その昔、ある1人の男が恐ろしいダンジョンをぬけだした。その者は勇者ラントと呼ばれ、人々の祝福を受けたが時の流れは恐ろしく、人々はいつしかそのことを忘れていった。ダンジョンはあれはて、モンスターの住みかとなった。何人もの戦士が挑んでいったが帰る者はいなかった。そして今また1人新たな戦士が挑もうとしている。それはまぎれもなくあなたなのである。
(マイコンBASICマガジン1988年3月号より)
「DUNGEON II」は、前回紹介した「DUNGEON」の続編です。前作同様MSX用のRPGで、ベーマガ1988年3月号に掲載されていますが、前作の作者菊池純氏とは別の人物である、田中政行氏が作っています。
作者によれば「DUNGEON」と同じなのはマップ展開ルーチンとデータ書き込みルーチンのみで、文字フォント書き換え処理をまた別のプログラムから流用した以外は、全てオリジナルの作品となっています。続編とは銘打っていますが、ストーリーは作者による後付け設定で、ゲーム内容も相当に異なっていますから、実質的に作者のオリジナル作品と考えてよいでしょう。
「DUNGEON」が手軽にプレイできるRPGだったのに対し、「II」は装備品を買い物できる店が設けられたり、敵やアイテム、属性値が増えたりと、より本格的なRPGとして味付けされています。特にレベルや経験値が導入され、戦闘が一変したことが、前作との一番の違いでしょう。よく言えばオーソドックス、悪く言えばよくあるRPGとして仕上がっていますが、要所要所に設けられたボス敵との戦闘や謎解きが、単調になりがちな展開を救っています。
プログラムリストはオールBASIC300行ほどで、ベーマガとしては長い部類に入ります。製作途中でさまざまなハプニングがあったようで、今ひとつ詰め切れていない部分も散見されますが、力作であることに違いはありません。
本作は基本的に、「DUNGEON」のマップ展開ルーチンを流用した別の作品です。おそらく作者は「DUNGEON」を遊んで、「この処理を使えばこんなゲームが作れるはず」「自分だったらこうするのに」「こうしたらもっと面白くなるのでは?」等々のことを考えて、この作品を作ったのでしょう。
当時のプログラミングが身近だった時代、他人の作ったプログラムを入力したり読んだりしてその技法を「盗み」、自分の作品に採り入れるということはあたりまえの行為でした。そしてそれは、何より格好のプログラミングの勉強となったのです。
「DUNGEON II」 電波新聞社「マイコンBASICマガジン」1988年3月号掲載
対応機種:MSXシリーズ(RAM32KB以上) 作・田中政行
ジャンル:RPG
プログラム構成:BASICリスト×1
メディア:ディスク・テープ