は〜りぃは主人公の名字です〜「は〜りぃふぉっくす雪の魔王編」 for MSX攻略情報

「雪の魔王編」タイトル画面 キッドの森到着 残念!ゲームオーバー

はじめに

 長い長い冬がロムスの森を襲った。寒さにうち震え、次々と倒れていく動物たち。そして、その中にあの母ギツネもいた。
 その日は朝からひどい吹雪だった。昼を過ぎても止む気配はなく、それどころかいっそう強くなるばかりであった。親子はここ一週間ばかり何も食べていなかったため、吹雪の中へ狩りに出かけた。
 途中、子ギツネは母ギツネを見失ってしまう。子ギツネは必死で捜しまわり、やっと母を見つけた。しかし時すでに遅く、母ギツネは息絶えていた。寒い寒い夜のことだった。
 子ギツネは、やり場のない悲しみを一人の少女への思いに託す。少女の名はマリ。1年前、母を追い雪の中倒れた子ギツネを祖父ジークの所へ運び、優しく看護してくれた、あの少女。あの少女に逢いたい。
 雪の止んだある日、子ギツネは降り積もった雪の中をシタンの町へ向け走り出す。


「は〜りぃふぉっくす 雪の魔王編」について

 80年代前半、日本のパソコンゲーム界ではアドベンチャーゲーム(以下AVGと略)が一大ブームを巻き起こしていました。「デゼニランド」「ポートピア連続殺人事件」「惑星メフィウス」等々、数々のヒット作が、様々なソフトハウスから登場しました。
 その中で「ミステリーハウス」「WORRY」等の作品で人気を博していたのが、三重県四日市市を拠点とするソフトハウス・マイクロキャビンです。
 そのマイクロキャビンを代表するAVGのひとつが「は〜りぃふぉっくす」(1984年12月)です。物語は、奇病ロムス病に冒された子ギツネを救うため、特効薬・リール神社の油揚げを求め、母ギツネが奮闘するというもの。マイクロキャビン主催の第1回アドベンチャー・ゲーム・コンテストのストーリー部門を受賞したいう触れ込みで、練られたストーリーとメルヘンタッチのキャラクターやグラフィック、世界観が高く評価されました。

「ミステリーハウス」タイトル画面 「ミステリーハウス」ゲーム画面
マイクロキャビンの古典的名作「ミステリーハウス」
日本初のグラフィックAVGであり、その後のAVGブームの立役者の一つとされる。

 今回ご紹介する「は〜りぃふぉっくす雪の魔王編」(以下「雪の魔王編」と略)はその続編です。発売は1986年1月。主人公は命を取り留めた子ギツネ。雪の魔王から恩人マリを救うための新たな冒険が描かれます。前作で好評だったメルヘンな雰囲気はそのままに、より奥深くなったストーリーが繰り広げられます。
 当時のAVGは不親切でした。謎解きが不条理だったり、理不尽な「言葉探し」をさせたり。アイテムやフラグを回収しそびれるとクリア不能になるにもかかわらず、そうなったことがわからない仕様だったり。古典的ヒット作でさえ、これら理由で難易度が高い作品だらけでした。
 この「雪の魔王編」も、基本はそうした当時らしい「不親切な」AVGです。しかしそれでも当時的な高難易度AVGの中では比較的不条理さが少なく、遊びやすい作品に分類されています。絵柄の雰囲気も相まって、AVG入門に適した一本として勧められることが多かったようにおもいます。

「雪の魔王編」MSX ROM版パッケージ 「雪の魔王編」MSX ROMメディア
「雪の魔王編」ROM版のパッケージとROMカートリッジ。64KBのチップを搭載した珍しいROMとしてその筋には知られる。
パケ絵はキツネの実写。テープ版のマリさんイラストの方が断然カワユかった(泣)

 そのMSX版は、異例ずくめの作品でもありました。本作は最初にPC-6001版とMSX版の両方がリリースされています。まず当時のAVGにおいて、MSX版が真っ先に発売されるのが珍しいことでした。
 AVGブームの中心となった作品は、いわゆるグラフィックアドベンチャーでした。一枚絵で状況を表示して、それに対してどうするかの「コマンド」を文字で与える、という形式のゲームです。
 解像度や色表示の制約などから、MSXはこの形式が苦手でした。それゆえMSX用AVGは(皆無ではなかったにせよ)、当時主流の「御三家ハード」ほど本数が揃っていなかった印象があります。他機種の人気作は後回しになっても移植されれば良い方です。ですので人気AVGシリーズの最新作が、最初からMSXでリリースされるということは、なかなか類を見ないことでした。

 さらにROM版が用意されたことも、異例のことでした。AVGは容量を必要とするゲームです。大量のグラフィックデータとテキストデータを扱うため、容量面で優位なディスクやテープメディアで提供されることが常識でした。本作も最初に発売されたのはテープ版でした。ところがテープに続いて、86年春にROM版が発売されたのです。
 当時のMSX界は「メガロム」登場前夜。ROMカートリッジにAVGのプログラムが収まることがまだ信じがたいという時代です。そんな時期にAVGがROMメディアでリリースされることは、なかなか斬新なことでした。
 その後メガロムの一般化にともない、AVGがROMメディアでリリースされることも一般的になっていきました。「雪の魔王編」はその先駆けとも言えるものです。ROM版は当然長時間のデータロードを必要としません。テープよりも快適に遊ぶことができます。

「は〜りぃふぉっくすMSXスペシャル」タイトル画面 リール神社の油揚げを授かる
前作の大胆なアレンジ移植版「は〜りぃふぉっくすMSXスペシャル」
ゲームとしては問題点が多く成功しているとは言いがたいが、新趣向に挑戦した作品ではある。

 加えて「雪の魔王編」発売時、前作「は〜りぃふぉっくす」のMSX版は存在していませんでした。MSXでは続編がまず登場し、その後前作が移植されるという、逆の順序でリリースされています。しかもMSX版「は〜りぃふぉっくす」は、ただの移植版ではありませんでした。「MSXスペシャル」と銘打ち、RPG風のアレンジが施された独自性の強いものになっています。かくして異例ずくめの「は〜りぃふぉっくす」シリーズは、個性的な作品としてMSXユーザーの記憶に残ることとなったのでした。

「セイレーン」に登場する子ギツネ一家
「セイレーン」の子ギツネ一家。おまけ程度の登場だが、「は〜りぃふぉっくす」との繋がりを感じさせる。

 ところで、マイクロキャビンは翌年の末「セイレーン」(1987年12月)を発表します。「は〜りぃふぉっくす」にも通じるメルヘンタッチの作品で、版権物ではない同社オリジナルのAVGとしては最後のものに当たります。
 この「セイレーン」の主人公プリルの相棒、ラトクがその後マイクロキャビンの人気RPGシリーズ「サーク」の主人公に収まってしまったのは、オールドファンならご存じのことでしょう。「セイレーン」の源流には「は〜りぃふぉっくす」シリーズが存在します。そうかんがえると、この作品が「サーク」に繋がった部分も、多少あったのかもしれません。

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