惑星は― 銀河のはるか彼方、流星群に閉ざされた宇宙にある。
時は― 未来の行きつく所。超近代文明は、核戦争によって死滅した。
男は― 宇宙の迷い子、流星群に突入し、惑星に不時着した。
惑星には、息を飲むほど壮麗な塔が立ちならび、トンネルと洞窟によって作られた悪夢のような迷路。
西暦2000年をはるかに進化した文明の跡。
”無”の支配する世界に訪れた惑星外の男は、死滅した超近代文明に打ち勝てるか!
「アラモ」のパッケージ。この美少年が主人公らしい。隣のガマパックンはフロッギー。たぶん。
「アラモ」は、1986年にザインソフトから発売されたMSX用ARPGです。制作は「トリトーン」のMSX移植を担当した楫やすゆき氏が担当しています。同氏はザインソフト内で「歩くMSX開発室」の異名を取っていたそうで、MSX版「トリトーン」同様、MSXの性能を存分に活かした作品に仕上がっています。
本作はクォータービュー(アイソメトリックビュー)式による立体表現を最大の特徴としています。ハード性能が非力でポリゴンが一般化する前の時代、ソフトハウス各社は様々な手法で立体表現に挑んだものですが、クォータービュー式はそうした時代から育まれてきた技法の一つです。
クォータービュー式とは、ゲーム画面を等角投影法で構成して立体感を出す技法です。「ザクソン」「Qバート」がその嚆矢と考えられており、以降様々な作品で採用されています。そしてMSXでもいくつかのゲームが作られました。
「アラモ」はその中の一本ということになります。奥行きのある表現や高低差の概念はクォータービュー式ならではのもので、立体的で複雑なマップを実現しています。それだけではなくスクロールや重ね合わせ、疑似透過表示等々も実装し、詰め込まれた技術力は相当に高いものがあります。
一方、クォータービュー式のアクションゲームはルールや操作が繁雑になりやすく、それゆえ玄人向けになる嫌いがあります。ところが「アラモ」の場合は、見た目によらずゲームシステムは素直なものになっています。
本作は順当にキャラクターを鍛え、アイテムを集めていけば先が見えてくる作りです。敵を倒してレベルを上げたりアイテムを集めることで成長し、成長するほど生存率が上がり行ける範囲も広がっていくというARPGならではの長所を備えており、それゆえ遊びやすくなっています。理不尽な謎はほとんどなく、当時のゲームとしてはかなり解きやすい部類に入るでしょう。このようにシンプルで遊びやすいところも、「アラモ」の大きな特徴です。
先行する「トリトーン」があまりに有名なおかげか、MSX専用だったためか、「アラモ」の知名度は、「トリトーン」ほど高くありません。しかしその出来の良さは「トリトーン」に決して引けを取りません。「アラモ」は知る人ぞ知る名作、隠れた傑作の称号にふさわしい作品と言えるでしょう。
この記事を「アラモ」攻略記事の先駆けである、webサイト「MSX3」制作者の楢村匠さんに捧げます。