上から素手・短剣・聖なる剣・スリング・小型の弓・偉大な弓。威力はもちろんリーチもさまざまな武器が登場する。
これらを使いこなす戦闘システムはアクティブRPGの最終形を謳う「3」の大きな売りでもある。
「元祖ARPG」の称号を戴くだけに、アクション戦闘はシリーズの大きな特徴である。「3」ではさらに進化したアクション戦闘が楽しめるようになった。「3」の戦闘システムは当時のARPGでは屈指のもので、よりアクションゲーム寄りの爽快なものになっている。
前作までは攻撃・防御モードを切り替えながらの体当たり方式だったが、「3」では武器を斬りつけたり投げつけたりするという高度なものになった。怪物がいるフィールド上で攻撃ボタンを押すと、装備中の武器で攻撃する。武器が相手に当たって初めて攻撃判定が発生する。接触していても武器が当たらなければ、当然攻撃も当たらない。
全ての武器にはリーチ、つまり攻撃が届く範囲が設定されてある。リーチの短い武器は接近戦が必要となる。リーチの長い飛び道具は遠距離攻撃を可能とするが、攻撃力は固定となる。同様に怪物の攻撃にもリーチが存在し、それぞれに安全な間合いが異なる。本作の戦闘では、このリーチを把握することが不可欠だ。
言葉で説明すると面倒くさそうだが、実際はもっと直観的で非常にわかりやすい。多少でもARPGを遊んだことがあるなら、すぐに理解できるだろう。多彩な手段で次々に怪物をなぎ倒す戦闘は痛快そのもの。刷新されたこのアクション戦闘システムは「3」の特徴のひとつであり、大きな魅力であり、現代のARPGに通じるものがある。
なお、前作同様、怪物には「善悪」の属性が設定されてあり、倒した相手の属性に応じて、キャラの善悪が変化してしまう。心の状態が冒険に影響するのも前作同様。怪物に仕掛ける時はくれぐれも気をつけよう。
「II」で好評だったウィンドウ式メニューは「3」にも受け継がれた。随時必要となる各種コマンドはこちらから実行する。メニューはリターンキーで呼び出せる。どんなことができるかひととおりおさらいしておこう。
自分の足もとを調べる。主に宝箱を開けたりアイテムを拾うときに使う。調べたい場所の真上に立ち、このコマンドを実行すればOKだ。また、何かありそうな場所を調べるときもこのコマンドの出番となる。何かある場所は上に立つとヒュンヒュンと音がするので目安にしよう。
各種魔法を使う。実行すると覚えている呪文の一覧が表示されるので、唱えたい呪文を選ぼう。決定すると魔力と引き替えに魔法が発動する。唱えるには当然、呪文に応じた魔力が必要である。全ての呪文はこのコマンドから実行するようになったので、ファンクションキーの出番はない。
各種アイテムに関する操作をする。アイテムの使用や武器・防具の着脱、廃棄はこのコマンドだ。実行すると所持中のアイテムが表示される。対象となるアイテムを選び、何をするか決めよう。所持中のアイテムの重さや荷物の総重量もこのコマンドで確認できる。重すぎるときは適宜アイテムを捨てて荷物を整理しよう。ただし何を捨てて何を残すかの判断は慎重に。
キャラの状態を確認する。実行するとプレイ中のキャラの属性値一覧が見られる。ただし体力や魔力の現在値は見られない。「攻撃」「防衛」等の魔法で強化された分も反映されないので、いまいちもどかしい(おい)。
キャラのコンディションや所持金、持てる重量等もこのコマンドで確認できる。むしろこっちを見ることの方が多いかもしれない。コンディションは以下のとおりだが、プレイしていればわかって当然のものなので、表示にあんまりありがたみがない。魔法が効いているとか罠の効果が抜けていないとか、もっと細かく状態が反映されていれば便利なのだが...
いわゆるシステムメニューである。取説では「ゲームに直接関係の無い機能を集めた」と記されているが、ゲームの遊びやすさに直結する重要なコマンドを扱っている。このコマンドには以下の三つのサブコマンドが存在する。
ゲーム中に使われる言語を変える。選べるのは英語表示のみ・日本語表示のみ・一部英語表示の3つ。英語表示のみだとメニュー等のシステムメッセージ・作中のテキスト全てが英語になる。日本語表示のみも、同様に全てが日本語になる。一部英語表示はシステムメッセージや各種商店のテキストが英語で表示され、会話テキストが日本語表示となる。
ちなみに日本語は漢字仮名交じり表示。専用の漢字フォントを用意することで、漢字ROMなしのMSXでも漢字表示を実現しているが、8x8ドットで無理矢理漢字を表示しているため、判読のための漢字一覧表がパッケージに同梱されていたことはMSXユーザーの語りぐさとなっている。
起動時のデフォルトは一部英語表示。言語設定はセーブデータに反映されないので、起動するたびに設定し直す必要がある。設定はゲーム開始時のセットアップメニューからでも変更できる。言語を選べるというのはいまでこそ当たり前になった仕様だが、1987年当時は非常に珍しかった。不完全な部分は目立つが、「3」の意欲的な試みとして語られるフィーチャーだ。
ゲームの速度を変える。選ぶと緑色のバーメーターが表示されるので、方向キーの左右で任意の量に調節しよう。グラフが短いほどスピードが速くなる。スピードは全17段階。MSXシリーズの場合、実用的なのは5段階ぐらいまでだろう。デフォルトは5。これもセーブデータに反映されないので、起動するたび設定しなおしてやる必要がある。バーメーター調節後、決定キーで反映される。決定しないとスピードが変わらないので注意しよう。
強制終了してゲームを中断する。実行すると現在のプレイを打ち切ってタイトル画面に戻る。その日のプレイを終了するときはもちろん、キャラを選択しなおしたり、いったんテープにセーブするときなどに使うが、それ以上にレベルアップをやり直す際によくお世話になる。決定前に一度確認を取ってくる。再開時のキャラクターの状態は最後に宿泊した時点のものとなるので、それまでの冒険がパーにならないよう気をつけよう。
「3」の新機軸として真っ先に挙げられるのが、重量の概念だろう。各種アイテムには全て重量が設定されてあり(通貨にも重量がある!)、キャラの強さによって持ち運べる上限が決められている。上限を超えてアイテムを手にしてしまうとキャラの移動速度がガタ落ちし、超過しすぎるとその場から一歩も動けなくなる。また、使いこなせる武器にも重量制限がある。限度を超えたものを使っても十分に揮えない。成長に従ってどちらも上限は上がっていくが、始終、重量と相談しながら冒険を進めなければならないことに違いはない。
対策としては、とにかく身の丈に合った装備を心がけることである。いきなり強い武器や防具を装備しようとしても、無駄になるばかりか装備品に押しつぶされる。そして買えるアイテムは欲張らないことである。冒険の最中には、探索の末見つけた貴重品と手持ちのアイテムを天秤にかけざるを得ない局面が何度も現れる。そういうときは買えるアイテムから手放そう。買えるアイテムはお金さえあればまた買えるからだ。絶対的に持てる量が少なければ、レベルを上げてから出直すという選択肢もある。
重量に関する属性値は二つ。「持てる重量」(Have weight)と「使いこなせる重量」(Master weight)だ。持てる重量は移動速度に影響することなく持ち歩ける重量の上限で、使いこなせる重量は本来の性能を引き出せる武器重量の上限だ。これを超える武器を装備した場合、重量に応じて攻撃値が減ってしまう。重量の影響を受けるのは武器だけで、防具類には関係しない。
持てる重量=現在の腕力x140
使いこなせる重量=現在の腕力x42+500
単位はg(グラム)
この重量制限を面倒に感じたプレイヤーは相当に多かったようで、発売当時から賛否両論のシステムではあった。事実後年発売されたWindows用のリメイク版では、重量制限を無視できる「オーバードライブモード」なんてものまで実装されている。ボツになってしまった銀行や「ドラゴンクエストIII」のようなアイテム預かり所が実現していたら、相当に遊びやすくなっていただろう。
ただし、決められた制限の中で、自分の好みに合う装備を組み立てる楽しさがあることは特筆しておきたい。本作には多数のアイテムが用意されている。そこから最適な装備を選び取る作業はパズルに通じる面白さがある。ゆえに「重量の概念」が単なる足かせに陥っていないことには、十分注目するべきだろう。
早朝 | 昼 | 夕方 | 夜 |
「3」で加わったもう一つの大きな特徴が、時間の概念だ。ゲーム内で時間が流れており、経過により様々な影響を及ぼす。一番わかりやすい変化は、時刻によって昼夜が移り変わり、実際にマップが明るくなったり暗くなったりすることだ。この演出は発売当時、プレイヤーに驚きをもって迎えられたものだ。グラフィック性能に恵まれたMSX2版のみならず、MSX版でも昼夜の変化がバッチリ再現されているのは、サブプログラマー西脇「プロ」健太郎さんと、MSX担当「VDPハッカー・J」小倉正さんの卓越したプログラミングテクニックのたまものである。
さておき、変化はグラフィックだけではない。夜になれば商店は店じまいしてしまうし、出歩いている人々は表から姿を消してしまう。したがって買い物や情報収集は明るいうちにしなければならない。
さらに時間の経過によって、キャラクターは空腹を覚える。空腹をそのままにしておくとどんどん体力が減り、何もしなければ飢え死にしてしまう。また、眠らないでいると眠気を覚え弱体化する。どちらもそのままにしておけば命に関わる危険な状態である。また、夜には怪物が軒並み凶暴化して、より危険になる。これを防ぐには適宜食事を摂り、暗くなったらその日の行動を打ち切り眠ることである。
フェアリーランドの1日は我々の地球同様24時間である。朝5時に夜が明け、7時には明るくなってやがて昼を迎える。18時に日が暮れだして、20時に夜になる。
食事の時間は7時・13時・19時・1時の6時間おきと決まっている(アイテムディスプレイから食料を使用した場合、使用した時間から6時間おきになる。)。そのとき食料を持っていれば、自動で食事を摂ってくれる。ただし宿泊中は食事を必要としない(たぶん宿で食事を出してくれるのだろう)。行動中に食事ができないと空腹状態になり、自ら食料を食べない限り体力が減り続ける。
眠りたくなったら、宿に泊まろう。キャンプを張ることもできるが、そのためには重くて高価な(しかも1回使い捨ての)キャンプ道具が必要なので、あまり実用的ではない。チェックインすると一晩眠って体力・魔力が全快し、翌朝7時から行動開始となる(ただし23時以降の深夜帰りや「午前様」をすると寝過ごしたことになり、丸一日が無駄になる。見かけ上は何の変化もないが、ゲーム内の経過日数は終了時のパスワードに記録されているため、当時「終了認定証」をもらう際不利になった。)。
元気に動き回れるのは16時間。ただし夜には怪物が凶暴化することと、宵っ張りをするとへろへろになることを考えれば、もっと早めに行動を切り上げ、20時頃には宿に引き上げるのが無難だろう。その間13時と19時に2回食事を摂ることになる。早めにチェックインするなら、夕食なしでもかまわない。まずはこの時間の流れを意識して規則正しく活動することが、安全に冒険を進める基本だ。
時間制限があると落ち着いて探索できないのではないかと懸念する向きもあるかもしれないが、心配はご無用。ウィンドウを開いたり店に入っている間、時計のカウントは停まる(ただしメッセージを一定時間放置していると、勝手に表示を送ってゲームに復帰してしまう箇所もあるので注意)。そして作中に登場するダンジョンはどれも十分日帰りできるようになっている。むしろ時間制限があるおかげでダンジョン攻略の緊張感が増し、冗漫さがなくなっていることは見逃せない。重量や時間の概念が単なる思いつきに終わらず、それらがしっかり活かされたゲーム設計やレベルデザインがされているところは、「3」の密かに優れた部分と言えよう。当記事では各ステージのクリアタイム目安も示したので、参考にしてほしい。
なお、時間の概念はあるが、「ウィザードリィ」や「ソーサリアン」のような年齢や寿命の概念はない。時間が経ちすぎると歳を取ってステータスが下がるとか、老衰でキャラが亡くなるということはないので安心しよう。
「3」の大きな特徴である時間の概念。経過によって体調や状況は変化する。食事を抜いたり夜更かしばかりしていると体が保たない。毎日きちんと食事を摂り、暗くなったら寝るようにしよう。
本作には重量制限がある。強いからといって重い武器や防具を使おうとしても、十分に使いこなすことができず、かえって無駄になる。他のアイテムを持ち歩く余裕も逼迫するので、自分の強さ=持ち歩ける重量に応じた装備を立てよう。
やはり当時のゲームらしく、レベルアップには乱数が絡む。強いキャラを育てたいならレベルアップは妥協せず、なるべく各ステータスが高くなるまで何度もやり直そう。せめて体力・腕力・攻撃力の三つぐらいには気を遣わないと、レベルが上がっても体力が低いとか、さっぱり物が持てないなんてことになりかねない。
「3」になって、前作「II」や初回作のような理不尽な謎解きはあらかたなくなった。謎にはだいたいなにがしかのヒントが用意されてあり、そこから何をすべきか判断して解いていくことになる。
ヒントは主に街の住民の話から得られる。初めての街に入ったら、ひととおり住民に話しかけ、情報を仕入れよう。人の話をよく聞くのは、CRPGのセオリーだ。「II」では漠然としたヒントが多かったが、「3」はもっとわかりやすくなっている。得られるヒントには直截的なものもあれば、間接的なものもある。今すぐには役に立たなくても、知っていればきっと後々役に立つときが来る。
それと街で得られる情報には、次に行くべき場所を示しているものが多いことも、知っておいて損はないだろう。
とはいえあのハイドライドシリーズである。当時らしい仕掛けは随所に(ノーヒントで)存在している。もっとも気をつけなければならないのは、通り抜けられる壁だ。これを見破らなければ先へ進めないという箇所がいくつかある。また、通路を開くためのスイッチも、何の前触れもなく存在していたりする。
本作ではSEARCHの呪文は廃止されてしまった。なのでこうした仕掛けを見つけるには、やはり気になる物体や袋小路等を見つけたら突っ込んでみるしかない。
ただしそういう場所には体力を奪う罠も数多い。罠にかかったときの準備もお忘れなく。これは当時のARPGの「おやくそく」であり、本作もまたそうしたゲームの系譜にあることの証であるとも言えるだろう。