MSX2版ヒント集。手打ちのワープロ原稿をコピーしたとおぼしき簡素なもの。
「リセットスイッチ」の倍角文字が時代を感じさせる。
荒井が所有しているMSX2版「太陽の神殿」は、90年代にソフマップで買った中古のものです。そのパッケージに、前の所有者さんが取り寄せたのか、たまたま当時のヒント集も同梱されていました。
ヒント集とは、市販PCゲームの手がかりや解法等を説明したレジュメです。80年代中頃まで、コンピューターゲームは自力で解けないほど難しいことが当たり前でした。そのため解法には一定の需要があり、当時、ヒント集なるものが販売されていたのです。
ヒント集はたいがいパソコン雑誌等に広告が載っていて、欲しいゲームのものを通販で注文するという形式で販売されていました。「攻略本」が一般化する以前のことです。
ともあれこのヒント集がわりと有用なので、せっかくだからここで一部を紹介しときます。それとついでにMSX2版の裏技や他機種版との違いにも触れておきます。なお、手詰まりになる局面は他にも多数存在しますのであしからず。
(以下の記事はゲーム内容の解法に関する情報を扱っています。自力で解きたい方はクリアするまで閲覧しないことを勧めます。)
Q)ゲームを始めて、まだ、2,30分なんですけど、全然ゲームが進みません。球戯場に入って石の歯止めを取ったら、いきなり壁が降りてきました。次にどうしたらいいんですか?
A)その先にある青いブロックを取りましたか? 取ってない? もう迷うことはありません。今すぐリセットスイッチを押してください。
Q)カスティーリョって財宝の山ですネ! いろいろなアイテムを見つけました。次に南の泉に行って黄金の鏡を洗っていたんですけど,その時、何か泉に落としてしまったみたいなんです。どうやったら取り返せますか?
A)あなたは欲張りですね。いっぺんに、いろいろなアイテムを取るから、落とし物をするんです。人間謙虚でなければいけません。リセットスイッチを押しましょう。
Q)神殿跡って、どうしてあんなわかりづらい所にあるんですか? 見つけるのにスゴイ苦労しました。ところで、この神殿で何が手に入るんですか? 香を焚いたかって? もちろん! ええ、BGMはかわりましたよ。すてきな音楽ですね。でも、3つとも香を焚いたのに何も見つかりません! 何か謎があるんでしょ! 教えて下さい。
A)残念ですね。香を焚いたら壁を見に行くんです。この壁には重大な謎が隠されているんです。この謎がわからなければ、ゲームを解くのは不可能です。リセットスイッチを押すことをお勧めします。ところで、神殿跡って本当にわかりずらい所にありますね。カラコルの遙か南西のどこかにありますよ。
Q)球戯場で青いブロックを見つけて取りました。そしたら何と、小部屋があるではありませんか! 恐る恐る中に入ると・・・。銀の鍵を見つけました! ヤッターと思って鍵を取ると・・・。 ナメとんのかワレ! 扉が閉もうとるヤンケ! ハヨ出さんかい!!
A)お怒りもっともです。脱出する方法があればお教えするんですが・・・。もうリセットスイッチを押す以外方法はありません。
Q)カラコルには、2階があるんですね。台座をXXしたら、階段が現れ2階に上れました。でも、その後どうしたらよいかわかりません。教えて下さい。
A)簡単です。金の玉をXXに置いて・・・、え!?金の玉を持っていないんですか? では1階に降りて台座を元に戻して・・・。もどらない!? リセットスイッチを押せば元に戻りますよ。
Q)ある部屋で、わたくしと同じような、高貴な女性のご遺骸を見つけたのでございます。ご遺骸には何処からか一条の光がさしこみ、あたかも天井の神様が、その御方を見守ってるかのようでございました。さぞ美しい御方なのだろうと思い、お顔を拝見致しましたところ、仮面をかぶっておいででございました。仮面を取りますと・・・。入口が閉まり出口が見つかりません。私はこれから先、どうしたらよいのでございましょうか。
A)一条の光は、あなたがおっしゃるように神様の光なのです。ちゃんとXXのXを使いましたか? いきなり顔を見ようとするから、天罰が下ったのです。神様は怒っています。リセットスイッチを押せばお怒りもとけるでしょう。
Q)僕は、ハッキシ言って天才だと思う。数々の謎を解き、太陽の鍵を見つけるのに、あと一歩というところまで迫った(と思う)。ところで、白いブロックを見つけて取ったんだけど、天才の僕にもこのアイテムの使い方だけはどうしてもわからない。くやしいけど教えてくれ。
A)持っていること自体間違いなのだリセットスイッチを押して下さい。
フィールドマップ上の各遺跡入口のカーソルが点滅している状態で次のように入力すると、入力内容に応じた隠しコマンドが使える。
1:RETURNキーを押す(成功するとピッと音が鳴る)。
2:かなキーを押す。
3:以下のように入力後、RETURNキーを押す(成功するとピッと音が鳴る)。
・「つっち」...移動スピード高速化
・「ゆーたん」...障害物を無視して移動可
移植にあたりMSX2版はオリジナルからいくつかの改変がされていることは、これまでたびたび触れたとおりである。ここではMSX2版の主な変更点をまとめておく。
MSX2版はグラフィックの描き込みが全体的に簡略化されている。画面数こそ88版とほぼ同等のものを実現しているものの、精緻さでは88版の方に軍配が上がる。MSX2版は当時では大容量の2メガビット(=256Kバイト)ROMカートリッジを採用しているが、1枚360Kバイトの2Dフロッピーディスク2枚で供給された88版に比べれはかなり少ない。グラフィックの書き直しは機種によるグラフィック性能の違いはもちろん、容量差にもよる部分が大きかったものとおもわれる。
88版やX1版のタイトル画面では、カメラがパンしてスクロールしながら遺跡一帯が表示されるという演出があるのだが、残念ながらMSX2版では固定画面のままとなっている。
ついでにMSX2版では、見られる壁画が一つ減っている。省略された壁画の内容は「ある状態で壁を見ると幻覚が見られる」というもの。ヒントとしてあまり意味がないので削られたのだろう。
88版のフィールドマップは15x15の225画面と広大なものだったが、MSX2版は6x6の36画面となった。比較して約6分の1の狭さである。ただし88版のマップの大半は何もなく無駄に広いだけだった。遊びやすさと容量節約の観点からも、縮小は適切な判断だったとおもう。
なお、後年発売されたセガサターン用「ファルコムクラシックス2」収録のリメイク版も、88版に比べてマップはかなり縮小されている。
88版では、移動速度こそ著しく落ちるものの、密林の中も歩けるようになっている。しかしMSX2版では、密林は完全な障害物となり、藪こぎができなくなっている。
MSX2版には、88版に存在したアイテムが一部登場しない。かわりに88版にはないアイテムが登場している。具体的には88版では重要なヒントが得られる「スクロール」がMSX2版にはない(そのかわり、同等のヒントが得られるようになってはいる)。対して「赤いブロック」はMSX2版のみのアイテムである。
マイナーチェンジされたものもある。88版ではコパルは3個使えるが、MSX2版では2個だけになった。そのままで使用できた太陽の胸飾りも、MSX2版では一手間をかけないと機能しなくなっている。首長のツボと石片のカメの中身は空になった。隠し場所が変わったものもいくつか存在する。
そして重要なのは、鉄の小鍵と銀の鍵の使う場所が入れ替わったことだろう。鉄の小鍵はあの大きさだからこそ、あそこで使う意味があるのだが…
本作では時間を気にしなければならない謎解きが要所要所で現れる。MSX2版では、あるアイテムを使用すると、時間が常に画面上に表示されるようになる。88版では時間を確かめたいときは、いちいちアイコンから指定してアイテムを使用する必要があったが、その面倒がなくなった。しかも画面上の目立つところに表示されているので、一目で非常にわかりやすい。後のセガサターン版でも時間は常時表示されるのだが、表示が小さいのがネックであった。これは密かにMSX2版の特に優れた改良点と言って良いだろう。
なお、88版では時間は「月」の状態として表示されるが、MSX2版では「太陽」の状態で表示される。実質同じなので、この差を意識する必要はあまりないだろう。
MSX2版は、カラコルが2階建てになった。2階でやることが増えた分、謎の解き方やアイテムのありかが一部変わった。基本こそ同じでも、88版の解法が通用しない部分でもあるので、MSX2版のプレイヤーは迷うことになる(泣)。
カラコルの他、終盤の球戯場も、MSX2版オリジナルの謎解きが多い。
どういうわけか、MSX2版では中盤から終盤にかけての展開が入れ替わっている箇所がある。具体的にはいけにえの泉から霊廟に行く場面と、高僧の墓から球戯場の銀の鍵の間に行く場面。また、太陽の神殿前の「無限回廊」の罠が、銀の鍵の場面に移転している。
88版では真の高僧と対面することで「高僧の墓」の意味が判明する。また、「無限回廊」は太陽の神殿に至る最後の難関であり、クライマックスに向けて盛り上げるための仕掛けとして機能していた。どちらも物語上、非常に重要な展開だ。にもかかわらず、なぜMSX2版では骨抜きにするような変更をしたのだろうと疑問が残る。
MSX2版の結末は、太陽の鍵を手に入れて外に出ると、タイムスリップして過去のマヤ文明に行ってしまうというものになっている。しかし88版では、分析の結果、太陽の鍵が国家最高機密となったと語られる。
MSX2版の結末はユニークであるが、その後のことは一切語られない。投げっぱなしである意味バッドエンドであるような印象も受ける。初めてこの結末を見たときは、マルチエンディングで、最高機密の真のエンディングがあるのでないかとさえおもった。
ちなみに後続のコンパイルによるファミコン版では、MSX2版の結末が採用されている。
概してMSX2版は、優れた改良点もあるが、それ以上に強いて手を加える意義や必然性が感じられない変更が目立つ。それは作品の良ささえ損なうもので、あまりよい移植ではないとおもう。移植に際して、ZAPは「オリジナリティ」を付与しようとでも思ったのかもしれない。しかしその多くは飽くまで小賢しい小手先の改変の域を出るものではなく、「余計なお世話」でしかない印象が強い。この移植版からは、ZAPの作品に対する理解や敬意、ひいては「愛」も感じられなかった。