たアドルの前に太陽の仮面もろとも葬り去られる。レファンスと五忠臣は、太陽の仮面と共に崩壊を始めた古代都市からアドルを脱出させると、古代都市と共に消え去った。

 レファンスと五忠臣の加護を得て最後の敵と戦うところと、戦いが終わるとレファンスと五忠臣が使命を終えて消え去るところは同じですが、最後に戦う相手はまるで違います。両機種の物語の違いをもっとも端的に表しています。


エピローグ

エルディールの告白 沈みゆく古代都市を眺める三人
SFC版PCE版

SFC:アドルに破れたエルディールは、いまわの際に、闇の一族の誘いに乗り古代文明を復活させたことが、大いなる祖先の栄光に憧れたゆえの過ちであったことを認め、そのためにリーザを始め多くの人々に迷惑をかけたことを謝罪した。そこに現れたリーザに、一人でも強く生きるようにと別れを告げる。そしてアドル達を脱出させた後、自分と共に古代文明を樹海の底に永遠に沈めた。古代セルセタの大いなる力が失われた現在、人々は未来に向け新しい一歩を踏み出そうとしていた。リーザは強く生きていくことをエルディールに誓った。そしてアドルもドギと共に新しい冒険へと旅立つのだった。

PCE:カーナ、リーザ、ドギはありし日の丘から古代都市が再び樹海に沈みゆく様を目の当たりにし、古代セルセタの大いなる力が永遠に失われたことを実感していた。過去の呪縛が失われた現在、セルセタは新しい未来に向けて歩み出そうとしていた。そしてアドルもドギと共に新しい冒険へと旅立つのだった。

 エピローグを紹介するのもどうかとは思いましたが、知ってる人知りたい人しか読んでないと前提して紹介しておきます。
 要約の都合でここには出てませんが、SFC版ではリーザがエルディールに殉死しようとします。結局カーナとエルディールに止められますが、エルディールへの想いのたけがよく現れている名場面です。

リーザ絶唱 デュレンの決意
SFC版PCE版

 PCE版で特筆すべきなのはデュレンです。PCE版にて、実はデュレンは元闇の一族で、そのことは聖域の城のイベントで判明しているのですが、エンディングではそれゆえ闇の一族の気持ちを察することを話します。
 全体を通して見ると「イースIV」が古代セルセタ文明の最期を描いた話であることは共通していますが、SFC版は最後の有翼人エルディールの最期を描いており、PCE版は闇の一族の滅亡を描いた話となっています。


全体の構成

SFC:二部構成。前半は三つの瞳を集めて大長老に会うのが目的。後半は復活した古代都市を破壊するのが目的。

PCE:三部構成。序盤は五忠臣の試練、中盤は古代史の解明、終盤は太陽の仮面復活を中心に進む。

 参考までに両機種のゲームの構成も紹介しておきます。

 長々と話してきましたが、機種によってだいぶ味付けが違うことは分かっていただけたと思います。SFC版はリーザとエルディールの関係が強く打ち出されているのに対し、PCE版は闇の一族がとにかく目立つ他、古代史解明に力が入っています。
 原案が同じだけあって、登場人物やキーワード、闇の一族が古代セルセタ文明の力を狙っていること、有翼人が文明復活の鍵を握っていること、冒険を通じてセルセタとイースの古代史が明らかにされるといった概要こそ共通していますが、それがどう使われているかは全く異なっています。ストーリーは今回検証しましたので、次回は登場人物を比較してみましょう。

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