優秀な作品は誌上掲載にとどまらず、商品化のチャンスまであるログインソフトウェアコンテスト。その目的は、ゲームデザイナー、ゲームプログラマーを目指す若い世代に対し、ログイン誌上を通じて門戸を開くこと。つまり、ログインソフトウェアコンテストは、パソコンゲーム界の次世代をになうスター・ゲームデザイナーへの登竜門なのだ。
本作はログイン誌主催のアマチュア制作ゲームコンペティション「ソフトウェアコンテスト」第3回大会にて、選外佳作として入賞しています。その際、吉田哲馬さんを含む入賞者4人とT&Eソフトのゲーム開発者内藤時浩氏、ログイン編集長小島文隆氏による座談会が開かれました。その様子がログイン1987年7月号に掲載されていますので、ここに転載いたします。座談会からは当時のアマチュアプログラマーがどのようにゲームを作っていたか、アマチュアとプロの関係がどういうものであったか等がうかがえます。
(以下ログイン1987年7月号より転載。役職・年齢等は全て掲載当時のもの。)
ソフトウェアコンテスト第3回結果発表を祝して、ハイドライドでおなじみT&Eソフトの内藤時浩さんをお招きし、入選者4名との対談を行った。スター・ゲームデザイナーを目指すキミに役立つこと間違いなしの情報満載だ!!
去る4月25日、土曜日。編集部にほど近い南青山文化会館で。”ガンバレ!未来のスター・ゲームデザイナー”座談会は開かれた。豪勢な(?)料理を前に座についたのは、入選者4名と小島編集長。そしてハイドライドでおなじみT&Eソフトの内藤時浩さん。なごやかな雰囲気の中、パソコンゲーム界の将来を大きく左右する(?)界は、スタートしたのである。
内藤 作品を見せていただきまして、レベルの高さには驚きました。まず”WIRALED”。以前にもコメントさせていただいたのですが、フルカラーのなめらかなスクロールなど、とてもよくできていますね。
敷島 ボクがPC-8801(SR)を買ったころ、スクロールゲームが少なかったので、スクロールを活かしたRPGを作ればおもしろいのではと思ったんです。
内藤 キャラクターの重ね合わせ処理など、よく工夫されていて感心しました。ただ、攻撃方法など、ゲームシステムに、もうひとひねり欲しかったね。
敷島 エエ、友達にも"ハイドライド"そっくりと言われて残念でした。
内藤 一生懸命作ったゲームを”そっくり”って言われるのはショックですよね。”WIRALED”は、それだけよくできているからとも言えるけど、やっぱり、シナリオやゲームシステムなどの面で、市販品を超えるものがないと、”マネ”って言われちゃう。何かいいアイデアを出して、市販品を超えてしまえば、いいのですけれど。
敷島勝幸クン ”WIRALED”の作者。千葉県に住む19歳。
この作品の後、4月号掲載、RPGコンストラクションツール”ダンジョン万次郎”なども作ってくれた。ログイン編集部でバイト中。
吉田 ボクの”パースペクティブ”も、たてスクロール版”グラディウス”と言われまして。ただボクの場合、初めてのプログラムだったので、あえて市販品に沿ったところでやれるとこまでやろうって感じで作ったんですね。
内藤 ウン、”パースペクティブ”もよく組まれていますね。スピードも十分だし、パワーアップも豊富だし。とても初めての作品とは思えません。確かに市販ゲームを研究することは大切です。いい所はどんどん取り入れてほしいね。ただ、その上でさらに面白くするにはどうしたらよいか、を考えてください。そのプラスαの部分で、その作品は評価されるのですから。
小島 ログインもその部分を見ているのですよ。でも、初めての作品であの出来なら、次回作が楽しみですね。
吉田 ハハ(笑)、ガンバリます。
東剛宏クン 遠く北は北海道から駆けつけてくれた17歳、高校3年生。作品は”JUSTER”。
高校では、柔道部に在籍しているという。硬派が漂う熱血漢なのだ。
内藤 東クンの”JUSTER”は、BASICだけで組んであるんですよね。PCG機能を上手に使ったアニメーションがとても新鮮でした。
東 SF・RPGには前から関心があったんです。で、市販ゲームを遊んでいたら、宇宙に壁があるのはおかしいとか、宇宙船なのにひとマスずつしか進めないのは不自然だ、とか、いろいろ不満がでてきて。
内藤 ウン、フライトプランとか、いいアイデアでした。次はマシン語のマスターですね。どう? 勉強してる?
東 本だけたまっています(笑)。マシン語を始めようと思って、アセンブラを買おうとしたら、値段が高くて手が出なかったんですよ。
内藤 ハハハ(笑)。でも、ソフコンで入賞して賞金をもらったんでしょう。ぜひアセンブラを買って、勉強してもらわなきゃ(笑)。あと”USE BALL”を作った横田クン。あの3色のボールを使うアイデアはどこで思いついたの?
横田 FM77AVの広告でしたか、いろんな色のボールが写っている写真を見て、あのボールを使ってゲームが作れないかと思ったんです。
内藤 ”USE BALL”は、シンプルなパズルゲームながら、ついつい引き込まれてしまうんだよね。基本アイデアはとってもよかったから、あとは演出ですね。たとえば、ボールが破裂するのを、思いっきりハデにするとか、そう、効果音をつけるといいんじゃないかな。
横田 エ〜、ゲームのイメージだけ浮かんだら、それをプログラミングして完成させるだけで精いっぱいで……。
横田潤治クン 大阪からやってきた18歳。”USE BALL”では、素晴らしいアイデアを発揮。
市販ゲームは一本も買ったことがないという、”DO IT YOURSELF”精神の持ち主。
内藤 ウン。でも、そこでもう一歩頑張ってほしいな。ボクたちも、ゲームはあらかたできた後の、最後のツメで悩むのです。この辺で、アマチュアの人との差が一番出るのかもしれないね。ゲームができて、遊べるようになると、満足しちゃうでしょ。でも、そこでもう一度プレイヤーの立場に返って考えてほしいなぁ。そう、友達に遊んでもらって意見を聞くといいんじゃない? デバッグのためにもなるし。
敷島 ボクは、グラフィックデザインや音楽を友達に手伝ってもらい、一緒に相談しながら作りました。
吉田 ボクもプログラムが組める友達がいまして、教えてもらったり、相談しながら作りました。ただ、彼はアクションゲームは苦手で、テストプレイはやってもらえなかったんです(笑)。
内藤 みんなもどんどん友達に遊んでもらってください。とにかく、人に遊んでもらい、意見を聞くというのは、ゲーム作りに大事な要素なんです。
吉田哲馬クン 同じく大阪からやってきた22歳。理工系の大学に通っている。
BASICをやらず、いきなりマシン語から始めたというツワモノ。関西人ならではのノリのよさを持っている。
小島 ゲームがひととおり動くようになったら、ログインに持ってきたり、送ってきてもらえば、どんどんアドバイスしますよ。
内藤 そう、それが一番イイかもしれませんね。ついでに新作ゲームを遊ばせてもらったりして(笑)。ボクは、アマチュアのみなさんがウラヤマしいんです。会社に入ってプロとして仕事をしていると、締め切りはあるわ、担当機種が決まっていて、気に入った新しいマシンは使えないわで、制限がイロイロありまして。自由に作品を作ることができないのですよ。アマチュアの人は、足かせが少ないのだから、その自由さを活かして市販品にはない新しい作品を作ってほしいですね。
小島 ログインソフトウェアコンテストの狙いも、そこにあるんですよ。
内藤 ここにいる入選者も、この記事を読んだ人も、アッと驚くような作品を作ってくれるでしょう。次回は最優秀作品でいっぱいになるんじゃないかな? でも、そうなったら1本ぐらい、T&Eの方にもまわしてくださいね(笑)。
しかし、ログインソフトウェアコンテストのレベルの高さには驚きましたね。遊び始めるとすぐ夢中になり、しばらくやめられなくなる作品ばかりです。アマチュアレベルとしては、かなりの水準ですね。ただ、市販化という面から見ると、独創性の点でやはり弱いようです。それぞれ独自の良さは持っているのですが、既存の市販ゲームのイメージから、抜けきるまでいってませんね。ゲームはやはり、シナリオ、ゲームシステムが大事なんです。そこに新鮮なアイデアを盛り込むことに、まず力を注いでほしいですね。
既存の市販ゲームを超える内容を持っていないと、そのゲームは売れません。ソフトハウスの作品でも、本当にイイものでないと売れませんからね。
あと、ゲームが80パーセントできあがった後の最後のツメが弱いですね。やはり、あらゆる面でプレイヤーのことを考え、少しでも楽しませる工夫をしてほしいのです。ちょっとした工夫でも、数倍の効果を発揮できます。小さな工夫の積み重ねで、全体を大きくパワーアップすることが可能なんですね。また、その過程で新しいアイデアが生まれてくるものなんです。
そのあたりのことを頭に置いて、次回は最優秀賞を勝ち取ってくださいね。