「ラドラの伝説」

「ラドラの伝説」タイトル画面

 「グロリアスフォース」は非常に高く評価され、ログインソフコン1987年下半期の優秀賞も獲得しました。その受賞コメントとして作者鈴木一輝さんは「(グランプリの)賞金でMSX2とディスク装置を買ったので、よりグラフィックに凝った、面白いRPGに挑戦します。」と宣言しています。そして88年秋、公約どおり新作を発表します。それが「ラドラの伝説」です。

 「ラドラの伝説」は、MSXマガジン誌88年10月号で発表されました。古代ラドラ文明を滅ぼした悪の魔導士ガーディスが復活、危機に陥ったガルヴァランドを救うべく、ラドラ文明の末裔が征伐に向かうという筋書きで、「グロリアスフォース」との話のつながりはありません。とはいうもののあらゆる点で「グロリアスフォース」と通じる部分が多く、実質的な続編にあたります。

 前作同様、「ラドラの伝説」も「ドラクエ」タイプのRPGです。しかし大幅なグレードアップを遂げています。
 「ラドラの伝説」はフロッピーディスク専用となりました。そのためテープベース・オンメモリで走っていた「グロリアスフォース」以上のスケールを実現しています。マップの広さやアイテム、魔法の種類、パラメーターの数等々は前作以上。大量のデータやプログラムを随時参照できるディスクの利点を活かしたと言ってよいでしょう。伊達に「ディスク装置を買った」わけではありません。

チャイルドハデス
敵キャラのチャイルドハデス。「グロリアスフォース」に登場したモンスターも一部再登場している。

 内容も大きく改良されています。横スクロールのみだった前作に対し、「ラドラの伝説」では、メインフィールドとダンジョンが四方向スクロールするようになりました。前作以上に複雑になったマップは歩き応え十分です。村人と会話できるようになり、様々なヒントやストーリーが語られるようになるなど、シナリオ面も強化されています。極端なゲームバランス、アイテム売却不可、貧弱なBGMといった前作の問題点にも手が入れられ、見事に解消していることも見逃せません。

 好評だったマルチウィンドウ式UIはさらに見やすく使いやすく、グラフィックの美しさにはいっそう磨きがかかりました。それに加えて、ダンジョンでの可変スポット処理、天候や時間の概念といった当時の人気作の要素を取り込むなど、欲張りな作りは健在。とにかく全てが前作以上。前作の反省を踏まえ、さらなる発展を遂げたその内容は、もはや市販品と変わりないレベルと言って良いでしょう。

妙にゆかいなラスボス「ガ〜〜ディス」

 このように格段に進歩した「ラドラの伝説」ですが、残念ながらリストは掲載されていません。当時Mマガは「MSXプログラムコンテスト」を開始し、これまでにない大規模な自作ゲームを募集していました。それにともない大作プログラムのリスト掲載をやめており、採用作品はソフト自動販売機「TAKERU」で有償配布するという方式をとっていました。本作はそのプログラムコンテストの入賞作として発表・有償配布されたものです。
 ログインやMマガのプログラムコンテスト企画は、プログラミング技術の研鑽よりも、飽くまでゲーム作家の育成が趣旨でした。そもそも「グロリアスフォース」が3本のリストで構成されていたのに対し、「ラドラの伝説」は53です。リスト数だけ見ても紙面に掲載するのは無理なことでしたし、それをいちいち入力するというのも非現実的なことでありました。むしろこうした超大作が扱えるようになったのは、リスト掲載をやめ、有償配布のみと割り切ったゆえでしょう。

 80年代後半には、それまで大作プログラムを取り扱っていた雑誌がリスト掲載を取りやめ、有償配布のみに切り替えていきました。それは投稿作品の大規模化に応えるものである一方、プログラムを入力して遊ぶという文化が過去のものとなりつつあったことの現れでもあったのかもしれません。

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