ROM版の変更点

 当時の慣例に従い、MSX用「ハイドライド」もテープ版とROM版の両方が存在します。やはり基本的な内容は同じで解き方もほぼ同じなのですが、後発のROM版には種々の変更点があります。


パスワードセーブの採用

パスワード入力中
セーブはパスワード方式。テープのない環境でも遊べるよう配慮したもの。

 テープ版とROM版最大の違いは、なんといってもセーブ方式でしょう。テープ版ではカセットテープを使いましたが、ROM版ではパスワードセーブを採用しています。ROM版で遊ぶプレイヤーが、必ずしもデータレコーダーを持っているとは限らないため、そこでデータレコーダーなしでも遊べるようにと、テープを使わないセーブ方式が採用されたようです。プレイ中にセレクトキーを押すとパスワードが表示されるので、プレイヤーはこれを書き留め、ゲーム開始時にキーボードからこれを入力すれば、そのデータでゲームを再開できるという仕組みです。
 しかしROM版のパスワードセーブは不完全で、怪物の配置や生命力、そしてジムの経験値は記録されない仕様です。そこで取説では、パスワードは飽くまで中断の手段と位置づけ、遊ぶときはメモリーセーブとの併用を勧めています。また、パスワードを採用した代わり、カセットテープへのセーブ機能が省略されています。ゆえにROM版とテープ版の間でセーブデータを共有することはできません。


ゲームスピード変更可

 ゲームスピードが変えられるようになったことも、ROM版の大きな変更点です。ファンクションキーのF1からF5までに、それぞれゲームスピードが割り振られており、プレイ中に任意のキーを押せば、随時好みの速度に切り替えられるようになっています。どうやらプログラムのウェイトを変更しているようで、速くするほどキャラクターの動きはもちろん生命力の回復速度も速くなります。これを利用すれば、素早い怪物と戦うときは動きを遅くして簡単にしたりとか、回復時には逆に速くして回復速度を上げるといったことができます。
 ちなみにデフォルトのスピードは3段階目で、テープ版よりも若干速くなっています。


8KBのMSXにも対応

 テープ版は全てのプログラムをメモリ上に配置するため、動かすには32KB以上のRAMが必要でしたが、ROM版ではその必要がなく、RAMが8KB以上あれば遊べるようになっています。MSXはその規格ゆえ機種によってRAM容量がまちまちなので、同じMSX用のソフトでも、容量が足りなくて遊べないということはMSXが出始めた頃にはよく見られることでした。


妖精に色が付いた

ROM版の妖精
色分けされた妖精たち。単色でも色分けされたのは大きな違い。

 他機種版では三匹の妖精がそれぞれ色分けされていたのに対し、MSXテープ版は白一色で、見た目に全く違いがありませんでした。これについては制作者も心残りがあったようで、ROM版では三匹にそれぞれ異なる色が付けられ、曲がりなりにも違いがわかるようになりました。


不死の薬の入手法が変わった

不死の薬入手
水が退けてないのに「不死の薬」が? それはROM版だから。

 テープ版ではレッドストーンとともに水路の底に沈んでいた「不死の薬」ですが、ROM版ではドラゴンを倒した戦利品として入手できます。テープ版より早く簡単に手に入るようになったわけですが、その分不用意なダメージで発動することも増えまして、入手後はセーブでもしもの時に備えたり、ダメージを喰らわないように気をつけるなど、慎重なプレイが求められるようになりました。


ゲームバランスの再調整

あり得ないところに進入してくるスライム ROM版バラリス戦
奥の方まで入ってくるスライムと強くなったバラリス。テープ版と同じ感覚だと痛い目に。

 テープ版と比べ、怪物の強さや移動アルゴリズム等が見直されたのも、見逃せない違いでしょう。全体的にROM版はテープ版よりも怪物が強くなっているようです。スライムはテープ版よりも深いところへ分け入ってきますし、ローパーも向き直って反撃してきたりと、全体的にイヤらしくなっているように感じられます。
 最たるものはバラリスで、テープ版以上に固く強力になり、最高レベルでも倒すまでには、数回のヒット&アウェイが必要になりました。こうした変更は当時の「もっと難しく」という風潮の現れだったのかもしれません。


エンディングがほんの少し異なる

ROM版エンディング ROM版のアン王女
ROM版のエンディング。基本的に同じだが微妙に違っていたりする。

 テープ版もROM版も、エンディングはほとんど同じなのですが、よく見るとほんの少し違っています。ROM版ではバラリスを倒すと、ジムが自ら歩いて画面の中央に行き、エンディングが始まります。また、妖精に色が付いたことを反映して、エンディングに登場する並ぶ妖精も色分けされています(しかしなぜか緑色の妖精は登場せず、二匹が黄色で表示される)。テープ版の王女は一回お辞儀するのみでしたが、ROM版では繰り返し頭を下げてくれます。また、ROM版のエンディングはエンドレスで、プレイヤーがスペースキーを押さない限り、王女のお辞儀がいつまでも続きます。

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